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田中覚のリペアマンへの道! スネア編

Wind-i mini 25号 第4回

第4回 スネア編

来年度4月から「島村楽器テクニカルアカデミー」と改称することに合わせ、日本で唯一「コンサートパーカッションリペア科」を新設する代官山音楽院。本格的なリペア・メンテナンスだけでなく知識、社会性・音楽性をも身につけることができる新学科の開講に先立ち、主任講師の田中覚先生に「楽器別リペア・メンテナンスについて」お話しいただきました! 第4回目は「スネア編」です。

コンサートスネアとして良い状態とは?

ヘッドの張りが低すぎたり表裏のヘッドの張りの差が大きいと、ルーズに響いたり音量によって音色の変化が出ます。それらの変化をなるべく受けないものが良い条件です。ピアノからフォルテまで同じ音色を出せるようにチューニングしていきます。このチューニングが重要で、ヘッドを抑えている8 ~ 10か所のテンションボルトで調整します。締めていくと音が高くなり、緩めると低くなります。

どんな故障が多いですか?

ストレイナー

ストレイナー

響き線を張るためのストレイナーのレバーが上がらないということがありますが、これはレバー内側のヒンジ部分の穴が広がって緩くなることが原因です。
ヒンジ部分に不具合が出るのは、響き線の張りを調節するアジャスターを締めすぎて負荷がかかりすぎているから。本来ある程度の音のルーズさはチューニングで解決するべきことなのですが、多くの方がチューニングするのが怖い、できないということでアジャスターを必要以上に締めて音を整理させようとするからです

スタンドについての間違った扱い方は?

スタンド

スタンド

空締めです。多くのスネアスタンドの上部と下部は樹脂製ブッシュを締め付けることで固定されます。上部と下部を外した状態で締めすぎると、金属板が内蔵のタイプだと外れて落下しますし、板のないタイプでも樹脂が凹んだり穴が開くこともあります。そして樹脂が凹んだまま高さ調整するとスタンド上部の棒も凹んで変形することもありますから、空締めは禁止です。
また、セッティングで注意してほしいのは、高くしたいからといって脚を必要以上に閉じないことです。脚の先端と太鼓の口径が同じくらいになるように開いてください。

響き線の取り扱い方法は?

響き線

響き線

多くの人はストレイナーをON にしたまま保管すると響き線が伸びてしまうことを知っているので、OFFにしてケースに入れ保管しています。ですがケースに入れた状態のまま立てて置いておくと響き線はケース内で斜めに垂れ下がり、そのまま長い間置かれると変形してしまいます。なので緩めのスイッチON にしておくのがベストです。
響き線がすべてが均等に伸びるなら大きな問題は起こりませんが、ほとんどの場合両端から先に伸びます。不均等に伸びた響き線は演奏の難易度を上げてしまいます。なぜなら両端がルーズな状態だと大きい音量で演奏した時に締まりのない響きになり、かといって両端がルーズにならないくらいに響き線を締めると今度は中心部分が締まり過ぎてしまい、音が詰まって弱奏時の反応が悪くなるからです。

 


Profile|田中 覚

1993年4月から2007年9月まで株式会社コマキ楽器パーカッション・シティに勤務。この間、新日本フィルハーモニー交響楽団の近藤高顯氏にティンパニ演奏とティンパニマレット・リペア、作成を師事。2007年9月より打楽器リペア業務を主としたマチュア・パーカッションを立ち上げた。2008年~ 2014年の7年間、札幌で毎夏開催されているPMF 音楽祭で使用される全打楽器の保守管理やセッティングを担当。国内外の多くの奏者や専門家と交流を持つ。

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