サックス記事 Wood Stone CLASSIC LIGATURE×宮崎真一
THE SAX vol.109

Wood Stone CLASSIC LIGATURE×宮崎真一

昨年の発表以来瞬く間に話題を集め、生産が追いつかないほどの人気を博している「Wood Stone CLASSIC LIGATURE」。魅了的なサウンドと洗練されたデザインはもちろん、素材・仕上げ違いによる多彩なラインナップも興味を惹く要因だ。
そこで、クラシックをはじめ様々な音楽シーンでの活動に加え、サクソフォンの楽器史研究家としても活躍する宮崎真一さんに、アルト用と新たに発売となったソプラノ用 Wood Stone CLASSIC LIGATUREの各種ラインナップを試奏・検証してもらった。
なお、本編の最後に宮崎さんによる試奏 動画を公開中!!
コメントと併せてサウンドもぜひチェックしてみよう。

Wood Stone CLASSIC LIGATURE

写真1
Alto Sax/ラバー(サイズ4)
上列、左より:SP(シルバープレート)、NP(ニッケルシルバー)
下列、左より:BR(ブラス)、GP(ゴールドプレート)、CO(コパー)
写真2
Soprano Sax/ラバー(サイズ2)
左より:GP(ゴールドプレート)、SP(シルバープレート)、NP(ニッケルシルバー)
 
 
Profile 宮崎真一 Shin-ich MIYAZAKI
クラシックのソリストとして国内外で演奏するほか、音楽史/楽器史研究家として専門誌に連載を持つなどユニークな活動を展開。サクソフォンラージアンサンブルISLE、ザッキー&メグムンとサックスが吹き隊などの指導者として社会教育活動にも力を入れています。
YouTubeチャンネル/https://www.youtube.com/TRACTIONAVANT

宮崎真一さんセッティング
●Alto Saxophone
[楽器] Wood Stone Alto Saxophone. New Vintage WSA-GL(ゴールドラッカー)
[マウスピース] Selmer Claude Delangle [リード]レジェール Signature 3½
[リガチャー] Wood Stone CLASSIC LIGATURE GP(ゴールドプレート)
●Soprano Saxophone
[楽器] Wood Stone Soprano Saxophone HGGL(ゴールドラッカー)
[マウスピース] Selmer Concept [リード]レジェール Signature 3½
[リガチャー] Wood Stone CLASSIC LIGATURE GP(ゴールドプレート)
 

自分の色をつけられる

Wood Stoneクラシックリガチャーをすでにお使いということですが、その魅力とはどんなところでしょうか?
宮崎
Wood Stoneからクラシックリガチャーがリリースされてすぐにゴールドプレート(GP)仕上げを試しましたが、パッとひと吹きしただけで良さがわかりました。
クラシックリガチャーもそうですが、Wood Stoneの製品に関しては、偶然いいものがあって、悪いものがあるという優劣がありません。個体それぞれの性格の違いはあっても数ある中からどれを選んでも間違いがない。精度の高い作りが魅力の一つです。
音色の特徴はどうですか?
宮崎
自分自身で色をつけられる。自分のイメージした音を出せるリガチャーです。
リガチャー自体が変に主張してほしくないと思うのですが、クラシックリガチャーは、その点とてもニュートラルで、強い自己主張をしない。
逆にWood Stoneの楽器、Alto Saxophoneのコパーやブラックニッケルモデルのような性格の強い楽器と合わせた時は、より楽器の持つ音色、キャラクターを打ち出してくれます。
ラッカーの楽器はパッと明るく、コパーの楽器だったら雑味を含んで響きが広がり、ブラックニッケルはすごくフォーカスされたシャープな音色というように、より個性を発揮してくれます。リガチャーの性格に集約されるのではなく、その反対です。プレイヤーに対してもそうですね。プレイヤーの持っている性格、個性を邪魔することなく、さらに引き出してくれると思います。これは、CLASSIC LIGATUREに限らず、楽器本体、ネックスクリューなどすべてのWood Stone製品に共通して言えることです。
 

