サックス記事
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クリス・ポッター ビバップは私にとってメインランゲージ

THE SAX vol.65 Cover Story

ジャズ・サックス界で今 ”ホット” な、最も影響力のあるサックスプレイヤーの一人だと言われているクリス・ポッター。自己のバンドを率いて活動しているほか、ジャズギタリストのパット・メセニーが率いる最新プロジェクト “ユニティ・バンド” のメンバーとしても活躍中だ。そんな注目を集めている彼に、大学の後輩でもありプライベートで交流のある Tei Yuki 氏がニューヨークでインタビューを敢行した。

Special Thanks:
David Gould at Vandoren Studio NYC(www.dgclarinet.com)(www.vandoren.com
Michael Skinner and Andy Balanco at Dansr(www.dansr.com
Everybody at 55 Bar(www.55bar.com
Text & Photos: Yuki Tei(www.yukiteimusic.com)(www.yukiteiphotography.com) *リンク切れ?


12〜13歳の時から演奏活動を始めた

今は亡きマイケル・ブレッカー以降、最も影響力のあるサックスプレイヤーの一人といわれているクリス・ポッターは、筆者の大学の先輩であり、友人でもあります。そして尊敬できる素晴らしいミュージシャンです。今回はパット・メセニー率いるユニティ・バンドのヨーロッパツアー直前にスペシャルインタビューを行ないました。

Yuki
お忙しい中お時間を作っていただいてありがとうございます。今日はいろいろお話を聞かせていただきたいと思います。さっそくですが、生い立ちや音楽との出会いなどをお話しください。
Chris
1971年1月1日にシカゴで生まれて、すぐにサウスキャロライナ州のコロンビアに移りました。家族構成は両親と妹が一人います。両親は音楽家ではなかったのですが、家ではクラシック音楽やビートルズ、ジョニ・ミッチェル、マイルス・デイヴィスなどの音楽が流れていました。父親は公共機関の教育関係者、母親はサウスキャロライナ大学の教授でした。妹は現在テネシー州メンフィスにある大学でアメリカの歴史の教授をしています。
私が最初に楽器を始めたのは5歳か6歳のときでピアノと、玩具のギターでした。
Yuki
教育者の一家ですね。70年代後半あたりのジョニ・ミッチェルのバンドにはパット・メセニー、ジャコ・パストリアス、そしてマイケル・ブレッカーなどのメンバーがいましたからね。そのパットと今ではバンドで一緒に演奏していますよね!
ところで、サックスを始めたきっかけは?
Chris
私が10歳のとき、よく聞いていたレコードがデーブ・ブルーベックカルテットの「Time Out」。アルバムのカバーのカッコ良さも魅力的だったし、ポール・デスモンドが大好きで、彼の美しいサックスの音に惹かれました。そのポール・デスモンドの影響で、両親にサックスを習いたいとお願いして、地元のサックスの先生に習い始めました。先生がソニー・ロリンズやキャノンボール・アダレイなどのテープを貸してくれたからそれを聴いていたね。
もちろんチャーリー・パーカーや、デューク・エリントン楽団のジョニー・ホッジス、ポール・ゴンザレス、ハーリー・カーニーなどのサックスセクションも大好きで、どんどんサックスやジャズにのめり込んでいきました。とても光栄なことにサウスキャロライナ大学のジャズ科の教師の人たちや地元のミュージシャンからのサポートも受けていました。私が12〜13歳の時から地元で週2回、その人たちに混じって演奏を始めました。一つのバンドは火曜日の夜でジャズのスタンダードが中心のビバップ、もう一つは水曜日の夜でそっちのほうはフリーっぽいジャズをね。どちらも好きだったよ。
Yuki
すごいですね。そういえば、この間 YouTube でクリスが13歳のときの映像を見ましたが、もうその頃からすごかったです。ジミー・ヒース氏が初めてクリスに会ったのは15歳のときだったらしくて、いまだに覚えているそうです。クリスがレッド・ロドニーのバンドでニューヨークに来た頃はアルトを良く吹いておられましたが、いまはテナーやソプラノ、そしてベースクラリネットなど、すべての楽器において超ハイレベルの演奏をされます。
Chris
ごく普通の中・高校生だったと思うよ(笑)。子どもの頃よくチャーリー・パーカーのレコードを聞いたり、一緒に吹いたりしていたからアルトにも思い入れがあるかな。ニューヨークに移ってきて徐々にテナーサックスも吹くようになり、今はほとんどテナーがメインだね。アルトはデイヴ・ホランド・バンドでもあまり吹いていないな。ジョシュア・レッドマンとのサクソフォンカルテット(ジョシュア・レッドマン、マーク・ターナー、そしてクリス・チークと超豪華メンバー)以降は触っていないね(笑)。
Yuki
クリスは高校卒業後、ニューヨークに移ってきてからどの先生に習ったりしました?
Chris
ニュースクール時代は Yuki も良く知っているジミー・ヒースとかピアノのケニー・ワーナー、そしてびっくりするかもしれないけど数回サックスのジム・ペッパーからレッスンを受けました。今思うともっとジムにはレッスンをしてもらいたかったよ。当時は素晴らしい先生や仲間たちに囲まれ、とても刺激的な毎日を過ごしていたと思う。マンハッタン音楽院に移ってからはディック・オーツや数回だけどボブ・ミンツァーからもレッスンを受けた。ディックはプレイヤーとしてはもちろん、人間性も素晴らしい。幼いころからの夢でニューヨークに移り住みたかったし、学校はいろいろな先生や生徒と知り合える良い場所だと思うけど。でもやはり自分の “アイドル” の人たちを生で聞けるのだから、これほど良いレッスンはないよ。
Yuki
クリスは数多くのジャズマスターとの演奏をしてきましたが、今までで印象深い思い出などはありますか?
Chris
それは難しい質問だね。とてもラッキーなことに今まで素晴らしいアーティストたちと共演できたし、これからもっとできたらいいなと思っているよ。たくさんエピソードがあるけどしいて言えば、私がまだ若い頃ポール・モーシャン (50年後半から60年前半にかけてビル・エヴァンスのトリオで活動し、その後キース・ジャレットのカルテットでも活躍) のバンドでの話だ。ちょうどヨーロッパツアーに出てたときのエピソード。ツアーの最初のコンサートで私はどちらかというとリズミック的な演奏をしようと思ってね。私なりにいろいろ試みた演奏をするのだけど、ポールはただタイムをキープするだけだったんだ、2日目も3日目も同じように。そして3日目のコンサートが終わった後 “なんで私の演奏に反応してくれないのかな? もうどうでもいいや!” と思って4日目のコンサートを迎えたんだ。その夜、自分の中で何かが吹っ切れた瞬間があって、後ろからポールのドラムが変わっていくのを感じたんだ。この経験から、周りから自分を認めてもらおうとするのでなく、自分が “これだ” と思うことを信じて、信念を貫けば、それにみんながついてきてくれるとわかった。自分のバンドでのリーダーとしての振る舞いなどにも役立っているかな。やはり何事も経験、そして勉強だね。
Yuki
クリスのことは私が高校を卒業してニューヨークに移る前から “噂” で聞いていたのですが、初めて生で聴いたのは90年代半ばのオーギーズ (マンハッタンのアッパーウエストにある伝説的ジャズクラブ。今は名前が変わりスモークになっています。毎週火曜日はエリック・アレキサンダーなどがレギュラーで出演しています) でした。今でも覚えているのですが、確かジョエル・フラムと一緒に演奏していて、ニューヨークに来たばかりの私は、すごいところに来てしまったなと感じたのを今でも覚えています。当時、私が頻繁に通っていたオーギーズではクリスをはじめ、ブラッド・メルドー、ジョエル・フラム、ライアン・カイザー、ピーター・バーンスタインなど当時若手の素晴らしいミュージシャンが日替わりで出演していました。
Chris
90年代のニューヨークは今と比べるともっと演奏する場所があったし、経済も上向きで活気に溢れていたからね。競争というより、お互いにいろいろ勉強し合い、がんばっていこうという感じかな。そうやって、多くの素晴らしいミュージシャンと交流することが大切だと思うんだ。
クリス・ポッター、ベースのスコット・コリー、そしてドラムのアントニオ・サンチェスの超豪華メンバークリス・ポッター、ベースのスコット・コリー、そしてドラムのアントニオ・サンチェスの超豪華メンバー

