SAX ONLINE -Special Interview-

サキソフォビア アルバム「4」リリース!

様々なシーンで活躍中の、緑川英徳、岡淳、竹内直、井上"JUJU"博之の各氏4人により、1998年に結成された、個性派サックス・カルテット、“SAXOPHOBIA(サキソフォビア)”。
演奏ジャンルはジャズ、ポップス、民謡、オリジナルまで多岐にわたり、会場もコンサートホール、ジャズクラブ、アート・ギャラリーなどで、独自の演奏活動を続けている。

石森ライブショット

昨年(2014年)9月に結成16年目を迎え、10月には6年振りにして4枚目のフルアルバム「4」(通算7枚目)を発売。その後も精力的な音楽活動をみせるサキソフォビアの年明け一発目のライブが、1月19日に石森楽器店のホールで行われた。この日は、完全なアンプラグドで、ニューアルバムからの楽曲を中心に、迫力ある表現力豊かな素晴らしいアンサンブルを聴かせてくれた。
そんな彼らにサキソフォビアの歩みと、ニューアルバム「4」に込めた思いを語っていただいた。

 

――
1998年に遡りますが、改めてサキソフォビア結成の経緯を教えていただけますか?
井上
サキソフォビアというのは、当時すでに長年温めていた構想でした。
20年ほど前、欧米ではクラシックに限らずジャズの世界でも数グループのプロフェッショナルなサックスカルテットがあったのですが、日本にはそれらしき突出したグループが存在しませんでした。
知る限り日本では明確なグループの前例がなく、とは言え欧米のグループ(たとえば当時人気のあったワールドサキソフォンカルテット等)の真似はしたくないとなぁと思っていました。
ちょうどその頃、僕自身は音楽の興味の比重が作編曲へ大きく傾きだしている時期で、書かれているものと書かれていないもの、両方が存在しないと成立しない管楽器だけの音楽を創りたいと思っていました。
そこで、ジャズのトラディッショナル~コンテンポラリー、そして僕が当時大きく影響を受けていた民族音楽までを許容できる、音楽家として視野の広い、能力値の高いサックス奏者と共演したいと思いました。すると不思議なもので、竹内直、岡淳、緑川英徳と相次いで出会っていくことになります。 3人に声をかけたところ快諾してもらい、それから数年後にサキソフォビアは結成されるわけです。
――
結成時から現在まで、15年間で大きく変化したことはありますか?
井上
結成当初は意見がぶつかり合い、喧々囂々よく火花を散らしたものです。
やはりリズムセクションがいない編成で同じ楽器同士、しかも個性的な面々なので意見が合わないんですね(笑)
でも、4人がそれぞれにとても辛抱強く他者の意見を聞く努力をしたと思います。
音楽的には、当初は演奏も編曲ももっとアヴァンギャルドな方向性でした。
活動の展開にしても少し違うイメージで考えていました。
でも現在は前衛的な雰囲気はないと思いますし、比較的オーソドックスな演奏スタイルだと思いますので、そこは大きく変わったのではないでしょうか。 これも結果的に長い時間の中、メンバー間の交流の中で変化していることですから、人が成長し変化していくことと同じように自然に受けとめています。
――
アルバム「4」発売にあたって、選曲のコンセプトや、作品に込めた思いをお聞かせください。
緑川
久しぶりの単独フル・アルバムなので集中しました。
竹内
Prelude to a kiss…ジャズ史に残る名曲にサキソフォビアとして取り組みました。 Obsidian…バスクラベース、フルート、アルトによる木管アンサンブルを追求しました。
久しぶりのフル・アルバムなので、とても気合いが入りました。 一旦私のモッコリーヒル・スタジオで録音したのですが、納得できるものが録れなかったので場所を変えて改めて録り直したという経緯もあります。 結局、岩手県一関市千厩町の「角蔵ホール」と東京の「石森ホール」の2カ所、どちらも響きが良くてサキソフォビアとはゆかりの深い場所での録音となりました。
井上
まず、半分はオリジナル曲を収録したいという目標がありました。 作編曲に関してはメンバーが持ち寄ってくるのですが、他のメンバーの作編曲のスタイルとは違うテイストと意外性をバンドに持ち込めればという思いはありました。 長年培ってきて到達したサキソフォビアの現在のスタイルを表わす意味でも、一聴するとポップに聴こえながらその実とてもマニアックな内容で、しかもあっという間に聴き終えてしまう、そんなアルバムにしたいと思っていました。
