サックス記事 キャンディ・ダルファー&藤野美由紀 Backstage Talk!
ブルーノートライブステージ2022.11.16

キャンディ・ダルファー&藤野美由紀 Backstage Talk!

ファンキー・サックス奏者、藤野美由紀氏が2022年11月16日(金)にブルーノート東京で行われたキャンディ・ダルファーの3年ぶりの来日ライブでのバックステージ・トークを届けてくれた。
藤野氏といえば、言わずと知れた「キャンディ・ダルファーMASTER BOOK」(弊社刊)の著者であり、キャンディとお互いにリスペクトし合う仲だ。そんな藤野氏とキャンディとのトークとキャンディのデビュー曲でもあり、人気曲のひとつでもある『LILY WAS HERE』の演奏のコツを紹介してもらった。
Report:藤野美由紀 / 通訳:Tom Yang

3年ぶりにキャンディに会える!
それは誰しもがパンデミックの終わりを感じた瞬間だっただろう。まるでこの3年間我慢をしていた私たちへのご褒美かのように……。
ライブが終わり、1stセットと2ndセットの間に私、トム・ヤン(サックス奏者)、そして友人と共に楽屋へと向かった。
これから食事を始めるバンドのメンバーもいるなか、楽屋の奥からキャンディが姿を現した。

キャンディ
・ダルファー

以下キャンディ
「久しぶりね! 皆、元気だった?」
藤野美由紀
以下藤野
「ずっと貴女を待っていたのよ」
キャンディ
「今日のshowはどうだった?」
藤野
「もちろん、最高に決まってる〜! 素敵なshowをありがとう。」

このような会話をしていると、キャンディは私の後ろに目をやり「Hey!トム!」と声をかけた。

この日同行していたのは、台湾から来日していたサックス奏者のTom Yang(トム・ヤン)。
彼は以前私がキャンディにお願いをして、ビデオメッセージを送ってもらったことがある人物だったが、顔は写真でしか知らないはず……。そんなキャンディがトムに挨拶をしてくれて、トムのテンションも上がりっぱなしだった。

そして驚くべきキャンディの第一声は、「台湾、大丈夫なの?心配だったのよ」と。台湾が現在おかれている情勢を心配する一言だった。

トム・ヤン
以下トム
「ありがとう。台湾は大丈夫だよ。君が台湾を心配してくれていたということを、台湾の皆に伝えたらきっと泣いて喜ぶよ!」

私たちがそんな会話をしていると、奥から彼女の父親であるハンス・ダルファーも会話に参加してくれた。
ハンスのテナーサックスは、数年前とまったく変わっておらず、力強く、そしてメッセージ性の強い音色だった。実はトムはハンスの大ファンで、そこから色々な話を引き出してくれたので、皆さんにもここで少しご紹介しよう。

ハンス・
ダルファー

以下ハンス
「Hey、ヤング・ボーイ」(と、ビッグ・ボーイに第一声をかけられたトム。)
ハンス
「俺は82歳だけど、こんなに開きの広いマウスピースを使っているんだぜ! 体力はある!」
トム
「凄い!やっぱりハンスは僕のアイドルです! 毎日どんな練習をしているんですか?」
ハンス
「ロングトーンだ!毎日だよ!82歳でも毎日ロングトーンをしているのさ。」
「君はどこのメーカーのサックスを使っているんだ?」
トム
「Yes, sir! 台湾のメーカーです!」

と、笑いながら、そして元軍人であるトムは、ハンスに敬意を示しながら答えていた。

その横からキャンディがトムのサックスを吹いている写真を見て興味を示したのが、トムの使っているワイヤレスマイクだ。

キャンディ
「このフサフサは何?」
トム
「これは風の音を避けるためのマイクのカバーだよ。使っているマイク自体はあまり良い音ではないけれど、このカバーがかなり良い味を出してくれる。」

そしてしばらくの間、サックス談義に花を咲かせ、私たちは楽屋を後にした。

楽屋での一枚(左からトム・ヤン、ハンス・ダルファー キャンディ・ダルファー、藤野美由紀)

 

キャンディの熱いライブがスタート

ライブは1曲目からノリノリの曲で、「そうそう、これこれ!待ってたよー!」そう叫びたくなるくらいの曲からスタート。
セットリストは今年(2022年)にリリースされた新しいアルバムの中からの楽曲を中心に構成され熱い演奏が会場に響いていく。そんな中やはり、昔の曲の中から選ばれていたのが『LILY WAS HERE』だ。この曲は皆さんもご存知のキャンディのデビュー曲で、オランダの映画音楽。アドリブ中ではなく、テーマの中で繰り広げられるギターとサックスの掛け合いはまるで会話のようだ。

