フルート記事
アンドレア・リーバークネヒト│THE FLUTE vol.193 Cover Story

本当の意味での“耳で聴く”こと、体をリラックスさせること

3月に北海道と東京で来日公演を行なったアンドレア・リーバークネヒトさん。東京公演翌日のマスタークラス前というタイトなスケジュールでも快くインタビューに応じてくれた。今回は来日直前にTHE FLUTE ONLINEに掲載したインタビューの内容を再構成、さらに演奏するために必要な意識を深堀りしてくれた。
取材協力:ヤマハ株式会社/株式会社ヤマハミュージックジャパン/通訳:木内悠貴/写真:橋本タカキ

交通事故からの復活の鍵となった練習

久々の来日となりました。まずは札幌と東京で行なわれたコンサートのご感想をお聞かせください。
リーバークネヒト
(以下L)
どちらもとても素晴らしく、室内楽を演奏するにはとてもいい雰囲気をもったホールでした。
お客さんはまだみなさんマスクをしていて、目しか見ることはできなかったけれど、その目を見るとしっかり聴いてくれていることを感じました。マスクという壁があるにも関わらず、フレンドリーでウェルカムなリアクションが客席から伝わってきました。
来日される前には、THE FLUTE ONLINEでメールインタビューをさせていただきました。ミュンヘン音楽大学で教授を務められているご経験からたくさんの勉強になるお話がありました。その中で、「私はレッスンでは生徒たちと一緒に、彼らの“内なる耳”を探る旅に出ます。そうすることで結果的に完璧なアイデアが生まれます」というものがありました。これが具体的にはどのようなことを行ない、どのようなアイデアが生まれるのか教えていただきますか?
L
この回答は長くなるわね(笑)。まず私自身のお話からしましょう。
私は2011年に事故に遭ってしまい、親指を怪我して4ヶ月間フルートを吹くことができませんでした。この4ヶ月の間には、来日してコンサートを行なう予定もありましたが、やむなくキャンセルしました。
事故後、初めてコンサートに出たとき天変地異が起きたかのように愕然としてしまいました。ヴァイオリニスト イザベル・ファウストをソリストに迎え、ブラームスの作品を演奏したコンサートでしたが、私自身はブランクがあったせいか、音程を正しく取ることができず、まったく上手く演奏することができなかったのです。 それから私はコンサートをキャンセルし、すべての時間を自分の練習に当てることにしました。最初の2週間はロングトーンだけ。自分で出した音の響きを確認し→チューナーで確認という作業をひとつずつ繰り返しました。ただひたすらこの練習だけです。新しく購入したフルートについて「この人(フルート)のことがわかった!」と言えるようになるまで。
これはフルートの練習というよりも“耳を育てる練習”でした。それを続けていき、ある日、室内楽をやっていたときに、突然他の人の音も全部聴こえ、ホールの響きも把握することができたのです。
これが私にとって新しいフルート人生の始まりだったと思います。

次ページにインタビュー続く
・演奏するパワーを生むためのリラックス
・肩甲骨周りが動く息の吸い方
・楽器によって音色が制限されることのないヤマハフルート

 
Profile
クリスティーナ・ヴァツロヴァ博士
アンドレア・リーバークネヒト
Andrea Lieberknecht
ドイツ生まれ。ミュンヘン音楽大学でP.マイゼンに師事。在学中にミュンヘン放送管弦楽団首席奏者として入団、その後ケルン放送交響楽団首席奏者を歴任した。
プラハの春国際コンクール、神戸国際フルートコンクール、ミュンヘン国際音楽コンクールをはじめ多くの国際コンクールで優勝や入賞をしている。
ソリスト、室内楽奏者としてシュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭、バイロイト音楽祭、浜松国際管楽器アカデミーをはじめとする音楽祭に数多く出演。ケルン放送交響楽団、ミュンヘン交響楽団などオーケストラとの協演も多い。
これまでにケルン音楽大学、ハノーファー音楽大学で教鞭をとり、2011年にミュンヘン音楽大学の教授に就任、現在に至る。氏の生徒の多くが国際コンクールでの優勝者、欧州の著名オーケストラの主要メンバーとして活躍している。また国際コンクールの審査員を数多く務め、国内外のマスタークラスにも招聘されている。
 
[CLUB MEMBER ACCESS]

この記事の続きはCLUB会員限定です。
メンバーの方はログインしてください。
有料会員になるとすべてお読みいただけます。

1   |   2   |   3      次へ>      
■関連キーワード・アーティスト:

アンドレア・リーバークネヒト


フルート奏者カバーストーリー