クラフトマンシップに基づく逸品

Wood Stone CLASSIC LIGATUREの作り、形状からどんなコンセプトやポテンシャルが伺えますか?
宮崎
例えば、1本ネジのボトムスクリューに、ローレットの刻みが入っていないのには理由があることを石森管楽器さんより訊きました。
ストレートやクロスハッチといったローレットが入っているほうが回しやすいはずですが、そうすると締め込み過ぎにより、リードの振動にも良くないし、バンド部分の金属は伸びてしまいリガチャーの故障にもつながってしまう。そういった気遣いもあって、スクリューの側面には、Wood Stoneの刻印のみを施し、あえてスクリューに力が加わり過ぎないようにしているそうです。
また、一部の上締タイプのリガチャーでは、リードの押さえ付けが、カカトのほうに寄ってしまいリードがバタバタ振動し過ぎて、あっという間にリードのコシがなくなってしまいます。逆に先端のほうに押さえる圧力を持ってこようとすると外れてしまいます。
その点クラシックリガチャーは、計算されたリード・コンタクトプレートの形状と、リードに対する取り付けがフレキシブルに稼働できるので、手前に付ければコシのあるしっかりした音で鳴るし、ネック寄りの奥側に付ければ、より多くリードが振動する音色で鳴らすことができます。
また、リードをプレートで持ち上げるタイプなのに加え、金属のバンド部分も、ただ巻いただけでなく、バネのように戻ることのない安定を重視した形状なので、リードを外して再度付け直した時、リードの取り付けが悪く吹き心地が毎回違うといったことがありません。締め具合や締める位置で吹奏感や鳴りが悪くならないのは、すごく大事なポイントで、これら作りの一つひとつにクラフトマンシップを感じます。

各種仕上げラインナップの特徴

クラシックリガチャー各種仕上げラインナップを試奏いただいて、音色や吹奏感などそれぞれの特徴を訊かせてください。まず、ソプラノ用とアルト用の各種ラインナップを吹いていただきましたが、ソプラノ用とアルト用で傾向に違いはありますか?
宮崎
ソプラノとアルトでは音色、吹奏感など傾向は同じです。 まずは、普段使っているGP(ゴールドプレート)についてですが、ゴールドプレートは、オールラウンダーです。吹き心地は決して重くはないんですが、安定感があります。他の楽器と音のブレンドもしやすいので、クラシック、ジャズはもちろん、吹奏楽にもとても良いと思います。
BR(ブラス)についてお願いいたします
宮崎
ブラスはメロートーンですね。ブラス製で、しかもノーラッカーなので、なんとなく普通っぽい印象を持ちますが、ゴールドプレートのほうがむしろ標準的です。
「メロートーン」を表現するのは難しいけど、ベニー・カーターとか、ビリー・ヴォーンのようなイメージの音色です。マット感のあるシルキートーンと例えてもいいかと思います。懐かしい感じのアメリカンサウンド的な印象を持ちました。
「しっかり支えてくれる感」もすべての仕上げ(モデル)の中で一番です。ジャズの方はもちろん、吹奏楽の方にもいいと思います。
CO(コパー)はどうでしょう?
宮崎
コパーは華やかで、音に輝きがあります。同時に「バサー」というエアノイズというか雑味が入ってきます。雑味というと悪い印象を持つかもしれませんが、空気の音をよく含んだアコースティックで、柔らかな広がりのある音色です。クラシックでソリスティックに吹く人はこれ好きだと思います。
ブラス製に次いで「しっかり支えてくれる感」もあり、音離れがすごくいいですね。
アンサンブルでは、他の音色に溶け込むのが良いとされがちですが、サックスアンサンブルでは、他の音に溶け込み過ぎてしまうのが必ずしも良いとは言えません。このコパーは、ちゃんと音が立ってくるので、オーケストラでソロを吹くのにとてもいいですね。クラシックのアンサンブルにもオススメです。フランスのサクソフォンの作品など吹くのもいいと思います。
NS(ニッケルシルバー)はどうでしょう?
宮崎
「音が立つ」という点では、一番は断然ニッケルシルバーです。これは、ソリスティックに使いたいですね。今日試奏した5種類の中でも、際立ってシャープでエッジのあるトーンです。甘い音色ではなく、辛口の日本酒の「シャキーン」という音です(笑)。
このニッケルシルバーは、サックスのリガチャーで他に似たものはないと思います。ラバーのマウスピースを使ってもメタルマウスピースを吹いているような音に直進性を持っています。「他の楽器とブレンドする」といったところとは、もともと用途が違うサウンドと言えるでしょう。すごくソリスティックな音色なので、例えばサクソフォンカルテットのメンバー全員がこのリガチャーで揃えたら、バッチリ決まりそうです。
サクソフォンカルテットでは、どうしても混ざり合い統合したような、ぼんやりとした(笑)サウンドが好まれますが、そもそもダニエル・デファイエ・サクソフォン四重奏団は、各人がバチバチ音を鳴らして、その上でサウンドを調和させ構築していたように思います。
そう考えると、このニッケルシルバーは、ソロはもちろん、サクソフォンアンサンブルに使うとすごく面白いのではないでしょうか。ポップスやホーンセクションにも合いそうです。ジャズの人はどうか?と考えると、倍音の幅広さなどから、やはりゴールドプレートかブラスが好まれると思います。意外かもしれませんが、ゴールドプレートはダークな音色特性を持っています。ダークを説明するのは難しく、「ダーク=暗い音」とイメージしがちですが、濃密という意味で捉えていいと思います。音量もとても出ます。
SP(シルバープレート)はどうですか?
宮崎
シルバープレートも幅広い倍音を持つダークな音色のタイプですが、ゴールドプレートに比べると高い倍音よりも低い倍音が多く、しっとりと安定した音色、響きです。ハイ・ブロウで鳴らした時には音色のキャラクターが変わるかもしれませんが、クラシカルな奏法で臨めばブラス製のようなメローなトーンを持ちつつ、吹奏感もスムーズでとても鳴らしやすいので、これも吹奏楽で使うと良い味を発揮しそうです。
それぞれの仕上げ、タイプが個性を持っていますね
宮崎
そうですね。ブラスはメロートーンで一番鳴らしやすい。コパーは鳴らしやすさの中にも広がりのある華やかなサウンドで、音離れが良い。
ニッケルシルバーは、音が立ち、フォーカスされた音で、音色の誤差がない、言い換えればトレランスが狭い。吹奏楽やアンサンブルでは、このトレランスが広いことをブレンドと言うと思うんです。隣にいるアルト・クラリネットやユーフォニアムと音色が溶け合って同じサウンドになる。ニッケルシルバーは、これとは逆で、オーボエやシロフォンなどオーケストラの中でも飛び抜けてくるような楽器のイメージですね。吹奏楽でも目立ちたい人にはすごくいいでしょう。
ゴールドプレートはオールラウンダーです。シルバープレートは、ゴールドプレートに似ているけど、ちょっとしっとりした感じになる。固有振動数の違いにより、ゴールドは華やかで、シルバーはもっとしっとりした感じになります。どちらも他の楽器やサックス同士で音がブレンドすると言う意味では良いでしょう。最もスタンダードなタイプはゴールドプレート、次いでシルバープレートだと感じました。
 