せっかくなので読者の皆さんにテーマの部分も吹き方にコツがある『LILY WAS HERE』のワンポイントアドバイスをお届けしよう。

『LILY WAS HERE』
演奏のコツ
ワンポイントアドバイス

まずギターがテーマを先行しますが、キャンディはサックスの一発目の音を、ギターの出だしの音(ベンド加減も)に寄せています。つまり、ギターの音をしっかりと聴いているということです。
ギターが弾くテーマを、サックスが追いかけるというイメージで、「こうだよね?」「そうよ、何ナニでさ〜」のような、フレーズの語尾にオプション的な音をつけて、まるで会話仕立てのようになっています。
要はギターの弾くテーマを崩して吹いているということです。この吹き方を実践するためには、C#ブルーノートスケール(Eb楽器)をしっかり練習しておくと良いでしょう。Bb楽器は、F#ブルーノートスケールで練習してくださいね。

さて、話題をライブに戻しましょう。

後半もラストに近づいた頃、さらにステージは盛り上がり、ピークかな?と思ったところで、SE的なイントロが流れ、テナーサックスの音が聴こえてくる。
皆が後ろを振り返ると、そこにはハンス・ダルファーが立ち尽くし、テナーを鳴らしている。実に男気のある音だ。ステージ側はハンスを受け入れる体制をつくり、ハンスがステージに歩み寄りながら、娘キャンディのところまで吹きながら登場。
その後、ハンスの大ヒットアルバム「Big Boy」の大ヒット曲『Mickey Mouse』を披露したりと、会場は益々盛り上がる。お父さんを立てようとする娘キャンディは、やはり少し日本人と似ているところがあるかもしれない。その勢いで『Pick Up The Pieces』が始まったもんだから、これはもうアンコールは鳴り止まないのは当然でしょう。
聴衆の熱気も相まって、そのアンコールは、2023年へと続くのでした。

 

キャンディのように演奏したい!『LILY WAS HERE』をもっとガッツリ練習したい方は、キャンディの曲全6曲の楽譜が掲載されている「Candy Dulfer Master Book」がおススメ。各曲のカラオケはもちろんのこと、フレーズや初級アドリブ練習、基礎解説まで盛りだくさん!名曲をマスターしたいなら本当におススメな一冊ですよ!
私のYouTube公式チャンネルでも練習方法や演奏についてレクチャしています。ライブ配信も盛り上がっているので、皆さん是非遊びにきてくださいね!
藤野美由紀YouTubeチャンネル:FUNKY SAX 藤野美由紀

Candy Dulfer MASTER BOOK

キャンディのオリジナルフレーズを使った練習方法や完全コピー+ドリル+CDによる新しいスタイルを提案。





Candy Dulfer MASTER BOOK
キャンディ・ダルファー 教則CD付楽譜集

定価3,520円(税込/カラオケ、練習トラックCD付)

■楽譜、カラオケ掲載曲(全6曲)
SAX A GO-GO
PICK UP THE PIECES
LILY WAS HERE
BOB'S JAZZ
WAKE ME WHEN IT'S OVER
I CAN'T MAKE YOU LOVE ME

■フレージングドリル
キャンディのワンフレーズを使って練習をバリエーション化
■アドリブトレーニング
■教則レッスン(練習トラック対応)
ロングトーン/クロマティック/指/スケール/リズム/奏法/アドリブ
■バンドスコア譜(全6曲)

登場するアーティスト
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藤野美由紀
Miyuki Fujino

FUNK,SOULを中心とする、日本のサックス奏者。ソロ活動を展開し、国内外多数の有名アーティストとの共演。リーダーアルバムを4枚リリース。アルソ出版からCandy Dulfer Master Bookや、FUNK&SOULなどの著書もリリース。 2018年 5月には、ギタリスト佐橋佳幸によるプロデュースで、アルバムRight Timeを制作し、アメリカのファンキーサックス奏者 Eddie.M(プリンス、シーラE、13cat'sのサックス奏者)をスペシャルゲストに迎える。2019年には台湾のP.Mauriatと米国Jody Jazzと契約。2022年New Album、SAXIE FUNKをリリース。日本から世界に向けてFUNKな音楽に乗せてメッセージを発信し続けている。
YouTubeチャンネル:FUNKY SAX 藤野美由紀

登場するアーティスト
画像

トム・ヤン
Tom Yang

台湾 台北 生まれ。1985年にサックスを始める。1991年には台北ユースシンフォニーにテナーサックスで入団。1994年からジャズに転向し、Mr.Met Franciscoなどに師事。1998年から台湾の企業パーティや5つ星ホテルなどでShowパフォーマンスを続ける傍ら、有名タレントのコンサートサポートなどもこなし、台湾のみならず中国でも活躍をしている。

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