クインシー・ジョーンズにも認められた個性派プレイヤー田野城寿男がモーション・ブルー・ヨコハマに見参

隠れた実力派プレイヤー田野城寿男ライブレポート

田野城寿男 Plays The Contemporary Jazz Music
3/17(木)モーション・ブルー・ヨコハマ(神奈川)
[出演]田野城寿男(Ss,Ts)、杉丸太一(Pf)、横山貢介(Guit)、塩見暁俊(Bass)、徳永康之(Ds)

田野城寿男

1978年に渡米しボストンのバークリー音楽大学で研鑽を積むとともに、ニューヨークでデイヴ・リーブマン、ニューイングランドでジョー・アラッドに師事。1982年にはジョージ・ラッセルの門下となり「リディアン・クロマティック・コンセプト」を学びバックグラウンドを築いたサックスプレイヤーで作編曲家の田野城寿男。
その後はアメリカで活動し1991年には、かのクインシー・ジョーンズに「おまえは誰にも似ていない」という言葉で称賛され、彼の抜擢により「モントルー・ジャズ・フェスティバル」に出演したという経歴も持つ超個性派だ。不幸なことに1990年代後半から肺炎を患いドクターストップにより一度は表舞台から遠ざかるものの、2000年代終わりから復活を果たし近年は精力的な活動を続けている。

田野城寿男

そんな隠れた辣腕サックス奏者の実力のほどを確認しようと、3月17日にモーション・ブルー・ヨコハマで行なわれたリーダー公演には、多くのオーディエンスが詰めかけた。ライブはディズニー・ナンバー『美女と野獣』でスタート。長年愛用するヤナギサワのシルバーソニックのソプラノでドラマティックに奏でていく。その太くて暖かみのある唯一無二の音色に、いきなり聴衆の耳は釘付けに。続いて演奏した交流のあるジム・ベアード作『Hobo』とともに、ソロではアウトフレーズを要所に鏤めたフリーキーなアドリブを展開し大きな歓声が上がる。そしてテナーに持ち替えると、スローとアップのオリジナルナンバー2曲をプレイ。芯があってヌケが良い音色が、ここでも魅力的に響く。
休憩を挟んでの後半1曲目はスティングのカヴァー『Fragile』。テナーで美しいメロディをストレートに歌い、中盤のフリーのソロスペースではアグレッシヴにキメる。終盤はAOR的な雰囲気も持つナンバーやクラシックの素養を滲ませる楽曲など、個性的なオリジナル作品を次々に披露し、本編ラストはサックスのビル・エヴァンス作『London House』をソプラノでファンキーに。大きな手拍子でアンコールを促されると、再びステージに登場しキース・ジャレット『Country』のカヴァーで応える。テナーで奏でる郷愁を誘うミディアムバラードが心地よい余韻を残した好ライブだった。

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