カドソンの歴史と変遷

飛躍をみせるCadeson

ここまでやる"普通・当たり前”のレベルの高さ

サックス

最後まで精密な調整・確認が行なわれ完成したA-92。

日本製カドソンが今熱く支持されている理由は、楽器本来のレスポンスの高さもさることながら、中島楽器による手の込んだ作業に所以するといって間違いない。 もちろんこれほどの信頼を得るまでの背景には、様々な苦労があった。しかし中島楽器の徹底したこだわりは、過去も現在も一貫している。「特別なことをやっているわけではなく、本来楽器はこうでなければならないという当たり前のことをやっている」以前中島楽器社長の中島一明氏は私たちにこう語ってくれた。我々から見ると「ここまでやるのか」ということが、「プロに認められる楽器でなければ“普通” とは言えない」と考える中島氏にとっては当然のことなのだ。この“当たり前”のレベルの高さが、必然的に吹く人に感動を与える結果へと繋がっている。

 

 

 

 

 

大山氏は長年カドソンサックスを愛用しているが、中島楽器社長である中島一明氏とのこんなエピソードを語ってくれた。

サックス


大山 「印象的なエピソードがあって、中島さんが一生懸命楽器について「今回は、ここをこう改良しました」と、おっしゃられるんです。僕は「こうしたら更に 良くなりますね」と、半信半疑なまま無理して答えていました。すると中島さんが「無理して感想をおっしゃらなくてもけっこうです。普通に吹いていただければ、大山さんの音を聴いてこちらで判断します」と言うんです。こんなにありがたい話はないなと思いました(笑)。技術者は演奏家の口から賛辞の言葉を引き 出したいものですね。演奏家もそうです、褒められたほうがうれしい。でも、中島さんは褒め言葉よりも、良いか悪いかの結果がほしかった。僕が吹いた音を聴いて判断する、それが正しいのだと思います。演奏家は、楽器の特性がその場ですぐにわかることもあるのですが、楽器店の試奏室などで吹いてわかるというより、一晩真剣勝負のジャズのセッションなどで吹いて、そこでやっとわかることのほうが多いし、重要なのです。」

ー以前中島氏はこう述べている。

中島 「私たちは楽器を造るプロで、演奏家は演奏のプロ。楽器という共通点はあっても、その携わりかたは違います。言葉のイメージのままに楽器を造ろうとしたら違った方向に行ってしまう。ちゃんとした答えが出ていないと楽器はいじれません。それよりは吹いてもらって「これはいけるな」とこちらで判断するんです。コメントというよりも、「楽器にこういうことをやったから吹いてもらえませんか」とお願いする……。テストしてもらうというようなかたちです。 楽器を吹いてもらう場合、高音から低音まで楽器を響かせられる演奏家が、私にとっては理想です。吹いてもらうと「これはプレイヤーの問題ではなく、こちら(楽器)の問題だ」ということがすぐに分かります。ですから、大山さんのようにこれだけ楽器を響かせてくれるのはうれしいですよね。今まで楽器に施した改 良などが、大山さんのサウンドを聴いただけで「あぁ、成功したな」と確信が持てるんです。」

大山氏も今回のインタビューで述べていたが、中島氏はどうしたら楽器をいいものにできるか、奏者の求めるものを実現するためにはどうすればいいのかを常に 考えている。そこから生まれる中島社長のアイデアは革新的で、日々進化している。92シリーズをはじめ、今後のカドソンサックスから目が離せない。

 

編集後記:
最初はサックス奏者を魅了するカドソンという楽器に「いったいどんなマジックがあるのか」と考えていた。しかし、「中島氏はどうしたら楽器をいいものにできるか、奏者の求めるものを実現するためにはどうすればいいのかを常に考えている」と述べた大山氏。「それは魔法などではないんです」という中島一明氏のひと言。そして何より中島楽器での実際の検品・組み立て作業に触れて、その考えは大きな誤りであることに気付いた。 一つの楽器を造り上げることにおいてマジックなどは存在しない。楽器に魂を宿すのは楽器に対する念いの強さと、その楽器にいかに手間をかけ臨むのか。そのことに尽きるのではなかろうか。

 

cadeson 中島楽器
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