THE SAX vol.64(2014年3月25日発刊)より転載 

田中靖人の吹奏楽サックス A to Z 第14回 | 新入生歓迎&部員確保編

新入生歓迎&部員確保編

たくさん部員を集めたいけど、入部してもらうにはどうしたらいいのか? かつて中学・高校の吹奏楽部に所属し、部員集めの苦労を経験した田中氏ならではの熱いアドバイスを、ぜひ生かしてください。

 

Q. これぞ鉄板!の勧誘方法はありますか?
田中さんが吹奏楽部時代、「これで新入部員を獲得した」という方法があればぜひ知りたいです。教えてください!

A. サックスの「楽しさ」「カッコ良さ」を全面に出そう!
私が吹奏楽部にいた中学、高校時代は、体育館で部活動紹介の集会があって、みんなの前で演奏したりして入部を呼びかけていました。
そのあと放課後には、部室へ見学に来た新入生に演奏を披露したり、校内の目立つところで練習をしたりして、4月から5月にかけて新入生を勧誘していました。
とにかく「楽しい!」「カッコいい!」など、自分たちがPRしたいことを考えて手を尽くすことですね。

 

Q. 新入生に聞かせる曲はどうやって探せば?
部員の人数が毎年ギリギリしか集まらなくて、苦労している吹奏楽部です。今年の新入生歓迎時期には、昼休みや放課後に積極的に演奏して目立ち、新入部員を増やそう! ということになりました。サックス3本または4本で、短くて、あまり難しくなくて、しかもカッコいい曲はありますか?

A. メンバー自身がみんなで聴いて探しましょう!
今は、ネットで膨大な情報を見ることができますね。曲によってはYou tubeで演奏を聴くこともできるので、メンバー全員で見たり聴いたりして相談してみてはどうでしょうか?
私が教えることは簡単なことですが、まずは自分たちで話し合い、考えて、探すなど、演奏に至るまでのプロセスを楽しむことは、良い経験になると思います。
またこの「吹奏楽サックスAtoZ」のコーナーでの過去の回答も、アドバイスとして考えてみてください。

 

Q. 勧誘したいけど、声をかけづらい……。
昨年始めた初心者なので、教えることに自信がありません。そのため、新入生に声をかけるのに気が引けてしまいます。自分たちの部活には「新入生に声掛け、1人1日10人」というノルマ? があるので、今から気が重いです。どうしたら気軽に声をかけられるようになるでしょうか。

A. 仲間と一緒なら怖くないですよ
積極的な人であれば、新入生に声をかけることに抵抗はないでしょうが、人によってはその勇気が……という気持ち、よく分かります。
でも、“1人1日10人”のノルマといっても、1人で動かないといけないわけではありませんよね? 例えば友だち2人で協力しての声掛けなら、勇気が出てきませんか?
2人で20人声掛けならどうでしょうか?
頑張ってください!

 

Q. 自分より上手な後輩にどう接すれば?
どうやら、以前からサックスのレッスンに通っている新入生が入部しそうです。明らかに自分たちよりうまいと思います。どのように接したらよいか今から悩んでいます。なにか気をつけることはありますか?

A. 素直にうまいことを認めた上で、普段通りに接すればOK
上手な新入部員が入るなら良いことと思いますが……。
年齢に関係なく出来る人が上司になるという、会社のような世界とは違うのですから、先輩らしいこれまでの接し方で良いと思いますよ。
楽器の技術がうまいと思うなら、そこは見習うとか、教えてもらうとか、盗むとか(笑)。私なら素直に認めます。

 

Q. 「部活が厳しい」というイメージで新入生が来ない……
地元では(吹奏楽コンクールなどで)強いといわれている吹奏楽部です。そのせいか「部活がとても厳しい」「勉強する時間がない」というイメージがあるらしく、中学の後輩を誘ってもいい返事がもらえません。この誤解?を解いて吹奏楽部に明るいイメージを持ってもらうにはどうしたらいいでしょうか。

A. ふだん感じている部活の楽しさを前面に出して勧誘を!
コンクールで強い学校など、盛んに活動している団体は、それなりの練習内容をこなしているわけですから、部活が厳しいとか時間がないというのは多少なりとも事実です。
ですが、そういうことだけが前面に出てしまうと、それが部活のイメージになってしまいます。ですから、音楽の楽しさ、みんなで力を合わせて何かを達成するチームワーク、また達成するまでのプロセスを楽しむことなど、プラスのイメージを表に出すことです。
とにかく楽しいんだということをPRしましょう。部員が楽しんでいるならば、その気持ちはきっと伝わるでしょう。
厳しさや時間のなさは、入部してから人によってはぶつかる問題になるでしょうが、その向こうに楽しさが待っているということを感じてもらえると良いですね。
頑張ってください!

 

Q. 助けて! 楽器がもう限界です。
新入生を迎える準備をしているのですが、ボロボロの楽器があります。強く押さないと閉まらないキィがあり、音階がうまく出せません。顧問の先生は「他の楽器にもお金がかかる」というのですが、もう限界です……。顧問の先生にサックスの修理をお願いするのにうまい言い方を教えてください。

A. 楽器店の調整会に持ち込んでみては?
部の予算は限られているでしょうから、切実な問題ですね。
私が吹奏楽部にいた頃も大変でしたし、今もクリニックなどで会う生徒の楽器はひどい状態のものも多いです。
時々ですが、楽器店主催で「無料調整会」をやっているところがあるので、そういう機会に少しでも調整してもらえると良いですね。
あとは、楽器店の方から先生に、この楽器は本当にひどい状態だと伝えてもらって、調整しないと使えないことを理解してもらってはどうでしょうか? それによっては、先生がサックスの修理を優先してくれるかもしれませんね。

 

サックスの楽しさ、カッコ良さ、音楽の素晴らしさを伝えればきっと新入生はついてきます!
田中靖人

※この記事はTHE SAX vol.64を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中、第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位を獲得。1991年には「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」でCDデビュー。1995年「ラプソディー」、1997年「サクソフォビア」を、03年「ガーシュインカクテル」を、2012年「モリコーネ・パラダイス」をリリース。一方、室内楽のジャンルではサクソフォン四重奏団[トルヴェール・クヮルテット]で活躍。2001年には文化庁芸術祭レコード部門大賞受賞。現在、昭和音楽大学客員教授、国立音楽大学教授として後進の指導にもあたっている。


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