フルート記事
THE FLUTE 137 Cover Story|デニス・ブリアコフ

目標は設定しません。音楽は“終わりのない旅”だから

2009年以来、毎年日本でのリサイタルツアーを行なっているデニス・ブリアコフ氏。28歳にしてメトロポリタン歌劇場管弦楽団の首席奏者に就任。現在も活動を続ける傍ら、リサイタルでは自ら編曲を手がけるヴァイオリン曲などを圧倒的なテクニックで演奏することでも知られる。2年ぶりの登場となる今回は、リサイタルで演奏する曲への思い入れや、自身の様々な活動、家族についての思いなども聞かせてもらった。
翻訳:榊原敬幸 取材協力:株式会社グローバル 写真:土居政則

反応の違いにびっくり……日本の聴衆に感じること

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今回のリサイタルの聴きどころを教えてください(編集部注:6月に行なわれたリサイタルのレポートはP.88を参照のこと)。
ブリアコフ(以下 B)
今回のプログラムはすべて自分の好きな曲ばかりで構成したので、どの曲も全部おすすめです(笑)。しいて1曲取り上げるとすれば、バッハの『シャコンヌ』でしょうか。この曲は初めての場所でのコンサートで演奏することが多かったのですが、東京では2度目になります。ぜひもう一度、というリクエストをいただいたこともあり、追加しました。以前演奏した時も、日本の皆さんからは素晴らしい反応がありました。
ほかにも、フルートオリジナルの『ウンディーヌ・ソナタ』、それからフルートではまだあまり馴染みのないワックスマンの『カルメン幻想曲』もぜひ聴いていただきたい曲です。昨年のリサイタルではフルート曲として知られるボルヌの『カルメン幻想曲』を演奏しましたが、今回のワックスマンのものは、まったく違う趣の曲です。ヴァイオリンがオリジナルのカルメンとしてはサラサーテが有名ですが、個人的には、ワックスマンのほうが楽しめますね。
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ブリアコフさんは毎年、日本各地でリサイタルツアーをされていますね。今年も北海道から山口県までさまざまな場所に行かれていますが、日本の風土や土地柄、コンサートの聴衆などについて、どんな感想をお持ちですか?
B
東京のような大都市ではないところに行くのも、毎回とても楽しいですよ。日本食も好きなので、各地でいろんなものを食べるのも楽しみにしています(笑)。
日本人はとてもクラシック音楽に馴染み深く、洗練された聴衆だといつも感じていますが、やはり地方によって違いを感じることはありますね。ある場所でコンサートをやったときのことですが、自分とピアニストは演奏の出来栄えにとても満足しているのに、曲ごとの拍手がとても短かったことがあったんです。「ああ、今日のお客さんは演奏を楽しんでくれていないなあ……」と思ったのですが、終演後にはたくさんの方から賛辞をもらって、びっくりしました。しかも、お客さんは200人だったのに、CDが75枚も売れたんですよ。これは、未だに1回のコンサートでの最高売り上げ記録です。
地域によって、聴衆の反応の仕方もそれぞれなんだなあ、と感じて興味深かったですね。
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たしかに、東京と地方ではだいぶ違う部分がありますよね。ちなみに、食べ物を楽しみにしていらっしゃるということでしたが、どんな日本食がお好きですか?
B
今は日本食で食べられないものがほとんどないので、すべてが楽しみです。納豆はずっと食べられなかったんですが、最近克服できましたしね(笑)。でも何と言っても、いちばん好きなのは寿司ですね。私の妻も寿司は大好きです。アメリカにいても、週に3回は食べているくらいですよ。特にウニ、マグロ、イカが好物です。

次のページの項目
・ヴァイオリンの曲をフルートで吹く理由
・仕事、家族、これからのこと……
・ONLINE限定:聞きたい!譜読みに関するQ&A

Profile
デニス・ブリアコフ
Denis Bouriakov
1981年クリミア生まれ。モスクワ国立音楽大学を卒業後渡英し、イギリス・ロイヤルアカデミー音楽院にてウィリアム・ベネット氏のもとで学ぶ。11歳の時からロシア各地の一流ホールで演奏を重ね、数多くのオーケストラと独奏者として共演している。1998年チェコのコンチェルティーノ・プラガ国際コンクール1位、2002年カール・ニールセン国際フルートコンクール2位、2003年レオナルド・デ・ロレンツォ国際フルートコンクール2位 (1位なし)などをはじめ、2007年バーネット財団フルートコンクール1位、2009年プラハ国際音楽コンクールで第1位など受賞歴多数。ソロリサイタルはこれまでにギリシャ、アイスランド、アメリカ、韓国、イギリス、リトアニア、ロシア、そして日本と世界各国で数多く開催している。日本にはとても親交が深く、2009年より毎年リサイタルツアーを開催している。2008年8月までフィンランドのタンペレ・フィルハーモニック首席奏者、同年9月よりバルセロナ・シンフォニーオーケストラ首席奏者を務め、2009年9月よりニューヨーク・メトロポリタン歌劇場管弦楽団の首席奏者に就任。

 

CD information
Denis Bouriakov デニス・ブリアコフ 華麗なフルートの世界
「華麗なフルートの世界」
4988071010196
曲目:1.プロコフィエフ:フルートソナタ二長調OP94 2.コープランド:フルートとピアノの為のデュオ 3.ベーム:グランドポロネーズ二長調 OP16 4.ドビュッシー:ソナタ(ヴァイオリンソナタ) 5.ジョルヴェ:リノスの歌
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