このコンサートを見ようと列に並んで待つ観客。最後列はなんとストリートの端まで及んでいるこのコンサートを見ようと列に並んで待つ観客。最後列はなんとストリートの端まで及んでいる
55Bar。ニューヨーク、マンハッタンのグリニチ・ヴィレッジにある バーおよびジャズクラブ。バーとしての歴史は古いが、今でもニューヨークの第一線で活躍するミュージシャンが出演するジャズクラブでもある。あのギターのマイク・スターンも水曜日にレギュラーとして出演している。カバーチャージも$5~15と日本では考えられない安さで、ニューヨークのプレイヤーを堪能できるスポット。スモールズとはストリートをはさんで向かい側にあり、いずれも筆者のオススメスポット55Bar。ニューヨーク、マンハッタンのグリニチ・ヴィレッジにある バーおよびジャズクラブ。バーとしての歴史は古いが、今でもニューヨークの第一線で活躍するミュージシャンが出演するジャズクラブでもある。あのギターのマイク・スターンも水曜日にレギュラーとして出演している。カバーチャージも$5~15と日本では考えられない安さで、ニューヨークのプレイヤーを堪能できるスポット。スモールズとはストリートをはさんで向かい側にあり、いずれも筆者のオススメスポット

次ページにインタビュー続く
・ビバップは私にとってメインランゲージ

登場するアーティスト

1971年1月1日、イリノイ州シカゴ生まれ。3歳の時に家族とともにサウスカロライナ州コロンビアに移る。そこでピアノとギターを演奏し始め、10歳になるとアルト・サックスに本格的に取り組み始め、13歳の時には初めてのギグを経験する。1989年、18歳の時にニュースクールへの進学のためにニューヨークへ移るとともに、ニューヨークのジャズ・シーンで活躍し始める。「Down Beat」誌は「地球上、最も研究され(そして模倣された)サキソフォン奏者」と形容し、「Jazz Times」誌は「国際的な有名人」と称す。自身のバンドのみならず、サイドメンとしても数々のセッションに参加しており、現代のジャズ・シーンの要人のひとりとして活躍している。

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