クラリネット記事
Clarinet in New York Special Cover Story

アナット・コーエン

2022年を迎え、未だに肌寒い冬の季節が続きますが、日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。今号は私の友人でもあり、素晴らしいクラリネット奏者のAnat Cohenさんに登場していただきます。ジャズファンだけでなく様々なジャンルのミュージシャンからも絶大な支持を得ている彼女にインタビューさせていただきました。インタビューはニューヨークのFD Studioからお送りします。
なお、アメリカ・ニューヨーク市ではインドアのイベントについてはコロナウイルスのワクチン接種証明書の提示が義務づけられています。


Text / Photos by Yuki Tei (yukiteiphoto.com) IG: @yukiteiphoto and @yukiteimusic
Special Thanks to: Anat Cohen, Odilis Trinidad (MUA. odilis.com), Teofany Manus (Hair Stylist. teofanymanus.com), and Limor Golan Nesher (Clothing Designer. inspiredny.com)


兄弟の影響で楽器を始めた

Yuki
こんにちは。今日はお忙しい中ありがとうございます。つい先日、ヨーロッパから戻ってきたばかりですが、お元気そうですね。最後にお会いしたのはおそらくコロナ禍に入る前だったと思うのでだいぶ時間が経ちました。
未だにパンデミックの真っ最中で、新種のオミクロン株が猛威をふるっていますが、どのように過ごされていましたか?
Anat
Yukiとこうして会うのは久しぶりだね。たぶん最後に会ったのはパンデミックに突入する前だったかな。やっといろんな場所で演奏活動ができるようになったわ。でも、以前は多くの演奏活動の場があったし、ツアー、そしてレコーディングなど様々なプロジェクトがあったのだけど、パンデミックに突入して以来、私たちの生活は本当に変わりました。今までの“普通の”ことがそうではなくなってしまうのだから、人生どうなるか分からないよね。コロナのワクチン接種率が上がり、ようやくコンサートができるようになりましたが、未だにいろいろと大変ですね。
Yuki
さて、音楽との出会い、クラリネットを始めたきっかけ、そして育った環境などお聞かせください。
Anat
私はイスラエルのテルアビブ出身です。幼いころから多くのジャンルの音楽を聞いて育ち、両親もとても音楽教育に熱心でした。でも、音楽を始めたのは兄弟であるサックス奏者のYuval、そしてトランペット奏者のAvishaiの影響が大きいですね。私が最初に始めた楽器はキーボードで、クラリネットを始めたのは12歳のときです。それから兄たちが通っていた地元の音楽学校に通い始めました。その学校ではクラシックだけでなく、様々なジャンルの音楽に触れることができたのが良かったと思っています。オーケストラやクラシックを始め、ビッグバンド、ディキシーランドジャズなどね。そして、高校は地元のThelma Yellin High Schoolという芸術高校に入学して、より一層音楽に没頭します(この高校は多くの素晴らしい演奏家や芸術家を輩出しています)。ちょうど私が入学するときにジャズ科ができてサックスを始めました。ビッグバンドではサックスがメインですし、演奏機会もクラリネットより断然多くありますから。その後イスラエルの空軍バンドに在籍し、のちにバークリー音楽院に入学することになります(イスラエルでは女性も2年間兵役の義務があるそうです)。空軍ではビッグバンドの演奏も多くありましたので、どちらかといえばサックスを多く吹いていましたし、バークリー音楽院でもサックスがメインでした。でも、いろんなプロジェクトでクラリネットを演奏しつつ、多くの人が私のクラリネットの演奏にとても興味を示してくれて、それから徐々にクラリネットを吹く機会も増えていきました。
通っていたバークリーには世界中から多くの学生が留学しているので、いろんな意味で良い機会になったと思います。大学卒業後、ニューヨークに移り住んだときは、まったくレベルが違いますから圧倒されたけどね。でも、それと同時に私が求めていたものが“ここにある”と実感しました。
 

>>次のページに続く
・ブラジリアン音楽と出会う

 

アナット・コーエン Anat Cohen
1975年生まれ。バークリー音楽大学卒業。イスラエルの人口第2位の都市、テルアビブ出身のクラリネット/サックス奏者。2008年から2018年まで毎年クラリネティスト・オブ・ザ・イヤーに選出される。主にジャズミュージシャンとして世界的に著名な実兄のアヴィシャイ・コーエン(Tp)、ユヴァル・コーエン(Sax)とのバンド「3 Cohens」、そして自己の10人編成のバンド「アナット・コーエン・テンテット」などで活動。2005年以降、アルバムを多数リリース。2017年にリリースした、アナット・コーエン&マルセーロ・ゴンサルヴェス「Outra Coisa – The Music of Moacir Santos」ではベストラテンジャズ、アナット・コーエン&トリオ・ブラジレイロ「Rosa Dos Ventos」ではベストワールドミュージックのアルバムでグラミー賞にノミネートされた。現在はニューヨークを中心に活動し、デキシーからコンテンポラリーまでを難なくこなす。近年ではブラジルの伝統的な音楽であるショーロといったジャンルでも話題を振りまく才能豊かな音楽家。
Web Site:anatcohen.com

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