サックス記事 大野雄二&鈴木央紹 「ルパン三世」の音楽の秘密をコンポーザー&プレイヤーから盗め!
THE SAX vol.89

大野雄二&鈴木央紹 「ルパン三世」の音楽の秘密をコンポーザー&プレイヤーから盗め!

テレビアニメの新シリーズが4月からスタートした「ルパン三世」。その「ルパン三世 PART5」の音楽を手掛けているのは、もちろん今回も大野雄二氏だ。作編曲家としてのみならず、ジャズピアニストとしても日本の音楽シーンに強烈な存在感を示す氏が率いるセプテットがYuji Ohno & Lupintic Six。その中心メンバーであるサックスの鈴木央紹氏とともに巨匠にご登場いただき、完成したサントラについて語ってもらった。
(文:櫻井隆章/写真:土居政則/協力:株式会社バップ)


サックスの大活躍も目立つ2枚のサントラ

大人気テレビ・アニメ・シリーズの「ルパン三世 PART5」が始まっている。「ルパン三世のテーマ」と言えば、あのお馴染みのメロディだ。それを作り、演奏しているのが大野雄二さん率いるYuji Ohno & Lupintic Six である。そして待望の新サントラが2枚、「LUPIN THE THIRD PART Ⅴ~SI BON! SI BON!」と「THE OTHER SIDE OF LUPIN THE THIRD PART Ⅴ~FRENCH」が発売された。この2枚、実に聴き応えがある作品で、音楽的なヴァラエティも豊か。どちらも、何度も通して聴きたくなるアルバムなのだ。特に、大野さんのバンドのメンバーであるサックス奏者の鈴木央紹(ひさつぐ)さんが大活躍しているのが目立つ。とは言え、このお二人に話を聞く前に、かなり特異なキャリアの持ち主である大野雄二さんのことを先に書いておこう。
大野さんは1960年代から相当に知られたジャズ・ピアニストだった。日本には珍しい、ブラック・フィーリング溢れるピアニストとして際立った存在であったのだ。が、それに飽き足らずに、数多くのCM音楽を作る世界に身を置き、数々のヒットCMを生んだ。また、ポップ・フィーリング溢れる楽曲を、数多くのシンガーに提供、ヒット・チャートを賑わす作曲家としての顔も。さらには映画音楽の世界にも手を広げ、「犬神家の一族」や「人間の証明」といった大ヒット映画のサントラを担当。同時にテレビ番組の音楽も手掛けるようになる。この時期に始まったのが、「ルパン三世」シリーズなのだ。また、フュージョン界隈でも、今でも名作との呼び声高い作品を残してもいる。要するに、実に多才であり、換言すればどの方面にも才能を発揮する天才なのである。とは言え、あくまでも音楽的なルーツはジャズだ。近年復帰したジャズ・ライブの現場では、普段はジャズに触れることも少ないであろう若き「ルパン三世」ファンのお客さんたちに、タップリと「ルパン・ジャズ」を届けながらも、その中でしっかりとジョン・コルトレーン作曲のナンバーを盛り込んだりするような(ある種マニアックな)ライブを展開しているのである。大野さんが手がける新たな今回の「ルパン」シリーズ。ストーリーがフランスから展開するということで、いかにもなサウンドのナンバーが並んだ。そのリリース資料には「180曲も書いちゃった」とコメントがあったが?


次ページにインタビュー続く
・設計図を描くように音楽を創作
・セクションはサックスプレイヤーの個性に合わせて書く
・「ルパン」に関わってきた個性的なサックス奏者たち
・大野雄二から見たジャズサックス巨人たち

 

プロフィール
大野雄二
(おおのゆうじ)
熱海市出身。小学校からピアノをはじめ、高校からジャズを学ぶ。慶応大学在学中からプロとしての活動をスタート。藤家虹二や白木秀雄といったジャズマンたちの名門バンドで活躍。自らのトリオを結成し、さらに大活躍。その後、作曲家として膨大な数のCM音楽を手掛け、多くのシンガーにも曲を提供。また映画音楽にも進出し、「犬神家の一族」、「人間の証明」などの話題作の音楽も担当した。近年はライブ活動に戻り、自身のグループを複数持ちながらショウを展開している。

 

鈴木央紹(すずきひさつぐ)
1972年、大阪市出身。父がサックス奏者で、4歳からピアノと作曲をはじめ、10歳よりサックスを吹きはじめる。独学でジャズを学び、16歳から演奏活動を開始した。大阪音楽大学サックス科卒業。在学中からクラシックやジャズの演奏活動を行なっていた。現在は自身のカルテットの他、2006年から大野雄二の Lupintic Five(現Six)に参加。2009年には大野雄二プロデュースによるメジャー・デビュー・アルバムを発表。数々のセッションやポップスの分野でも活躍中。

 