――
今回のレコーディングに関しては、どのようにされましたか?
数曲は、岩手県の「角蔵ホール」といって、蔵を改造して作られたスタジオで収録しました。土壁でとてもやわらかい響きがするんです。丸3日を費やしたのですが、時間が足りなくて、全曲を収録しきれませんでした。東京に戻ってから、残りの楽曲をどこで録ろうかと考えて思いついたのが、「石森ホール」でした。ここは、とてもナチュラルな響きがするので。マイクは4人それぞれに立てて、あと全体のサウンドをマイクで拾いました。
――
レコーディングで使用した、楽器のセッティングを教えてください。
緑川
アルトサックス:A.セルマー・スーパーアクション、Aセルマー・マーク6
マウスピース:MCグレゴリー(3A18)
リード:リコ(4)
ソプラノサックス:A.セルマー・マーク6、ヤマハ・YSS-62R
マウスピース:セルマー(F)
リガチャー:アルト、ソプラノ共にセルマーGP
リード:ラボーズ(ハード)
竹内
テナーサックス:セルマー・マーク6(ネック:GP)
マウスピース:オットーリンク・ハードラバー、ウッドストーン・トラディショナルジャズ(8.1/2 )
リガチャー:セルマー
リード:レジェール(クラシック2-1/2)
バスクラリネット:セルマー
マウスピース:セルマー(E)
リード:レジェール(クラシック2-1/4)(テナーサックス用)
テナーサックス:A.セルマー・マーク6
マウスピース:ベルグラーセン・メタル(115/2M)
リガチャー:ウッドストーン
リコ(3)
フルート:ヘインズ
篠笛:蘭情管・六本調子
井上
バリトンサックス:ヤナギサワ
マウスピース:ウッドストーン・トラディッショナルジャズ(7☆)、ベルグラーセン・ハードラバー(100/1M)
リガチャー:ウッドストーンGP、オットーリンク(テナー用)
リード:リコ(3)
フルート:アルタス
楽器
――
サキソフォビアのメンバーとして演奏することの魅力は何でしょうか?
緑川
長い間一緒にやっていても、いつもみんなからいろいろなインスピレーションをもらえるところです。
竹内
みんなのその日の調子、こちらが変わると他のメンバーが変わる事などにより毎回違う演奏になるのが面白いです。 バンドとして長いので、お互いを受け入れざるをえなくなります。人間の勉強になります。
岩手でのレコーディングは4人が寝食を共にしながらの合宿レコーディングでした。 こういうことができるのは、長年にわたるサキソフォビアの活動の中で培ってきた僕ら4人の関係性、そしてお世話になっている方々との繋がりがあってのことだと思います。その辺は自慢できることだなぁと思います。
井上
一度もメンバーチェンジせず20年近く続けてきたことで、長年苦楽を共にした者同士でしか得られない「何か」があります。メンバー全員が無意識のうちにその「何か」で大きく成長したと思います。それはふつうの活動ではなかなか得られないものですね。
――
これからサックス・カルテットを始めたいと考えているプレイヤーの方々に、アドバイスをお願いします。
緑川
ゆっくり時間をかけて話をしながら作り上げていくことを楽しみましょう。
竹内
楽しみながら、意見も言い合ったりしながら仲良くやってください。
各パートの音量のバランスに気をつけて演奏するようにしてください。バランスが悪いとハーモにーがきれいに響かないので。一人一人がきちんとリズムを感じながら吹くようにしてください。足を踏んでリズムを取るのをお薦めします。気の合う仲間を見つけて楽しくやりましょう!
井上
コンボ(小編成ジャズバンド)や大編成のオケでは味わえない独特の魅力があります。根気よく続けて醍醐味を見つけてください。
終演後
――
最後に、サックスオンライン読者に向けてメッセージをお願いします。
井上
サキソフォビアをまだ聴いたことのない方にも、ぜひ『4』を聴いていただきたいですね。そしてライブで体感してほしいです。
サックスのいろいろな可能性を感じてもらえると思います。管楽器のアンサンブルといっても型にはまった演奏をせずに、いくらでも自由になれるんだということを知ってほしいです。
そして、ぜひサキソフォビアに続く人たちに出てきてほしい。
まだまだ可能性のある未知数のフィールドです。若い人たちにどんどん挑戦してもらいたいですね。
――
ありがとうございました。

