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ホルンがうまくなるためのヒント

Wind-i mini 9号 特集

ホルンは管が長くて、重くて、難しい楽器ですよね……特にまだ身体が小さいうちは練習が大変です。プロの人たちはどのように練習し、上達してきたのでしょうか?
プロ吹奏楽団、TADウインドシンフォニーのホルン奏者の皆さまがアンケートに答えてくれました。

TADウインドシンフォニー ホルン奏者
伊勢久視/片岡千恵美/木原英土/齋藤善彦/下田太郎/竹内由佳/花房可奈

Q1.楽器を始めたばかりの頃、一番苦労したのはどんなことでしたか? また、それをどのように克服しましたか?

Q1.楽器を始めたばかりの頃、一番苦労したのはどんなことでしたか? また、それをどのように克服しましたか?

伊勢
口がすぐ疲れてしまう事が嫌でした。
プロの奏者がどんなアンブシュアをしていて、またどんな音色なのかをテレビで確認し、真似をするようにしていました。ホルンの音色は息の使い方で変わるので、自分の好きな音色を目指してがんばった結果、持続力もついたと思います。
片岡
元々とても手が小さいということもありますが、当時使用していた楽器の「小指かけから親指レバーまでの距離」が遠く、特に夏場は汗ですべったので楽器を長時間持ち続けるのがとても大変でした。
克服といえるかどうかはわかりませんが、自分の楽器を買った際に、すぐに小指かけの位置をずらしてもらったり、レバーを改造したりなどの工夫をしました。
あとは、毎日練習していくうちに、ピアノを弾く人と同じように少しずつ手のひらが開くようになりました。今では右手より左手の方が断然大きく開くようになりましたね。現在ではさらに負担を軽くする為に、ハンドストラップを使用しています。これで相当ラクになります! 私のように構え続けるのに手の負担を感じる人には、本当におすすめです!
木原
楽器を始めた当時はダブルホルンのベルカットのハードケースを運ぶのが重くて大変でした。ホームセンターでキャスターを買ってゴロゴロと転がしていました。
齋藤
独学で練習したので間違ったアンブシュアになっていました。当時は顎が反らずに梅干しのように丸まっていました。ストローやつまようじを唇で挟みつつ、おすましするようにして顎を反る感覚をつかみました。
下田
譜面に書いてある音の高さがソルフェージュできませんでした。書いてある音を声で歌い、音の高さを覚えてから楽器を吹いてみると、高音域や低音域に対するコンプレックスも軽減されました。
竹内
楽器が重くて長く持っていられませんでした。私の中学校の一年生は、まず筋トレをするよう指導されていました。そのお陰か定かではありませんが、長く持っていられるようになりました。
花房
木管楽器をやっていたので基本的な音出しからとまどいました。基礎がとても重要だと教わったので、ロングトーンなどの基礎練習をたくさんやりました。また、ソルフェージュがとても大切だと感じました。
Q2.中高生が陥りがちな常識、非常識を教えてください!

Q2.中高生が陥りがちな常識、非常識を教えてください!

伊勢
マウスピース、楽器の扱いが雑です。楽器を置くとき、そして持ち上げるときに引きずったりぶつけたりしても平気な顔……。もっと大切に!
片岡
本番直前に管内を洗ったりすると吹奏感が大きく変わるので、直前はやめておきましょう! お手入れは日頃からやりましょうね!
木原
ダブルホルンのいわゆる上のC(実音)の指使い。B♭管の第一レバーでは低めになるからといってF管の開放で吹く人が多いですね。音程は良いのですが、管が長くなるので音を当てるのが大変です。隣の倍音に外れやすくなるので、B♭管の開放を使うことをおすすめしています。B♭b→Cの2度のリップスラーは少し難しいですが、コツをつかむとCから上、High Fまでの距離がグッと縮まります。
齋藤
右手の正しい入れ方ですね。手のひらをベルにペタッと貼り付けるのではなく、手の甲を向こう側につける感じでセットし、手のひら側へ息を通すイメージで吹きましょう。このポジションはもともとナチュラルホルンの奏法の名残です。このポジションを覚えると音程、音色の微調整(開けると音が明るくなり、閉じると低く暗めな音になります)ができるようになります。
下田
防音の音楽室などで練習していると大きな音を出さなければならないと思い込んでしまい、身体の様々な場所に無駄な力が入ってしまい、その結果音色だけでなく身体の調子も崩してしまうケースが非常に多いです。大切なことは「響かせる、音を身体から離す」イメージをキチンと持つこと。ハーモニーの豊かさを最優先にしましょう。
竹内
練習終了後にオイルを注す光景を何度か見たことがありますが、そのままケースにしまうと余分なオイルに埃などが付着し、不調の原因になってしまいます。そのまま楽器をしまう場合は楽器を傾け、ロータリーに行き渡らせてから傾きを戻し、余分なオイルを拭き取っておきましょう。
できれば練習前にオイルを注すと良いですね。練習しているうちにオイルが行き渡ります。余分なオイルは水と一緒に出しましょう。
花房
手の入れ方や姿勢は、その人の体格により様々だと思いますが、どうしてもベルのほうが重いのでそちらのほうに傾いてしまいがちです。まっすぐに構えるようにしましょう。
グリスを塗りすぎてロータリーが重くなっている、という楽器もよくみます。グリスは少量で大丈夫です! マウスパイプも頻繁に掃除をしましょう。
Q3.「ホルンあるある」を教えてください!