暗闇

ルパン三世 PART5
オリジナル・サウンドトラック
「LUPIN THE THIRD PART Ⅴ〜SI BON! SI BON!」

【VPCG-83526】¥3,000(税抜)バップ 発売中
[曲目]
LUPIN TROIS 2018、シボン!シボン!、LOVE IN SÃO PAULO 2018、LUPINTICA NIGHT、ナイショdeクラリ、IN PURSUIT OF DARKNESS、I MISS YOU BABE (YES, I DO)、MON PARIS、ROYAL FLASH、LOVE IS EVERYTHING 、C'EST VRAI ?、DANGEROUS ZONE 2018、C-DAG 2018 part Ⅰ、VICIOUS GLORY 2018、セーヌの風に…(Adieu)
[演奏]Yuji Ohno & Lupintic Six:大野雄二(Pf)、鈴木(央紹(Sax)、松島啓之(Tp)、宮川純(Org)、和泉聡志(Guit)、ミッチー長岡 (Bass)、市原康(Ds)、沢城みゆき/稲泉りん(Vo) 他

 

 
暗闇

ルパン三世 PART5
オリジナル・サウンドトラック
「THE OTHER SIDE OF LUPIN THE THIRD PART Ⅴ〜FRENCH」

【VPCG-83527】¥3,500(税抜)バップ 発売中
[曲目]
[DISC1] 〈C'EST VRAI ? SIDE〉MAGNUM DANCE 2018、POKER FACE、HAPPY FLIGHT BOOGIE、MIDSUMMER NIGHT TOWN、DANCING IN THE FIRE、PAL PAL PARIS、CRAFTY GIRL、EYE CATCH 2018 #1、WIND GOD=FUJIN、ON THAT STREET CORNER、CHASING IN THE DARK、DANGEROUS 、LOVE AFFAIR~twilight、A SONG OF DOLMA、HEY ! TAXI、EYE CATCH 2018 #2、HARD DRIVE LUPIN、CREEPING MALICE、HOLIDAY AFTERNOON、PANIQUE!、C'EST VRAI ?~philly soul ver.、IMMINENT CRISIS、POUR LE VENT DE LA SEINE ~chagrin de créepuscule
[DISC2] 〈 MON PARIS SIDE〉BEYOND THE DARK、ROCK’N’ROLL PARTY、CARNAVAL、BRINK、OH ! FRANCE THAN SUE、MON PARIS~teeyah 、QUEST FOR LOVE、EYE CATCH 2018 #3、A NIGHT IN PARIS、SOCIAL HACKING、COMMENT ÇA VA ?、SPIDER、FLYING SIDEKICK、DANGEROUS LOVE AFFAIR、PROFOUND MYSTERY、A PRAYER FOR THE KINGDOM OF PADAR、BEAU TEMPS COMME D’HABITUDE、INVISIBLE TRAP、MON PARIS~aime moi、WIREPULLER、SALUT…LUPIN
[演奏]Yuji Ohno & Lupintic Six:大野雄二(Pf)、鈴木(央紹(Sax)、松島啓之(Tp)、宮川純(H.Org)、和泉聡志(Guit)、ミッチー長岡 (Bass)、市原康(Ds) 他

 


 

Live Information
「ルパン三世コンサート2018 〜LUPIN! LUPIN!! LUPINISSIMO!!!〜」
● 5月26日(土)東京キネマ倶楽部 17:30開演
[出演] Yuji Ohno & Lupintic Six with Fujikochans

「Yuji Ohno & Lupintic Six」
● 6月1日(金) 北海道 わくわくホリーデーホール(札幌市民ホール) with Fujikochans
● 6月2日(土)北海道 幕別町百年記念ホール with Fujikochans
● 6月3日(日)北海道 中標津町総合文化会館(しるべっと) with Fujikochans
● 6月15日(金)兵庫 神戸文化ホール 中ホール

登場するアーティスト
画像

鈴木央紹
Hisatsugu Suzuki

1972年11月22日大阪市生まれ。サックス奏者である父親の影響を受け4歳よりピアノ、作曲を始め、10歳よりサックスを始める。ジャズを独学で始め、16歳の時より演奏活動を開始、17歳の時「AXIA MUSIC AUDITION」においてAXIA賞Instrumental部門Grand Prixを受賞。大阪音楽大学音楽学部サックス科卒業、クラシックを前田昌宏氏に師事する傍ら、在学中もジャズでの演奏活動を行う。 現在、自己のリーダーカルテット(若井優也、佐藤ハチ恭彦、原大力)で精力的に活動を行う他、「ルパン三世」等の音楽作曲で有名なピアニスト大野雄二率いる「Yuji Ohno&Lupintic Five」を始め、原大力グループ、土岐英史グループ、江藤良人トリオ等に参加。海外のミュージシャンとの共演も多く、Benny Green、Lonnie Plaxico、Rodney Green、Conrad Herwig、 Ron Carter、Salena Jones、Kenny Washington、Peter Washington、Lewis Nash等多数、その信頼も厚い。 また、CDプロデュースワーク、楽曲アレンジ等でも「スタジオ協会録音賞」や「ゴールドディスク賞」を受賞するなど、高い評価を受けている。 そのほか数々のセッション、レコーディング、近藤房之助やZARDのサポート等、ジャンルを超え幅広く活動中。 2009年2月25日、大野雄二プロデュースによるメジャーデビューアルバムCD「Passage Of Day」をVAPよりリリース。 2014年12月3日、鈴木央紹カルテットCDアルバム[Standards++]をリリース。

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