リコーダー記事

自然にボーダーレスに。僕らの音楽はこうして生まれ、出会った

Interview│吉澤 実&栗コーダーカルテット

日本リコーダー界の父ともいうべき存在の吉澤実さんと、独特のリコーダーサウンドで幼児から大人までの心を掴む栗コーダーカルテット。一見交わらなそうな両者が様々な場所でコラボしてきたことは、よく知られている。
NHK教育テレビ番組「ふえはうたう」の“先生”として出演してから35年を経て、たくさんの後進を育ててきた吉澤さん。国内外で活躍する名だたる奏者たちの多くが、その薫陶を受けている。結成から27年目を迎える栗コーダーカルテットの栗原正己さんも、実はかつて吉澤さんの門戸を叩いた一人だ。
リコーダーと音楽と教育、そのどれもに惜しみなく情熱を傾けてきた吉澤実という演奏家と、ユニークな世界観を持つ栗コーダー。それぞれの原点と歩み、出会い、そしてお互いについて思うこと─あらためて、深掘りしながら聞いてみた。
写真:いしかわみちこ

 

フランス・ブリュッヘンの衝撃……「始めるしかない!」

まずは、皆さんとリコーダーとの出会いを聞かせてください。吉澤さんがリコーダーを手にとったきっかけは?
吉澤
武蔵野音大の学生だった時に学校のオーディオルームで、たまたまフランス・ブリュッヘンの録音を聴いたのが最初の出会いでした。フルート専攻でしたが、ちょうどフルートの音源がなくて、じゃあリコーダーでも聴こうかな、くらいの感じで。忘れもしない『イタリアン・グラウンド』でしたが、あまりの素晴らしさに聴きながら涙が溢れてきたんです。これはもう自分でも始めるしかない!と思った。それが最初のきっかけで、その後リコーダー同好会を立ち上げました。

─中略─

その後の紆余曲折は、吉澤さんの伝記本「笛よ!歌え!~吉澤実とリコーダーの世界~」(市川克美著、フォルンミュージックアトリエ刊)に詳しいですが、数年後に帰国されてから上杉紅童さんに出会ったのですね。
吉澤
上杉さんは当時、NHK教育テレビの「ふえはうたう」で先生役をされていました。彼が主催していたコンサートに入れてもらって演奏活動をするうちに鍛えられ、そのうち僕もテレビに出るようになり、後に上杉さんから「ふえはうたう」の先生役を引き継ぐことにもなりました。
栗原
そこから僕たちがいつも見ていた、テレビでおなじみの先生になっていったわけですね。
吉澤
“たて笛”を“リコーダー”と呼ぶようにしたのも、あの時。それがきっかけになって、小学校の学習指導要領でも93年から名称が変わりました。学校の音楽教育の中で日本の音楽についても学ぶようにしたり、少しずつ、昔から変えたいと思っていた部分の改善にも携われるようになりました。
日本の学校の音楽教育とリコーダーは、関わりが深いですからね。
関島
僕たちも栗コーダーカルテットを始めてから、子どもが集まるイベントや学校なんかでもずいぶん演奏する機会をいただくようになりました。日本では誰もが学校で手にするものだし、それだけ身近に感じてもらえる楽器なんだな、と実感しますね。
吉澤
『ピタゴラスイッチ』と栗コーダーカルテットは、音楽の教科書にも載りましたからね。僕は20年以上教科書の編集や執筆をしているんだけど、栗コーダーを登場させたくて……それがかなったんですよ。これほどリコーダーで子どもたちに影響力のある演奏家は他にいないから。
栗原
小学生の子どものいる知り合いから、たまに連絡が来ます。「見つけちゃいました」って(笑)。
川口
まさか自分が教科書に載るとは思いませんでしたよね(笑)。本当に申し訳ないような感じです。

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