サックス記事

vol.39「サックスバンドでサックスの魅力をまるごとお届けします!」

THE SAX vol.61(2013年9月25日発刊)

最近のスガワ

読者の皆さん、こんにちは。今年の夏も暑かったですね! そして今年もやってきました、芸術の秋。皆さん、今年はどんな芸術に出会えるでしょうか?

さて今回は、久しぶりに僕の活動についての話をしてみたいと思います。今年2013年は、僕がデビューして29年目、来年は30年の節目となります。演奏家としてもっと成長するために、このところ活動の柱に加えた「啓蒙活動」について、少し紹介させてください。

 

 

サックスバンドでサックスの魅力をまるごとお届けします!

現在の僕の演奏家としての活動は、コンチェルトを吹いたりリサイタルを開いたりするソリストとして、またトルヴェール・クヮルテットがメインですが、その他にバンドネオンの小松亮太くんやヴァイオリンの奥村愛さんとタンゴのバンドをやったり、キッズのためのコンサートに出演することもあります。そして、少し難しい言葉ですが、啓蒙的なこと、要するにサックスの楽しさを多くの皆さんに広めるための活動を加え、この3つを柱としています。

啓蒙活動のひとつとして、「サックスバンド」を始めました。サックスだけのアンサンブルには、サックスオーケストラ、ラージアンサンブルなどいろんな呼び方がありますが、僕は「合奏」ということを表す「バンド」という言葉を使いました。バンドっていうとジャズバンドやロックバンドのイメージがあるかもしれませんが、吹奏楽のことをアメリカではウインドバンド、シンフォニックバンドというように、合奏体という意味なんです。合奏ということならば、デュオでもバンドだし、50人集まってもバンドですから、そういうフレキシビリティに富んだサックスの魅力を表現していこうというわけです。基本はサックス8本くらいとして、それよりも大きい14~15人の形態もあれば50人のこともあるというように、いろんな可能性が考えられます。

メンバーは若いプレイヤーや僕がかつて教えていたプレイヤーが中心ですが、公演に訪れた土地で活躍するプレイヤーと共演するなど、交流もできると思います。もちろん交流するのはプレイヤーだけじゃなく、各地のサックスファンに向けてワークショップを行なったり、初めて講座なんてこともできるかもしれません。現に関西ではすでに、若手サックス奏者によるサックスパーティというグループの音楽監督として応援することも始まっています。

演奏する曲に関しても、いろんなチャレンジをしてみようと思っています。例えば吹奏楽の名曲をサックスだけでやってみようとか、ポップスやジャズテイストのある曲、いろんな性格を持った曲をプログラミングしてひとつのコンサートにします。

ご存じの通り、サックスはクラシックだけじゃなくジャズやロックや幅広いジャンルで使われますが、“広く浅く”じゃなく、それぞれの音楽の「特徴」を出すために使われることが多いんです。いろんなジャンルのキーポイントになるところの音色を担当することが多い。それがサックスの魅力だと僕は思います。ですからサックスバンドをやる以上は、そういったサックスの多種多様な魅力も出して、同族楽器なのにずっと同じ音じゃない、聞いている人が飽きない音作りをするのも、サックスのことをわかってもらうためのポイントかなと思っています。

また、サックスには音程を上げ下げすることで作るヴィブラートがありますが、それは弦楽器に似ていると思います。弦楽器のオーケストラは基本的にヴァイオリン1、ヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ1、コントラバス1という5声部で編成され、同じ楽器、同じ音で合奏していく中で、プレイヤー同士の微妙な音程や音色のズレが揺らぎを作ります。それがサックスバンドにも言えるんです。一人一人のヴィブラートの微妙な違いが揺らぎになって、音の豊かさ、ふくよかさになる。ですから、50人のバンドだからといってたくさんのパートがあるわけではなくて、同じようなパートを重ねて、人数の増減によって音色の幅、奥行きを変えて立体感を出していく。サックスで、ストリングオーケストラが醸し出す雰囲気と近いものが出せるんじゃないかとも考えています。

日本はサックス大国です。アマチュアもプロも含め北海道から沖縄までたくさんのグループがあって、それぞれ楽しく活動しています。プロはもちろん、アマチュアの人たちでも自主的にコンサートを開催するほどにサックスを愛してくれています。そのサックス大国日本であっても、やはり、さらにたくさんの人にサックスを好きになってもらいたい。そして、好きになった人にはもっとたくさんのプレイヤーの演奏を聴いてもらいたいし、一部のサックスファンのためだけの演奏会ではなく、一般の人たちもサックスの演奏会を聴いてくれるようになれば……、そういう未来の入り口になる活動を拡げていきたいと考えています。

来年の僕のデビュー30周年の節目には大きなイベントを企画していますが、そのプレ企画として、11月2日に東京の紀尾井ホールでコンサートを開催します。前半はサックスとピアノの編成で、本多俊之さんに書いていただいた『風のコンチェルト』とフランクの『ヴァイオリンソナタ』という2つの大曲をじっくり聴いてもらい、後半はサックスバンドでの演奏です。メンバーは、現役の芸大生やかつて僕が芸大で教え今や立派な演奏家として活躍している人たち、総勢50人以上のバンドで大騒ぎしてしまおう!という内容です。僕は指揮もします!サックスのゴージャスなところからデリケートなところまで、相当楽しんでいただける内容だと思いますので、皆さまどうぞご来場ください。

 

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

次回のテーマは「教えること、教わること その1」。
レッスンで教える際の心構えについて語ります。お楽しみに!

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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