フルート記事
THE FLUTE 153 Cover Story|赤木りえ

「なんて楽しい音楽なんだろう!」赤木りえ

熱気に満ちたこの7月、東京目黒のライブハウス「ブルース・アレイ・ジャパン」で繰り広げられた、さらに熱いラテンミュージックのライブ。リーダーとなったのは、カリビアンフルートの第一人者、赤木りえさんだ。赤木さんとは旧知のパーカッショニスト、フレディ・ミランダ・ジュニア氏のハワイへの転属が決まり、その“さよならパーティー”として行なわれたのが今回のライブだ。フレディ氏の力強いパーカッションにもまったく引けを取らないパワフルな音色が、細い体躯から繰り出される─そんな彼女の演奏は、終始観客を圧倒していた。“フルートを演奏する”ことをはるかに超えたパフォーマンス、グルーヴ感に満ちた演奏に秘められた極意……そんな赤木りえの世界を探るべく、インタビューを行なった。
写真:土居政則 取材協力:BLUES ALLEY JAPAN

“重いものを持てないローディ”として……

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今回のライブは、パーカッショニストのフレディ・ミランダ・ジュニアさんの“さよならパーティー”だそうですね。
赤木
彼はプエルトリコの売れっ子ミュージシャンで、2011年からアメリカ空軍バンドのメンバーとして来日していたんです。私は2000年から半年ちょっとプエルトリコに住んでいたことがあって、その頃からの知り合いです。今回彼が転属することになったので、とりあえず日本で共演するのは最後になりました。
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フレディさんとも、ほかのメンバーの皆さんとも“あうんの呼吸”というか、息がぴったりで信頼感が伝わってくるようなステージでした。
赤木
ほかのメンバーも、それぞれみんな付き合いの長い人たちなんですよ。ピアノの中島徹さんは、もともとトロンボーン奏者ですが、音大時代からピアニストとしてもありとあらゆるジャンルでキャリアを重ねてきた人。プエルトリコとかキューバの音楽、そしてブラジル音楽にもものすごく詳しくて、私はライブではいつも彼にファーストコールでお願いしています。
ベースの澁谷和利さんは、オルケスタ・デ・ラ・ルスとオルケスタ・デル・ソル、両方のラテンバンドのメンバーで、日本のサルサ界ではとても活躍している人。いろんな音楽をよく知っていて、しかも勉強家です。
パーカッションの大儀見元さんは、知り合ったのはもう覚えてないくらいの昔(笑)。オルケスタ・デ・ラ・ルスを立ち上げた人で、その後バンドをやめて、ニューヨークでサルサのミュージシャンたちとずっと仕事をしていたんですね。90年代に帰国して、その頃から彼も私も一昨年亡くなったジャズピアニストの松岡直也さんと20年間ずっと日本全国を回って演奏してきました。お互いに何がやりたいかよくわかったうえで、一緒に演奏ができる仲間という感じです。
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もう一人のゲスト、パーカッショニストのウイリート・ロペスさんを含めて、三人によるリズムセクションは本当にパワフルで圧倒的でした。フルートの音色がその中でさらに存在感を強めていたのも驚きで……。
赤木
ウイリート・ロペスさんもプエルトリコ出身で、サルサの世界ではトップミュージシャンです。サルサ界最高峰のオルケスタ、ソノーラ・ポンセーニャのメンバーなので一人で来日することはまずなくて、今回のような機会はめったにないです。ライブの時に大儀見さんも「このリズムを今日ここで聴けるのは、夢のような話です!」と言っていたけれど、本当にそうなんです。(次のページに続く)

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・タンギングとヴィブラート!
・とにかく踊りが好き
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Profile
赤木りえ
赤木りえ
Rie Akagi
東京藝術大学卒業。カリブ海と日本を拠点に両地域で活躍するカリビアンフルートの第一人者。両地域の文化交流を積極的に展開し、その功績が高く評価され、2005年にはプエルトリコのユネスコから表彰されている。03年、08年には自身のグループを率いてのカリブ海ツアーを敢行し、大きな評判を呼んだ。グラミー賞受賞ピアニスト、ミシェル・カミロとのデュオ2曲を含む『カリビアン・フルーツ』(07年)に続き、09年に15作目となる「フルーツ・ジャムfeaturing赤木りえ」を発表。2012年8月、プエルトリコの「カロリーナ・インターナショナル・ジャズフェスティバル」に出演し、オープニング・ナイトのメイン・アクトをつとめ、1万人の観客から喝采を浴びた。2014年10月16作目で全曲プエルトリコ録音「カフェ・コン・レチェ」を発表。またここ数年は後進の育成にも力を注ぎ、各地でのフルート・クリニックや吹奏楽の指導を積極的に行なっている。NHK「歴史秘話ヒストリア」「花子とアン」などの演奏でも知られている。
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フルート奏者カバーストーリー