PROFILE

SAXOPHOBIA (サキソフォビア)
member: 井上 "JUJU" 博之、岡 淳、緑川 英徳、竹内 直

様々なシーンで活躍する個性派サックス奏者が集まり、98年9月に結成。 アレンジは単に楽器の組み合わせだけでなく、ひとりひとりの個性を念頭においてなされ ている代役不可能のアンサンブル。サックスだけでなく、フルート、バスクラ、篠笛など を駆使した多彩なサウンドで注目を集める。 取りあげる楽曲はジャズの隠れた名曲、ポップス、民謡、オリジナル曲まで広範囲に渡り、その自由かつ大胆なアイディアで独特のホーンアンサンブルとインプロビゼーションを展開する。
●2000年1月 1stアルバム『FANCYMEN IN THE DARKNESS』リリース。
●2001年 セイゲン・オノ氏が音楽を担当したNHKドラマ『トトの世界』(ギャラクシー賞グランプリ受賞)サウンド・トラックに参加。
●2001年よりポップスユニット [Orange Pekoe]の諸作品に参加。
●2002年には来日したビル・クリントン前米国大統領の歓迎晩餐会でのメイン・ステージを務め、クリントン氏から賞賛される。
●2003年4月 2ndアルバム『シェルブールの雨傘』リリース。
●2007年7月 スコアブック&CD『Jazz Standards for Sax Quartet』を出版。
●2008年4月 ライブ録音、3rdアルバム『A Night at SOMETIME』リリース。
●2008年11月 『Jazz Standards for Sax Quartet』vol.2を出版。
●2008年12月 ミニアルバム『雨ふりシンフォニー』をリリース。
●2010年2月 岩手県在住の子どもたちの歌をフィーチャーした『世界中のこどもたちが』をリリース。
●2013年6月 サキソフォビア&ドリームキッズ第二弾『パレード』をリリース。
●2014年10月 六年ぶり待望のフルアルバム『4』をリリース。
現在はコンサート・ホール、ジャズ・クラブ、アート・ギャラリー等々、さまざまなシーンで演奏するほか、サックス・セクションとしてアーティストやCM音楽のレコーディングも行い活動の領域を拡げている。

〈サキソフォビアHOME PAGE〉
http://saxophobia.papi4.com/

〈サキソフォビア東北ツアー 2015冬〉

2/26(木)福島 AREA559(024-573-7448)
open18:00 start19:00 前売\4000 当日\4500
【問合せ】福島.音楽を楽しむ会(090-3476-9072 松本)
http://area559.jp/

2/27(金)仙台 ライブドーム・スターダスト(022-265-1139)
open19:00 start19:30 一般\3500 学生\2500
【問合せ】090-9037-6636(MONDO BONGO)
http://www.re-marumatu.co.jp/stardust/stardust.html

3/1(日)岩手県一関市大東町「曽慶地区センター」
ファンタジック・コンサート
出演:ドリームキッズ、スプライト
開場13:30 開演14:00 
大人\1000 中高生\500 3歳から小学生\200 3歳未満無料
【問合せ】 090-2880-0594(千葉)
https://www.facebook.com/dreamkids2008?fref=ts

〈関東〉

3/12(木)渋谷NHK
NHK-FM セッション2015 公開録音
http://www4.nhk.or.jp/session/

3/20(金)多摩 AWkitchen FARM
http://jazzplatz.blog134.fc2.com/
https://www.facebook.com/AWkitchenFarm

4/11(土)小岩COCHI
http://www.jazz-cochi.com/

〈5月九州ツアー〉

5/21木 鹿児島 MOJO
http://barmojo.jimdo.com/

5/22金 熊本 酔ing
http://swing-live.jp/top.htm

5/23土 北九州 MAX AUDIO
http://www.maxaudio.co.jp/twilight/index.html

5/24日 諫早 カントリー
https://sites.google.com/site/country99since1996/home

5/25月 博多 NEW COMBO
http://www.f2.dion.ne.jp/~combo/

 

*CDは全国のCDショップ、サキソフォビアホームページにて販売中!

サキソフォビアCD

 

*Jazz Standards for Sax Quartet 2月下旬再販決定!
(サキソフォビア監修、アレンジ・スコア&演奏CD付!)

 

 

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