 
仕上げ、タイプ別に吹奏感、吹き心地はどうですか?
宮崎
音色同様に違いはあります。抵抗感という表現は難しいところで、抵抗感があるほうが鳴らしやすい・鳴らしにくいなど、人それぞれで吹きやすい・吹きにくいが変わってきますが、ブラスは吹き心地が程よく、しかし抵抗感は全ラインナップで一番あります。とはいえヘヴィーなタイプのリガチャーに比べると程よい抵抗感です。
ゴールドプレートシルバープレートもしっかりした抵抗感で、息はブラスより要りますが、この2つのモデルが吹き心地も良く、中庸なモデルと言えるので、初心者の方やさまざまなシチュエーションやジャンルで演奏される方にオススメです。
コパー、ニッケルシルバーに関しては、音離れが良い分、奥が深く、中・上級者向けか、初心者でも息をしっかり入れられる方にオススメです。
自分の吹き方、息のコントロールがしっかり決まってきたら、この5種類の中で、好きな吹奏感、音色のタイプを選ぶと良いでしょう。
アーティキュレーションの反応はどうでしょうか
宮崎
音色とニュアンスは不可分というか相互的なものなので、ニッケルシルバーがシャープで超スピード。アグレッシブなタンギングに対して呼応して超アグレッシブに反応してくれます。
反応が一番柔らかいのがブラスですね。ゴールドプレートシルバープレートはまさに中庸で、いい具合、程よい反応でアーティキュレーションを表現できます。
見た目も個性的でおしゃれですね
宮崎
音色や吹奏感といった性能面はもちろんですが、何よりどの仕上げ、タイプもマウスピースに付けたときのルックスがいいんです。こんなイケメンのリガチャーはそうないですよね(笑)。
このエレガントさは、タキシードを着て臨む舞台でも映えそうです。やはり、楽器もリガチャーもかっこ良いものにつきます。このリガチャーなら勝てると思います(笑)。
ありがとうございました。
 

[宮崎真一氏試奏:Wood Stone CLASSIC LIGATURE Alto & Soprano用 GP(ゴールドプレート)、NP(ニッケルシルバー)]

 
 

「CLASSIC LIGATURE」の各種ラインナップ、詳細はこちらより
https://www.ishimori-online.jp/product-list/322

株式会社 石森管楽器
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