サックス記事 ECM第2弾を完成させた現代のテナー巨人 ジョー・ロヴァーノ
THE SAX vol.104 Interview

ECM第2弾を完成させた現代のテナー巨人 ジョー・ロヴァーノ

ECMレーベルより移籍第2弾となるリーダーアルバム「Garden of Expression」をリリースしたジョー・ロヴァーノ。COVID-19の世界的パンデミックが未だ終息の兆しを見せないなか、このアルバム、彼のサックス奏者としての人生、そして今後の活動について語ってもらった。去る1月にNY~東京間をオンライン会議ツールZoomで繋いだ、同じテナー奏者である三木俊雄氏によるインタビューをお届けしよう。
(インタビュー・文:三木俊雄(テナーサックス奏者)/取材協力:ユニバーサル ミュージック合同会社)


テナー奏者の父から薫陶を受けて同世代のジャズマンと切磋琢磨し成長

三木俊雄
初めまして。まずは、あなたの音楽的背景を、特に同じくテナー奏者であったお父様トニー・ロヴァーノさんの影響なども含めて教えていただけますか?
ジョー・ロヴァーノ
OK、その通り、父は1925年生まれのテナー奏者でコルトレーンと同世代だ。家には素晴らしいジャズのレコードコレクションがあり、いつも音楽に囲まれていた。サックスを始めたのは5、6歳の頃で最初はアルト、そして11か12歳の頃にテナーに替わった。やはり父の影響があったと思う。テナーの生音をずっと目の前で聞いていたからね。そして父のレッスンを受け、だんだん曲を耳で覚えていった。15、6歳の頃になると父はジャムセッションやバンドのリハーサルに連れていってくれるようになった。あの世代のミュージシャンから多くを学ぶことのできたのは本当に素晴らしい経験だった。と同時に60年代をティーンエイジャーとして過ごしたわけで、ジェームス・ブラウンやモータウンの音楽にも夢中になったものだよ。その後バークリーに行きジョン・スコフィールド(Guit)、ビル・フリゼール(Guit)やジョーイ・バロン(Ds)などともそこで知り合った。
三木
マイケル・ブレッカーやボブ・バーグといった同世代のテナープレイヤーの中で、あなたはひときわ独特なトーンやスタイルをお持ちだと思うのですが。
ロヴァーノ
そうだな、マイケル、ボブ、デイヴ・リーブマンやスティーヴ・グロスマンは同世代のテナープレーヤーで、私が1976年にニューヨークに出てきて以来、共に切磋琢磨してきた仲間たちだ。その中では私はジーン・アモンズやタッド・ダメロンとプレイしていた父の影響もあり、よりディープなルーツを持っていたと言えるかもしれない。それがサウンドの違い、スタイルの違いとして出ているのだと思う。そして彼らとのもう一つの違いは「セクションプレイヤー」としての経験だ。NYに出てきて、ウディー・ハーマンやメル・ルイスのビッグバンドのサックスセクションでプレイしてきたのは素晴らしい経験だった。

 

次ページにインタビュー続く
・ハーモニックなリズムのない状態で作り出す自由なトリオ音楽
・キースやオーネットに触発された手法で書き下ろされたオリジナル曲

 

CD information

「Garden of Expression」
Joe Lovano


【351-8721】オープンプライス
ECM Records/ユニバーサル ミュージック

[収録曲]
Chapel Song/Night Creatures/West of the Moon/Garden of Expression/Treasured Moments/Sacred Chant/Dream on That/Zen Like

[演奏]ジョー・ロヴァーノ(Ts)、マリリン・クリスペル(Pf)、カルメン・カスタルディ(Ds)


PROFILE
1951年オハイオ州クリーヴランド生まれ。父であるテナー奏者トニー・ロヴァーノの影響で、少年時代からテナーサックスを手にし、高校卒業後はバークリー音楽大学に進学。卒業後、エルヴィン・ジョーンズに認められ、76年にNYに進出。その後、ウディ・ハーマン・オーケストラ、メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ、ポール・モチアン・グループなどで演奏し高い評価を得る。85年に初リーダー作「トーンズ・シェイプス・アンド・カラーズ」(ソウル・ノート)をレコーディング。89年にはジョン・スコフィールドのカルテットに参加し、これによりブルーノートと契約。以後、数々のリーダー作を発表し、2019年にはECMに移籍。現代テナーサックスの王者として君臨し続けている。

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