2015 8/3~8 イタリア・サレルノ大学

FALAUT CAMPUS 2015 イベントレポート

FALAUT CAMPUS 2015
FALAUT CAMPUS 2015
8/3(月)~8(土)イタリア・サレルノ大学
レポート:段田尚子

2011年に発足、今年で5回目を迎えるFALAUT CAMPUS(フルートと弦楽器とギターの講習会)に、日本から筆者と清水和高氏が講師として招聘され、門下生を中心に20人程の講習生とともに参加してきました。
主催はイタリアフルート協会(1998年に設立)。講習会の芸術監督はイタリアフルート協会会長で、同協会が発行しているCD付季刊誌“FALAUT”の編集長でもある、サルヴァトーレ・ロンバルディ氏(ドメニコ・チマローザ音楽院教授)が務めています。季刊誌名“FALAUT”と講習会名“FALAUT CAMPUS”に使用されている、FALAUTの由来は、中世の音楽教師、グイード・アレッツォが考案した「階名唱法」の「Ut Re Mi Fa Sol La」のFa、La、Utを合わせた、ロンバルディ氏の造語です。イタリア語では、フルートを「フラウト」と発音しますが、氏の遊び心で「ファラウト」と名付けたそうです。

サルヴァトーレ・ロンバルディ イタリアフルート協会のCDと雑誌

左)イタリアフルート協会会長で、このキャンプの芸術監督を務めているサルヴァトーレ・ロンバルディ氏
右)イタリアフルート協会が発行しているCDと雑誌

講習会期間中は、毎日、昼と夜に講師陣の演奏会が開催され(コンサートの録音は季刊誌の付録CDで発行予定)、第一線で活躍する演奏者(シルヴィア・カレッドウ、ダヴィデ・フォルミザーノ他)によるマスタークラスが行なわれ、メーカーの展示や無料調整会などがありました。

FALAUT CAMPUS 2015

左上)ジャン=クロード・ジェラール氏のマスタークラス風景
右上)ギターのNicola Montella氏の演奏会
下)ジェラール氏とロンバルディ氏のコンサート

講習会の最大の特徴は、各講師陣のレッスンがすべての講習生に開かれていて、所属クラス以外の先生のレッスンを自由に聴講したり、受講したりすることができるということです。所属クラス以外の先生に師事しても、講習料金に変化はなく、講師陣は可能な限り、講習生の有益を優先します。講習会の基底に講師陣の教育的な志と友情に支えられた、おおらかな精神があり、それが全体に活力を与えていました。講師陣同志の交流なども至って自然体でした。そのような雰囲気は、世界的に活躍する講師も講習生も皆、キャンパス内のレジデンスで過ごし、食事やコンサートの時間を共有する中で育まれていたと言えるでしょう。私のような講師も講習生も連日の刺激的な演奏会やレッスンを互いに聴き合うことで、質の高い音楽を目指す意欲が掻き立てられ、互いに良い相乗効果があったと思います。
日本から参加した講習生は、当初は緊張気味でしたが、そのような雰囲気に心は次第にほぐれ、積極的に他の先生のレッスンを通訳なしに受講するまでに成長し、大変頼もしく思いました。

FALAUT CAMPUS 2015

左上)講習会の会場となったサレルノ大学の寮
右上)フィリップ・ユント氏(左)、清水和高氏(中央)、ダヴィデ・フォルミザーノ氏(右)との昼食にて
下)日本から参加した講習生とカプリ島での記念写真

講習会の主役は圧倒的にフルートという印象が否めませんが、ロンバルディ氏は、「講習会に協賛しているサレルノ大学から広大なキャンパスとレジデンスの提供があるので、今後は他の楽器にも力を入れ、演奏会の開催を大学内に留めず、近郊の町などにも繰り広げて、地域全体を巻き込んで音楽の活性化を計りたい」と意気込んでいました。
「このような企画には膨大な労力と時間がかかりますが、あなたを突き動かしているものは何ですか?」と、私が思わずロンバルディ氏に質問を投げかけると、熱心に語ってくれた言葉が印象深く残っています。
「情熱です。演奏家、教育者、愛好家、学生、音楽に携わるあらゆる人々が集う交流の場を創設し、育みたいと思います。演奏家が自身の活動や名声の為だけを考えて行動していても、決して有益ではありません。教育者もしかりです。より多くの人たちと共有し、アイデアを出し合うことで、最終的には皆にとって有益であると信じています。その信念が私の情熱の源です」

FALAUT CAMPUS 2015 芸術監督のロンバルディ氏と段田尚子さん

芸術監督のロンバルディ氏と段田尚子さん

来年のFALAUT CAMPUSでは、世界で発行されているフルート雑誌関係者を集めたシンポジウムの開催を呼びかける計画もあるそうです。


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