サックス記事 上野耕平 5年の時を経てデビューアルバムの 続編にチャレンジした新世代エース
THE SAX vol.99

上野耕平 5年の時を経てデビューアルバムの 続編にチャレンジした新世代エース

2013年に収録されたアルバム「アドルフに告ぐ」(以下「前作」)の意図を受け継いだ最新アルバム「アドルフに告ぐII」が2019年末にリリースされ、注目を浴びる上野耕平。トマジ、マルタン、デュクリュックという「定番」に加え、日本が世界に誇る和太鼓の名手、林英哲とのデュオを収録した、実に意欲的な一枚だ! 

インタビュー・文:埜田九三朗 アーティスト写真:©Ken Murakami 取材協力:日本コロムビア株式会社


デビュー以来すべてを知る愛器とともに

上野耕平
前作以上の意欲的なアルバム、本当にアドルフ・サックスに聴いてもらいたいな!と思いました。
上野耕平
ありがとうございます。「告ぐ」というと、なんか偉そうな「上から目線」みたいな感じがするかもしれませんが(笑)、気持ちとしては「あなたがつくった楽器は、今ではこんな素晴らしい作品に恵まれているということをご報告させていただきます」というような、いわば「下から目線」なんです(笑)。
使用したのは前作と同じYAS-875EXGですか?
上野
そうですね。現在(2019年12月21日取材)は、3年前にリニューアルした同じモデルを使用していますが、2019年10月の収録当時はデビュー以来の、以前の875EXGでした。
デビュー以来の、上野耕平のすべてを知っている楽器ですね。
上野
そうですね。2011年の「管打コン(日本管打楽器コンクール 日本音楽文化振興会主催)」 の後に買ってから以来8年間ずっと一緒だった楽器と収録した最後のアルバムになりました。この録音が終わってから、今の楽器に変えたんです。新しい楽器は音のつながりがものすごくよくなりましたね。サックスではオクターブキィがからむ「シドレ」のあたりの音がつながらず苦労するのですが、新しいYAS-875EXGではその部分が抜群によくなり、そんな苦労が不要になりました。
楽器を変える以前に、8年間でいろいろ変化を感じてきたのでは?
上野
より音楽を俯瞰して見られるようになりましたね。奏法的に言えば、楽器の鳴らし方が変わってきましたね。昔はアンブシュアでプレッシャーをかけてとにかく息のスピードの速さを命に、という吹き方だったのですが、今は息の太さと速さをいろいろと変えて、その都度アンブシュアも変化させてというのかな……。前は「しっかり鳴らすこと」ばかりを考えていたのですが、今は「いろんな鳴らし方」をする、というのを心がけていると思います。

CD Information

アドルフに告ぐII

「アドルフに告ぐII」 
日本コロムビア
【COCQ-85478】¥3,000(税別)
[収録曲]逢坂裕:ソプラノサクソフォンとピアノのためのソナタ エクスタシス(世界初録音)、フェルナンド・デュクリュック:ソナタ 嬰ハ調 第1楽章〜第2楽章 Andante〜第3楽章Fileuse、第4楽章Nocturne et Rondel、アンリ・トマジ:バラード、フランク・マルタン:バラード、藤倉 大:ブエノ ウエノ(世界初録音)
[演奏]上野耕平(As,Ss)、山中惇史 (Pf)、林英哲(和太鼓)

次ページにインタビュー続く
・念願が叶って林英哲氏との初共演が実現!
・ 演奏するたびに音楽が柔軟に変わっていく曲
・品のある色気をサクソフォンで追求していきたい
・どの曲もロングトーンに想いを入れられるかどうか

登場するアーティスト
画像

上野耕平
Kohei Ueno

茨城県東海村出身。8歳から吹奏楽部でサックスを始め、東京藝術大学器楽科を卒業。日本国内では早くから頭角を現し、学生時代にデビューを果たす。第28回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門において、史上最年少で第1位ならびに特別大賞を受賞。2014年には世界最高峰サックスコンクール、第6回アドルフ・サックス国際コンクールにおいて第2位を受賞。2016年のB→C公演では、全曲無伴奏で挑戦し高評価を得ている。常に新たなプログラムにも挑戦し、サクソフォンの可能性を最大限に伝えている。CDデビューは2014年「アドルフに告ぐ」、2015年にはコンサートマスターを務めるぱんだウインドオーケストラのメジャーデビュー、また2017年にはThe Rev Saxophone QuartetのデビューCDをそれぞれリリース。第28回出光音楽賞受賞。現在、演奏活動のみならず「題名のない音楽会」、「報道ステーション」等メディアにも多く出演している。昭和音楽大学非常勤講師。The Rev Saxophone Quartet、ぱんだウインドオーケストラコンサートマスター。

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