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フィル・ウッズ奏法の秘密に迫る!

THE SAX 74号 追悼特集

ジャズの歴史のなかで多くの偉大なプレイヤーが生まれてきたが、ワンフレーズ聴いただけでその人と分かる個性を持つ奏者はそれほど多くない。 そして、その数少ない例の代表とも言えるのがフィル・ウッズだ。THE SAX74号では、その個性の秘密に3つの側面から迫った。 解説してくれるのは彼との共演経験も持つ、多田誠司氏。ここでは、誌面に掲載したフィル・ウッズのフレーズ譜を実際に多田氏に実演してもらったので、本誌と合わせて、是非参考にしてみてほしい。

裏拍のタンギングを強めにすることでスイング感が増す!
音色と共に彼のスタイルを決定付けているのがアーティキュレーションだろう。彼のアーティキュレーションにはいくつかの独特の特徴があるが、その一番はタンギングの強さにある。ジャズの8分音符を吹くときの基本は、裏のスラー(ウダウダのダの所)にタンギングを付けるが、彼はこの裏拍のタンギングをかなり強めにやる。結果、裏拍に強いアクセントが付き、スイング感が増すのだ。それとともに、フレーズのレイドバック感(後ろノリ)が強まり、ジャズっぽさがより出る。いま彼のプレイを改めて聴き直しているが、まるで最初からすべて譜面になっているかのように確信を持ってアーティキュレーションを付けている。完璧、なのだ! 1ミリの迷いもなく吹ききっているように聞こえる。これは同じサックス吹きとしては信じがたいこと……素晴らしい!

凹の部分でリードに舌を微妙につけて音をミュート
タンギングの強さとともに、音の飲み方、いわゆるハーフタンギング、ゴーストノートの使い方も特筆ものだ。アーティキュレーションの強い部分はタンギングでアクセントを付けることによって出せるが、弱い部分はハーフタンギングのテクニックを使って音を飲むことで出さなければならない。これを息の出し入れによって出そうとするアマチュアを多く見かけるが、これは決してやってはならないことだと私は思っている。息の強弱でニュアンスを付けようとすると、どうしても音色やピッチに悪影響が出やすくなる。だから、息は出したら出しっぱなし、水道の蛇口をひねったら出てくる水のようでなければならない。ただ、ハーフタンギングのテクニックはかなり習得困難なため、集中して練習する時期が必要だろう。フィルのフレーズを聴いていると、いい意味の凸凹を感じると思う。この凹の部分で舌をリードに微妙につけて音をミュートしているのだ。ぜひ何度も何度も繰り返し音源を聴いて、そのニュアンスを真似していただきたい。トランスクライブは音ヅラだけを取っても何の意味もない。良い台本を生かすも殺すもあなたの喋り方次第なのですぞ!
バップフレーズを主体に多くのバリエーションを持つ
フィルは、チャーリー・パーカーの妻だったチャンと結婚するほどパーカーを敬愛していた(『All Bird’s Children』という曲も書いているほど)。そしてシーンに登場してすぐに、パーカーの後継者の一人として誰もが認める存在となった。いわばパーカー直系のビバップ・スタイルで、「いえ〜い!!」と誰もがうなずくバップフレーズが主だ。だが、かなり直線的なパーカーの音色・吹き方に対して、フィルの音は何とも色っぽく、フレーズがいちいちエロい(笑)。同じパーカーフレーズを吹いても、ソニー・スティットなどと違ってニュアンスやアーティキュレーションに多くのバリエーションがあり、ドキドキしてしまうのだ。たびたび引き合いに出して申し訳ないが、ジャッキー・マクリーンがビッグバンドのリードアルトを吹いているところはとても想像できないが、フィルなら想像できるし実際に大編成のバンドでリードを吹いている。

フリーキーになり過ぎない絶妙のバランス感覚
ビバップフレーズ主体と書いたが、前述のヨーロピアン・リズム・マシーンのころの彼のスタイルはかなりモーダルになり、激しくブロウするプレイが多くなる。だが、同時期にやはりジャッキー・マクリーンやアート・ペッパーらがよりフリーキーになっていったのに比べると、フィルのプレイはぎりぎりのところでバランスを取ってコントロールされている気がする。彼の美意識が垣間見えるのだ。これも知性の成せる技か。念のため書いておくが、決してマクリーンやペッパーを批判しているのではない。私は個人的にマクリーンのその時期のアルバム「LET FREEDOM RING」などは大好きだし。あくまでフィルと比較して、という意味なので、誤解のないように!

本誌74号に掲載のフィル・ウッズ フレーズ譜
譜例1:『I Love You』※動画連動
譜例2:『Scrapple from the Apple』
譜例3:『In Your Own Sweet Way』※ 動画連動
譜例4, 5:『How High The Moon』
譜例6:『Star Eyes』
譜例7:『Just Friends』※動画連動
譜例8, 9:『Freedom Jazz Dance』
譜例10:『Bohemia After Dark』
譜例11, 12:『Just the Way You Are』※動画連動

★ザ・サックスクラブ会員の方に、フィル・ウッズ演奏による『In Your Own Sweet Way』の楽譜をプレゼント!(2016年1月24日まで)

 

 

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