Q3.「ホルンあるある」を教えてください!

伊勢
「ホルンって、あの大きな楽器?」
「多分それチューバですね。カタツムリみたいな楽器です」
「あぁ~、グルグル巻いてある!」
「それです!」
片岡
コンクールの集合写真では、とりあえず楽器のベルを頭にかぶせてアピール!
木原
左手の小指が曲がる
右手をベルの中に入れて小節を数える
齋藤
電車の中でもどこでも、気が付くとアンブシュアを作っている
下田
普段が後打ちばかりなので、マーチでメロディが来ると必要以上に歌う
竹内
血液型がB型の人口が多い。
立派な顎を見ると「ホルンが上手そう……」と感じる 。
花房
後打ちが上手になる。
ラッカーがはげていたり、ノーラッカーの楽器は、練習が終わると手が緑色になる。
Q4.身体が小さく肺活量が少ない人がホルンを吹く場合、どうやったらホルンと上手くつきあえますか?

Q4.身体が小さく肺活量が少ない人がホルンを吹く場合、どうやったらホルンと上手くつきあえますか?

伊勢
以前、元シカゴ響のゲイル・ウィリアムスさんのマスタークラスを受講した時、「あの大音量の中で勝負するには?」との質問に対して、「私は女性なので男性の肺活量には敵わないのは当然。だから男性よりブレスの場所を沢山取っている」と答えていました。
ゲイルさんの音色は大変素晴らしいし、音楽の表現力も豊か。男性顔負けのホルン奏者です。
片岡
私自身が気をつけていることは、楽器を吹くという身体の運動に対して、必要以上の「力み」をとる、ということです。
身体のどこかが力んだ状態では、普通の呼吸でも上手くいきません。体格の差を埋める努力というよりは、自分の体格で最大限の能力を効率的に引き出す、ということを考えています。私の場合は筋力もなく、楽器を支え続けるだけでも余分な力が入りやすく、さらに演奏、本番の緊張、と加わると、余分な「力み」は必ず生まれていましたね。
ただし「リラックス」といっても、ソファーでくつろぐという感覚ではなく、すぐに運動が開始できる状態(自動車で言えば、信号待ちのアイドリング状態)をイメージしてください。
あとはフォルテになった時に、音の立ち上がりからすぐに張りとスピード感のある音色を出す、ということが重要です。存在を際立たせたい時には、まず音色を変化させる。それによって、少ない肺活量でもフォルテの表現は可能だと思っています。 最後に、ブレスのタイミング前後の音質などを考えるようにしています。本当は一息で吹きたい!と思うフレーズでも、どうしても一回は吸わなければもたない……という時に、どう処理をするか。音楽の流れを崩さずに、ブレスも流れの一部として聴こえるように、「前後の音の繋がりが自然であること」を目標にブレスを行なうようにしています。 失敗してしまうと、「あぁ、息が足りなくて吸っちゃったんだな~」と聴こえてしまいますが、上手くいけば、そういう風には伝わりません
小さい体格でも、工夫と努力で、楽しくホルンは吹けます♪ がんばりましょう!
木原
少しの息でも確実に使うことtができれば十分鳴らすことができます。肺活量の少ない方は息が持つかどうか……を気にして節約モードになりやすいのですが、ためしに吸った息ができるだけ早くなくなるように楽器に入れてみてください。音色や音量感が変化するほかにも、意外と長く息が持つ場合もある……など色々と発見があると思います。
齋藤
特に中学1年生だと身体がまだ小さく楽器を構えるのも一苦労で、ベルを右足ももに置かざるを得ない人も多いと思います。その際にせっかく出した音をおなかで塞いでしまっていませんか? 少し左側を前にして、右のわき腹に音を逃してあげるように構え、音の出口をちゃんと開けてあげましょう
下田
実はあまり肺活量は演奏のクオリティに大きな影響はありません。自分にとって楽な息を使い、「たくさん息を入れる」と思わずに音の出す目標地点音色のイメージをキチンと持つ事が大切ですね。
竹内
体なりの肺活量で大丈夫です。息を効率的に使うことが大事です
< 息を吐く → 吸う → 吐く(音を出す) >  の流れを大事にしてください。
花房
息を効率よく使う方法を常に意識していくことが大切だと思います。同時に、身体の使い方、姿勢などもあわせて考えます。自分に合った楽器マウスピースを選ぶことも重要になるのかもしれません。成長期は体格などが年々変わります。なので自分の身体の変化に、吹き方なども合わせて変化させていくことが必要になると思います。

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