サックス記事

温もりと寛ぎを運ぶ~冬のボサノヴァ~対談

THE SAX 69号 特集1

1950年代末にブラジルのリオデジャネイロで産声を上げた、当時における最先端の音楽「ボサノヴァ(Bossa Nova)」。誕生から50年以上経った今でも世界各地で愛され、特にここ日本では絶大な人気を誇る音楽ジャンルでもある。そして近年はイメージが強い夏だけではなく、季節を問わず一年中ボサノヴァが街のどこかで流れている。そこで、The Sax 69号では「冬のボサノヴァ」と題して、寒いこの季節をホットにしてくれる効果もあるリラクゼーション・ミュージック「ボサノヴァ」の魅力に迫った。

ボサノヴァの発祥と発展

 

ボサノヴァ(Bossa Nova)は1950年代末、当時のブラジルの首都、リオで誕生した。 ボサノヴァの誕生と発展に最も大きな役割を果たした2人の音楽家が、作曲家兼ピアニストのアントニオ・カルロス・ジョビン、歌手兼ギタリストのジョアン/ジルベルトだ。この2人をツートップとする新たな音楽の胎動は、リオの裕福な家庭に育った音楽好きの学生などの若者たちを巻き込んだが、大衆に波及するまでには至らなかった。

その反面、海外への浸透は早く、きっかけになったのが、ヴィニシウス・ヂ・モライスが書いた戯曲を、物語の舞台をリオのカーニヴァルに置き換えて制作したフランス映画「黒いオルフェ」。ジョビン作曲の『フェリシダーヂ』、ルイス・ボンファ作曲の『カーニヴァルの朝』といった挿入曲が世界に広まった。

アメリカ人がボサノヴァに注目するきっかけとなったのが、チャーリー・バードとスタン・ゲッツによる62年の作品「ジャズ・サンバ」。その他、ポール・ウィンターによるブラジル音楽集「ジャズ・ミーツ・ボサノヴァ」や、ジャズ・ボサノヴァの決定版となる「ゲッツ/ジルベルト」も同年に収録されている。 「ゲッツ/ジルベルトから『イパネマの娘』が大ヒットして以降、ポップス界にも人気が広がった。興味深いのは、ジャズ界では、サックス奏者によって取り上げられることが多いということ。スタン・ゲッツ、ポール・ウィンター、キャノンボール・アダレイ以降も、バド・シャンク、ポール・デスモンドらがボサノヴァ志向のアルバムを録音。日本では、渡辺貞夫がアメリカ帰国後の67年に「ジャズ&ボッサ」を発表してボサノヴァ・ブームに火がついた。

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Bossa Nova Meeting
 菅野浩 & 石川周之介
若手サックスの名手が、Bossa Novaの魅力について語り合う!

菅野浩 石川周之介

名だたるジャズ・サックスプレイヤーが魅せられ、取り組んできたボサノヴァ。ギターやピアノ、歌が中心だったその音楽に、いつからかサックスは大きな存在感を示すようになった。日本でも多くのサックス奏者がボサノヴァのジャンルで活躍し、そのフィールドを広げている。今回はその代表ともいえるプレイヤー、菅野浩と石川周之介の2人に対談をお願いした。ジャズプレイヤーとして活躍する彼らだからこそ、痛い目を見たこともあるというボサノヴァ。THE SAX 69号では、その魅力と難しさについて、大いに語ってもらった。ここでは、その一部を紹介しよう。

 

――それぞれのボサノヴァとの出会いを教えてください。

石川   僕はやっぱりスタン・ゲッツのアルバム「ゲッツ/ジルベルト」だと思います。ただ、同時期にロックバンドでベースをやっていて、ピンク・クラウドのアルバムの中に何曲かボサノヴァがあったんです。なんてかっこいいんだろうと思ったので、入口はそれだったのかもしれません。そのあと、ボサノヴァの道をたどって行きついたのがゲッツでした。

菅野浩

菅野   僕は中学でアルトサックスを始めて、高校ではビッグバンドをやりました。そこでジャズに出会って、そうしているうちにボサノヴァの曲も演奏していたと思います。気づいたら自然にやっていたという感じです。演奏活動を始めてからボサノヴァを専門にやっているギタリストに誘われる機会がちょくちょくあって、本格的にやり始めてからこういう世界なんだと知りました。

――ボサノヴァはギターやピアノに歌というスタイルが定番ですが、そこに管楽器であるサックスが加わると一気にジャズ度が増すという流れはありますか?

菅野   ある時、ジャズミュージシャンがボサノヴァに注目して取り上げて、ブラジルのミュージシャンとやるのが流行ったんですよ。それでジャズの要素と混ざったジャズ・ボッサが生まれたんです。。

石川周之介

石川   ジャズ・ボッサはハンク・モブレーが出てきた時点だと思うんですが、ボサノヴァ専門のプレイヤーからするとジャズのコード進行を取り入れて自分たちの音楽として消化しているので、逆輸入みたいな感じですよね。例えるなら、珈琲のブレンド。ジャズとボサノヴァやサンバをどの割合で混ぜるのが好きなのか。それにはボサノヴァの根っこを知っていたほうが、自分の身を守れる気がします。ただボサノヴァっぽいことをしているだけだと、危険な落とし穴にはまってしまいますから。

菅野   ジャズのコードを取り入れたボサノヴァを、ボサノヴァ専門のプレイヤーが進化させたテンションの入れ方が定番になっていることもあります。それをジャズの人たちが知らないでセッションすると、ゴチャゴチャになる。僕もそれで痛い目に何度もあってます(笑)。

気になる対談の続きは、THE SAX 69号 をチェック!

