サックス記事 『孔雀の誇り』華々しくDebut!
  サックス記事 『孔雀の誇り』華々しくDebut!
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株式会社プリマ楽器創業80周年記念限定モデル

『孔雀の誇り』華々しくDebut!

GEAR

株式会社プリマ楽器の創業80周年を記念し、限定モデルのソプラノ&アルトサクソフォン『孔雀の誇り』が華やかに登場。柳澤管楽器株式会社との共同開発によって誕生した本モデルは、銀色に輝くボディに豪華な孔雀の彫刻が施された、ハイスペック感あふれる逸品だ。今回、企画・開発を担当したプリマ楽器の山瀬剛志氏と近藤香織氏に、モデル誕生の背景やこだわりについて話を訊いた。また、SAX四重奏団「Adam」での活動を軸に演奏会やレコーディングなどソロでの活動も精力的に行なう野原シーサー朝宇氏と、矢沢永吉や近藤真彦など多数のアーティスト・サポートのほか、スタジオ、ライブ、作編曲とバーサタイルに活躍する藤林祐聖氏の2人に試奏を依頼。それぞれ異なるジャンルで活躍するサックス奏者の視点から、音色や音程など本モデルのポテンシャルについて検証してもらった。
協力:株式会社プリマ楽器

プリマ楽器創業80周年モデル『孔雀の誇り』のコンセプトとは?
近藤
今年創業80周年を迎えた弊社は、これまで楽器・楽譜の卸商社として歩んできた歴史のなかでメーカーや小売店、音楽を愛する多くの方々と紡いできた音楽をともに未来へ響かせることが誇りであり、喜びであり、使命であるという思いを込めて「プリマ・プライド」という言葉を掲げ、記念モデルの発売など特別な企画を展開しています。ヤナギサワサクソフォーンに関しても、せっかくの機会ですので通常ラインナップでは実現させにくい特別感のある楽器を目指し、社内チームとメーカー一丸となって作り上げていきました。これまでの限定モデルは、通常モデルをベースに一部だけ特殊な材質や仕上、新たなパーツを試すといった形が多かったのですが、今回の記念モデルは、これまでの多くの方々との関わりのなかで得た様々なアイデアを盛り込み、それらを一つ一つ検証しながら形にしていった結果、今なお根強い人気を誇る往年のモデルの音色や吹き心地を彷彿とさせつつ、音程感や操作性、機能性は現代のものに進化、さらに、これまでのラインナップとは異なる音の表情も見せてくれるような新しい楽器に仕上がったと感じています。
お客様やプレイヤーからのニーズで特に印象的だった内容、オーダーとはどのようなことでしょうか?
山瀬
やはり、ヤナギサワが1980年代に展開していたエリモナ88シリーズ(以降:エリモナと呼称)の評判の高さでしょうか。音程の正確さや操作性、機能性に関してはもちろん時を経るにつれてどんどん進化していますが、このエリモナシリーズの吹奏感や音の感触に、現在の楽器には代えがたい魅力を感じている熱烈なファンの方が多くいらっしゃいます。
近藤
またソプラノは、2001年頃、カーブしたタイプのネックと本体が一体型となったS-901ⅡRやS-902Rという楽器を限定発売していたことがあるのですが、その自然な息の流れと程良い抵抗感、独特の音色の柔らかさや音のつながりの滑らかさといった魅力をもう一度味わってみたいと、そちらも復刻を望む声を多くいただいてきました。
では、まずは今回の記念モデルのソプラノから、仕様やこだわりをお聞かせください。
近藤
管体はブラス製銀メッキ、キィも銀メッキで、カーブしたネックと本体が一体型となった、通常ラインナップにはないタイプの楽器となっています。このタイプの楽器が持つ独特の味わいに加え、機構は現行のWOシリーズのものを採用しているので、音程感も非常に安定しています。
山瀬
ネック部分には、リングに加え、WOのヘヴィー・タイプの台形プレート(写真1)も採用して心地よい抵抗感とやや重厚な響きを得られるようにしました。
近藤
また様々なジャンルの音楽に柔軟に寄り添える楽器にしたいという思いがあり、高音域や特殊奏法を多用する現代音楽などにも対応できるようHigh Gキィ(写真2)をつけることにもこだわりました。このタイプでは珍しいのではないでしょうか。
では、アルトのほうはいかがでしょうか? エリモナ時代のコンセプトが組み込まれたのでしょうか?
山瀬
そうですね。アルトもブラス製銀メッキで、彫刻の観点からソプラノは管体全体に、アルトはベルと1番管のみにラッカーをかけてあります。厚めの管厚に単座仕様(写真3)で、その音や吹奏感にはエリモナ時代のワイルドさや骨太さがありつつ、レスポンスも良く、またタンポにはメタルブースター(写真4)を採用しているので、銀メッキの音色の柔らかさは生かしながらも音の粒立ちは非常にクリアで、ダイナミックレンジや音色の幅もとても深くて広い楽器になったと感じています。機構はWOのものなので、音程感や操作性の良さも抜群です。
ソプラノ、アルトともに、フロントFキィPGP(写真5)やサムレストとサムフックGP(写真6)はどのような理由からでしょうか?
近藤
フロントFキィは、実は、このキィを目立たせたかったからです(笑)。ヤナギサワのラインナップがWOシリーズへとモデルチェンジした際、このキィもより操作しやすく形もリデザインされたのですが、この実にヤナギサワらしい形状の美しさや操作性の高さに愛着がありまして……。異なる仕上げも試してみましたが、PGPが、楽器としての全体的なバランスが良かったことが決め手となりました。さり気なく視界に入ってくるPGPのお洒落さに心躍る人も少なくないのではないかと……(笑)。
山瀬
サムレストとサムフックもいろいろ試し、鳴り響きの豊かさや反応が最も良かったGPを採用しました。アルトのネックをスタンダードタイプにしたのも、やはり音の響きや吹奏感など全体的なバランスを考えた結果です。ほかにも細部に至るまでこだわり、例えばアルトのキィガードのネジを切削マイナスネジにするなど、変更したところもあれば、譜立て部分のようにネジピッチやネジのサイズ、メッキや重量などいろいろなものを試してみたけれど元のままが最適だと再確認して変更しなかった部分もあるなど、ヤナギサワ開発陣の協力のもと様々なアイデアを組み合わせながら試作を繰り返し検証を重ね、とにかく吹いていて楽しい楽器、そして吹き込んで育てていく楽しみのある楽器に仕上がったと思っています。
 
