Report 2019年3月9日(土)横浜港大さん橋ホール

みんなで楽しむ大合奏 ブラス・ジャンボリー2019

巨大合奏の問題点を次々とクリアし「ブラス・ジャンボリー」が今年も盛大に開催

ある日ある時、指定された広場にいけば、そこに楽器を持った見ず知らずの人たちがいて、さらにそこにふらりと「指導者」が現れて、みんなで楽しく大合奏。そんな風習が始まったのは1970年代後半のこと。そしてそれは昭和平成の時代を超えて「ブラス・ジャンボリー」として見事に結実した。
(文:埜田九三朗/写真提供:株式会社ヤマハミュージックジャパン)

ブラスジャンボリー2019

[演奏曲目]ブラスジャンボリーのためのファンファーレII(水口透)、アルヴァマー序曲(J.C.バーンズ)、瞳~メインテーマ(山下康介)、星条旗よ永遠なれ(J.P.スーザ)、宇宙戦艦ヤマト(宮川泰)、花は咲く(菅野よう子)、「ルパン三世」のテーマ(大野雄二)、宝島(和泉宏隆)

 

ブラスジャンボリー2019

「ブラス・ジャンボリー」には、これまでの同種の試みの中で生まれたさまざまな問題について、ヤマハならではのアイデアが結集されているように思われる。まず、場所だ。もちろん事前に正式に借り受けた場所で行なわれるから、これまで問題とされてきた「騒音」「通行障害」「道路交通法違反」などとは無縁。楽譜も、インターネットを使った楽譜販売サービスを使用して、違法コピーの問題もクリア。現場には、ただ楽器と、参加費用(これも事前振り込みが前提だが、当日ふらりと訪れて参加費を支払えば、当日参加も可能なのだ)を持参すればOK。吹けても吹けなくてもOKだし、観客として聴いているだけなら無料で家族の「奮闘」ぶりを楽しめるというのも人気……要するに、見るほうも聞くほうも、気楽に参加できるイベントなのだ。オトナの知恵が結集していればこその「気楽さ」なのだが、その「オトナの知恵」の成果だろう、各地の「ブラス・ジャンボリー」は大盛況だ。

ブラスジャンボリー2019

特に、毎年春先に横浜「大さん橋ホール」を舞台に開催されるそれは、一連の「ブラス・ジャンボリー」のなかでも最大級の動員力を誇る春の吹奏楽イベントとして定着している。今年は3月9日に記念すべき10回目として開催され、福岡県や北海道などからの遠征組を含む650余名が集結した。

この日の指揮者は、前回同様に曽根大介さん。横浜でのこのイベントでは常連で、超巨大アンサンブル特有の「時間差(指揮者から最後列まではかなりの距離があるため)も知り尽くしていて、最初から最後まで安定したアンサンブルが楽しめるよう、わかりやすい指揮に徹するプロフェッショナルぶりが素晴らしい。また、本格的な練習を始める前に、かなりマニアックな音楽史的視点まで踏み込んだ「吹奏“学”講座」も展開され、旺盛な知識欲を持つ大人の参加者も大満足の様子だった。

ブラスジャンボリー2019

今回は「ブラス・ジャンボリー」初登場となるふたりのゲストが大喝采を浴びていた。ひとりは、トロンボーン奏者の中川英二郎さん。NHK朝の連続テレビ小説「瞳」(2008年)で一躍有名になったそのテーマをはじめ、『宝島』や『ルパン三世』では愛器YSL-823Gを手に素晴らしい音色で満場を魅了。さらに、バイオリニストとしては「ブラス・ジャンボリー」史上初登場となる岡部磨知さんが、ヤマハのエレクトリックバイオリンを手に熱演。擦弦楽器特有のしなやかな表現力で、管楽器ばかりの世界に新たな風を巻き起こした。

ブラスジャンボリー2019
地元横浜のユニークなサックス集団「横浜サクソフォンアンサンブル」のみなさん

演奏曲目は別掲の通りだが、なかでも『ルパン三世』『宝島』などの吹奏楽定番曲では、それぞれにオリジナル(前者はアニメ主題歌としてのアレンジ、後者はT-スクェアが本家本元)があることを知悉したうえで、吹奏楽独自のアレンジを楽しもうとする「オトナ」な参加者の姿勢に、聞き手として素直に感動できたことが音楽的収穫だった。

 

ブラスジャンボリー公式サイト
https://jp.yamaha.com/sp/brass-jamboree/

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