 


Bossa Nova 動画レッスン
菅野氏と石川氏のお二人に、ボサノヴァを演奏する際の特徴的な、音色・アーティキュレーション・リズムについて、実演していただいた。

★ 実演時のコード進行

(For Concert Key)
|B♭m7|E♭7|Cm7|F7 |
|B♭m7|E♭7|Cm7|F7 |
|B♭m7|E♭7|Cm7|F7 |
|B♭m7|E♭7|A♭△7|A♭△7|

(For Alto Saxophone)
|Gm7|C7 |Am7|D7 |
|Gm7|C7 |Am7|D7 |
|Gm7|C7 |Am7|D7 |
|Gm7|C7 |F△7|F△7|

(For Tenor Saxophone)
|Cm7|F7 |Dm7|G7 |
|Cm7|F7 |Dm7|G7 |
|Cm7|F7 |Dm7|G7 |
|Cm7|F7 |B♭△7|B♭△7|

 

 

 

★ ボサノヴァギターの基本パターン 1
とてもシンプルで「これぞボサノヴァ」と言えるリズムパターンですね(通常ボサノヴァは2/4拍子で表記されます)。 サンバをギター1本で演奏する「バチーダ」こそが皆さんの耳馴染みのあるボサノヴァのサウンドであり、リズムなのです。 もちろん、ギターだけでなくピアノでも演奏することができます。

★ ボサノヴァギターの基本パターン 2
ボサノヴァギターの基本パターンはもうひとつあります。このリズムパターンにはサンバで使われるスルド、タンボリン、ガンザという 3つの打楽器のパターンが集約されています。早速、各楽器のリズムを見てみましょう。

THE SAX 69号では、さらに詳しく石川氏によるボサノヴァ音楽解析(リズム&コード)を掲載!

THE SAX 69号に、Score掲載!
「Bossa Antigua / ポール・デスモンド」採譜・解説_菅野浩
「Corcovado / ハリー・アレン」採譜・解説_石川周之介
「Bossa Real / ケニー・G」採譜_山口宗真

 


菅野 浩(すがの ひろし)
1973年生まれ。中学入学と同時にブラスバンドでアルトサックスをはじめ 、明治大学を卒業後ライブやストリートでの演奏を中心に活動。一時期、ポール・デスモンドに強く影響を受け、通称ポールというニックネームも付くほど。様々なミュージシャンとの共演・セッションを経験。最近では「Jazzy Christmas / Peaceful」(T5 Jazz Records)や、中村善郎「ボサノヴァの歴史」などの作品に参加。 また、落語家の 柳家小権太改め、柳家東三楼とJAZZ寄席なるセッションにも出演した。毎週月曜は横浜ロイヤルパークホテルのスカイラウンジ「SIRIUS」に自己のバンド“Totem Pole”で出演中。2010年、初リーダー・アルバム「Emily」発売。2011年10月、宮野裕司&菅野浩が双頭リーダーのバンド“altalk”で、「ALTO TALKS」発売。2013年1月、新国立劇場において日本初演となったバレエ作品「テイク・ファイヴ」(振付: デヴィッド・ビ ントレー氏)ではデイヴ・ブルーベック・カルテットの名曲を披露。最近ではクロマチック・ハーモニカの演奏も行なう。
最新アルバム「LANDMARK BLUE ~ぼくたちのララバイ~」を2014年に発表した。

■使用楽器:ヤマハ82ZS/マウスピース=ダダリオ6番/リード=リコ ジャズセレクト3ミディアム アンファイルド/リガチャー=セルマー オールド銀メッキ
■CD information
「LANDMARK BLUE ~ぼくたちのララバイ~」
【T5J-1005】¥2400(税抜き)
演奏:菅野浩(Sax、Harmonica)/ 高田みち子(Vocal)/小林岳五郎(Fender Rhodes、key)/佐津間純(Guit)/工藤精(Bass)/藤井伸昭(Dr)
■LIVE information
毎週月曜 横浜ロイヤルパークホテル スカイラウンジ シリウス(045-221-1155)
http://hiroshisugano.tumblr.com/

 


石川 周之介(いしかわ しゅうのすけ)
サックス、フルート、ボサノヴァ・ギター奏者。明治大学ビッグ・サウンズ・ソサエティ・オーケストラ出身。2000年よりアメリカのニューオリンズ大学にて留学後、拠点をオランダに移しロッテルダム音楽院(Codarts)で5年間学び、演奏活動を行う。世界最大規模のノースシージャズフェスティバル出演やオランダ王室演奏会での演奏など幅広く活動。卒業し欧州教員免許を取得。
現在、「Uit Nederland(アウトネーデルランド)」をはじめ、複数のバンドやユニットで都内を中心に活動中。中塚武、青木カレンはじめ様々なアーティストのサポートも行なっている。2012年はiTunesでオリジナル曲を2度に渡り配信し、どちらもジャズチャート1位を獲得。12月に自身初となるアルバム「shumusic atonal」をリリース。2013年8月クインシー・ジョーンズの37年振りの来日コンサートにてビッグバンドのメンバーとして共演を果たす。

■使用楽器:セルマー スーパーバランスドアクション49000番台/マウスピース=オットーリンク フロリダ8番/リード=Wood Stone 3/リガチャー=オットーリンク純正フロリダ(アルト仕様)セルマー(メタル用)
■LIVE information
2015年2月1日(日)OVE南青山(03-5785-0403) ¥4,000(ミュージックチャージ&お食事代込み)
http://shumusic.net/shumusic/Home.html