写真1
写真2:ソプラノ孔雀の誇りは、HighGキィ付き。ネック一体型のソプラノでHighGキィ付きは他に類をみない
 
 
写真3:左側 WO10の長座に対して、孔雀の誇りでは単座の仕様となっている。なお、写真の High F♯キィの箇所以外でも右手F〜Dキィ、Tfキィなど各所で単座が使われている
 
写真4
写真5
 
 
写真6:サムレスト、サムフックにはサムの魔法使い(金メッキ仕上)が採用されている
 
彫刻について、これはハンガリー出身のグラヴィール・アーティストのマイゼィク・ローベルトさんが彫られたそうですが、銀色に真鍮の金色のコントラストがなんとも不思議な彫刻ですね。あと孔雀の彫刻にされた理由についてもお願いします。
近藤
マイゼィクさんはハンガリーでガラス工芸や彫刻を専門的に学び、日本のガラス工芸専門家の招きによって1998年に来日されました。以来、日本でもガラス彫刻を中心に活躍され、多摩美術大学で講師を務めていたこともあるそうです。彼の専門とするグラヴィールは、ガラスに美しい線や紋様を刻むカットガラスの一種で、そのなかでもより繊細な凹凸で緻密な模様やデザインを描き出す伝統技法です。それを独自に発展させて楽器彫刻にも取り組み始め、ヤナギサワの協力を得てサックスの表面彫刻について共同研究を進めてこられ、2年前に開催された個展では、繊細かつ大胆なグラヴィール彫刻が施された15本のヤナギサワサクソフォーンが展示されました。
山瀬
マイゼィクさんの彫刻は彫りの深さや角度によって色合いや光の反射が変わり、見る角度によって、また楽器が動くたびに異なる表情を魅せてくれる面白さや華やかさがあります。それで何か一緒に新たな可能性を追求していくことができるのではないかと、記念モデルへの彫刻をお願いすることになりました。
近藤
孔雀は、コダーイの『ハンガリー民謡《飛べよ孔雀》による変奏曲』などでも世界に広く知られる、その主題となった古い民謡にも歌われているように、マイゼィクさんの母国ハンガリーでも、平和や希望の象徴であり、誇り高き存在であるそうです。戦争がより身近に感じられるようになってしまった昨今において、音楽や楽器を通して平和や調和を願いたいという私たちの理念と、80周年のテーマ「プリマ・プライド」に込めたこれまで多くの方たちと紡いできた音楽をともに未来に響かせたいという思いを乗せたこの記念モデルに、まさにふさわしいシンボルとなりました。
 
 

 
◆ソプラノ・サクソフォーン「孔雀の誇り」
1,408,000円(本体価格:1,280,000円)

[仕様]基音:B♭/High Gキィ付/カーブド・タイプのネック一体型
管体:ブラス製銀メッキ クリアラッカー仕上/グラヴィール彫刻入
キィ:銀メッキ仕上/フロントF キィ:ピンクゴールドメッキ仕上
サムフック・サムレスト:サムの魔法使い(金メッキ仕上)
高気密防水タンポ+メタル・ブースター

[付属品]オリジナル・マウスピース クラシック・モデル(SC120)
ヤニー・リガチャー(ブラス製銀メッキ仕上)
クロス(プリマ楽器創業80周年記念ロゴ入ミクロディアFSY)
C-Guard(銀製品変色防止布)
専用ケース(プリマ楽器創業80周年記念特別仕様)
など


◆アルト・サクソフォーン「孔雀の誇り」
1,408,000円(本体価格:1,280,000円)

[仕様]基音:E♭/High F♯キィ付/ネック:スタンダード・スタイル(ブラス製銀メッキ仕上)
管体:ブラス製銀メッキ仕上(ベル・1番管のみ銀メッキ クリアラッカー仕上)
グラヴィール彫刻入(ベル・1番管)/キィ:銀メッキ仕上 フロントF キィ:ピンクゴールドメッキ仕上
サムフック・サムレスト:サムの魔法使い(金メッキ仕上)/ダブル・アーム・キィ
キィガード止めネジ:切削マイナスネジ/高気密防水タンポ+メタル・ブースター

[付属品]オリジナル・マウスピース クラシック・モデル(AC140)
ヤニー・リガチャー(ブラス製銀メッキ仕上)
クロス(プリマ楽器創業80周年記念ミクロディアFSY)
C-Guard(銀製品変色防止布)
専用ケース(プリマ楽器創業80周年記念特別仕様)
など


 
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