クラリネット記事
The Clarinet vol.77 Cover Story│ジョエ・クリストフ

いま最も注目を集める若き俊英クラリネッティスト

クルージュ国際音楽コンクール(最優秀賞)やARD国際音楽コンクール(ミュンヘン国際音楽コンクール)での1位優勝と輝かしい実績を誇る若き俊英ジョエ・クリストフ氏。そのジョエ・クリストフ氏が、シルバ・オクテットのメンバーとして、2022年夏に福島のふくしん夢の音楽堂と東京オペラシティでの公演のため来日。そのコンサート前日、まだ日本に到着したばかりの氏に取材を申し出たが、屈託のない笑顔で受け応えてくれる爽やかなナイスガイで、しかも見ての通り超イケメン。
天から二物も三物も授かったギフテッドに、いまクラリネット界の注目が集まっている。
取材協力:野中貿易(株)、(株)ノナカ・ミュージックハウス / 通訳:松嶋優美 / 撮影:井村重人

ベストを尽くしてそれを観客に伝える

今回の来日での演奏のご予定についてお願いいたします。また来日は今回が初めてですか?
ジョエ・クリストフ
(以下J)
シルバ・オクテット(※)のアンサンブルメンバーとして、福島(ふくしん夢の音楽堂)と東京(東京オペラシティ)で行なわれる公演のために来日しました(インタビュー時点での予定です。現在、公演は終了しています)
シルバ・オクテットは、弦楽五重奏とピアノとクラリネットとツィンバロムという東欧地域の民族打弦楽器で編成されるクレズマー音楽を主なレパートリーとするアンサンブルです。僕はこのクレズマーが特別に好きで、クラシック音楽とは明らかにかけ離れた奏法で吹くことが必要です。
来日については今回が2回目で、最初は2019年に「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」のコンサートに出演しました。日本はとても魅力的なので、こうして日本でコンサートができることをうれしく思います。
僕はフリーランスでやっているので、マスタークラスや演奏会であったり、今後もいろんな形で日本に来たいと思います。ヨーロッパでどんなことを学べるかを日本で伝えていきたいし、ヨーロッパ、特にフランスの音楽を日本の聴衆や奏者に伝えたい。逆に日本の音楽も学び取れる機会になったらいいと思います。

(※)シルバ・オクテット:パリ管弦楽団のヴァイオリニスト「リシャール・シュムクラー」によって設立された、管・弦・打弦楽器からなるフランスのアンサンブル。ユダヤ系の伝統音楽ジャンルであるクレズマーや、ロマ(ジプシー)音楽をレパートリーとしている

2019年のクルージュ国際音楽コンクールでの最優秀賞と、同年ARD国際音楽コンクール(ミュンヘン国際音楽コンクール)での1位優勝おめでとうございます。ARD国際音楽コンクールは難しいレパートリーを短期間で演奏しなくてはならない難関コンクールとして有名ですが、コンクールのような審査されるシチュエーションと、コンサートなど聴衆を前にしての演奏では、メンタル面や演奏面で違いはありますか?
J
どうもありがとうございます。
コンクールもコンサートで吹くこともあんまり差は感じません。コンクールでも審査員や聴きに来てくれる人がいるということは、コンサートと同じ条件です。自分の感情や自分がどんな人間か表現して伝えていくことが大事なことで、同じメンタリティで演奏しています。
コンクールでもコンサートでも同じように観客の方たちは休みの日、休みの時間を使って音楽を聴きに来てくれているから、自分のベストを必ず尽くしてそれを観客に伝えるということを意識しています。人に伝えられるということはとてもうれしいことです。
コンクールというのは、若くてレベルの高い人たちが集まる場だから、そこで自分が成長していく機会になるかと思い、これらのコンクールを受けました。
2019年に最初に受けたコンクールは、クルージュ国際コンクール(ルーマニア)でした。そのコンクールは、環境がとてもよかったですし、曲も面白かった。審査員たちも若い方が多く、自身も以前コンクールで賞を獲った方ばかりなので、経験を持って聴いてもらえたのがすごく良かった。同世代の方たちに講評をもらえたのが良かったです。その時点で自分が国際的にどんな場所にいるか、どんな位置にいるか? それを知った上で自分がどういうふうに成長しなきゃいけないかというのが分かった機会になりました。
クルージュの一ヶ月後にミュンヘンのコンクールがありましたが、共通の曲(モーツァルトの協奏曲)もあり、クルージュで練習、ミュンヘンが本番みたいな感じで演奏できました。
クルージュのコンクールの審査員が、僕と一緒にミュンヘンのコンクールを受けていたのも面白かった(笑)。
 

>>次のページに続く
・自分が自分の先生となる
・喉を開くためのエクササイズ
・息をいっぱい入れられる楽器

 

ジョエ・クリストフ Joë Christophe
1994年生まれ。北フランスのノール県ヴァランシエンヌで6歳のときにクラリネットを始める。2015 年にパリ国立高等音楽院に入学し、フィリップ・ベロー氏とアルノー・ルロワ氏に師事。2019年夏、クルージュ国際音楽コンクール(ルーマニア)、ミュンヘンで開催されたARD国際音楽コンクールでともに第1位を獲得。2020 年には、人気テノール歌手のローランド・ビリャソンが主催する Stars Von Morgen(明日のスター)、2021 年にはベルリンのDebüt im Deutschlandfunk Kulturにも招待された。ソリストとして、ミュンヘン室内管弦楽団、ミュンヘン放送管弦楽団、コレギウム・ムジクム・バーゼル、トランシルヴァニア州立フィルハーモニー管弦楽団、パスドループ管弦楽団、ヌーヴェル・ヨーロッパ管弦楽団などの多数のオーケストラと共演。2021年にドイツのレーベルGenuin Classicsよりピアニストのヴァンサン・ミュサと共に録音したCD「Idylle」をリリース。また、音楽ジャンルの多様性に興味を持ち、特に有名なシルバ・オクテットで、ジャズ、コンテンポラリーを演奏し、伝統的なジプシーとクレズマー音楽を探求している。

 
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