リコーダー記事

歴史でひもとくリコーダーストーリー

The Recorder│Chapter 7

有史以前に先祖を持つリコーダーは、どんな歴史をたどりながら歩みを進めてきたのでしょうか。
楽器としての変遷、作曲家や演奏家とのかかわり、その音楽―専門誌「季刊リコーダー」GES(総合専門監修)であり、リコーダー奏者としてもこの楽器を見つめ続けてきた森吉京子さんに、ひもといていただきました。

森吉京子(もりよし・きょうこ)
オランダ、デン・ハーグ王立音楽院卒業。リコーダーをリカルド・ カンジ氏に師事、音楽学をレベッカ・スチュワート氏に師事。音楽学を須貝静直氏に師事し静岡大学大学院修了。リコーダーを山岡重治氏に師事し、東京藝術大学大学院博士後期課程修了。専門誌『季刊リコーダー』GES。

 

リコーダーの誕生と種類

音楽概論よりルネサンス期の音楽理論家、ヴィルドゥング S.Virdung著『音楽概論』(1510)より。左右の手の位置が2種掲載されている

ブロックと呼ばれる「栓」がはめ込まれ、V字にカットされたエッジを持つ管楽器リコーダー。現在のリコーダーの発音構造に似た管楽器は有史以前から存在していましたが、楽器の表側に7個の指孔、裏側に1個の指孔を持った時にリコーダーは完成されたと言えます。その後、音楽史におけるバロックと呼ばれる時代の終焉までに、様々な変貌を遂げていきます。
リコーダーの呼び名の一つに、フランス語のフリュット・ア・ヌフ・トゥル flûte à neuf trout(9個の指孔を持つフルート)があります。現代のリコーダーの指孔は表に7個、裏に1個なので、合計すると8個のはずなのですが、なぜ「9個の指孔を持つフルート」と呼ばれていたのでしょうか。
実は、音楽書などに完成された音楽楽器として掲載され始めた頃の指孔が表に8個ありました。当時は、現在のように演奏する際の左右の手の位置が決まっておらず、上下反対に演奏することもあったため、表にある一番下の指孔は左右に2つあり、演奏者が不要な一方を蝋で塞いでいたのです。

 

形状の違い

 音楽史の時代区分と様式観を意識することによって、リコーダー作品を演奏する際には大きく分けて2種類のタイプを使い分けます。内径が円筒から末広がりで、1本の木か頭部管と長管の2分割からなる楽器をルネサンス型リコーダー、内径が円錐状で、頭部管・中部管・足部管の3分割からなる楽器をバロック型リコーダーと呼びます。
 これら二つのタイプのリコーダーを、音楽史の時代区分と様式観を意識することによっておよそ次のように選択しています。「ルネサンス型リコーダー」や「バロック型リコーダー」などの呼び方は便宜的に使用されているものですが、実際にはもっと多くの異なる形状のリコーダーがあります。

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