サックス記事 YANAGISAWAとの出会いで新たな境地に辿り着いた達人が5年ぶりに来日!
  サックス記事 YANAGISAWAとの出会いで新たな境地に辿り着いた達人が5年ぶりに来日!
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THE SAX vol.120 Interview

YANAGISAWAとの出会いで新たな境地に辿り着いた達人が5年ぶりに来日!

ARTIST

かのダニエル・デファイエの愛弟子であり、現代のフランスを代表するサクソフォン奏者の一人に数えられるファブリス・モレティ氏。
2019年までは毎年のように日本でリサイタルを開催するほどの親日家で知られたモレティ氏だが、コロナ禍の影響で4年間は来日が叶わなかった。淋しく思っていたファンも多かったことだろう。が、去る2024年12月に5年ぶり待望の来日公演がルーテル市ヶ谷センターホールで催された。
それも新たな強力な武器を携えて。そんなモレティ氏に早速インタビューを敢行した。

インタビュー・文:中野明/取材協力:柳澤管楽器株式会社、株式会社プリマ楽器

楽器との新しい出会いがモチベーション となって音楽を続けようと思い直した

5年ぶりの来日となります。この間の難しい時代を経て再び来日が実現したことを嬉しく思います。どんな感慨がありますか?
ファブリス・モレティ
もちろん私もとてもとても嬉しいです。コロナが流行った2020年はフランスでもコンサートも何もなくなり、外国にも出られず、私は将来のことを真剣に思い悩んで、もう音楽をやめようかとすら考えたものです。でもそんなときにヤナギサワの楽器との新しい出会いがあり、その出会いがモチベーションとなって、音楽を続けようと思い直しました。そして私のすべきことはやはり、師ダニエル・デファイエから学んだ伝統的なフランスのサクソフォンの音楽を伝えていくことだ、という気持ちになったのです。
モレティさんはいまや数少なくなったデファイエ直系のサクソフォニストですね。
モレティ
デファイエ先生は私の第二の父親のようなもので、私のすべてのキャリアは先生に負っていると言っても過言ではありません。レッスンはとても厳しく要求の高いもので、終了後に何度も部屋の外で泣いたのを覚えています。しかし先生は私を信頼してくれて、16歳でパリ音楽院に入学した直後からよくオーケストラのエキストラに使ってくれたばかりか、18歳の時に、先生ご自身の後任としてフランス国立管弦楽団のソリストに私を推薦してくれたのです。その初舞台はリッカルド・シャイー指揮の『展覧会の絵』でしたが、リハーサルが終わった時、年配のヴァイオリン奏者の方に声をかけられました。「君はソロを吹くのは初めてじゃないね?」私は答えました。「いえとんでもない、初めてです」すると彼は「そうか、でも最後ではないだろう」と。彼は私の未来を予言したのです。
デファイエ自身が若い頃から師マルセル・ミュールの代役としてオーケストラで吹いたという逸話を、世代を超えて繰り返すかのようですね! ところでフランスのサクソフォン界は現在、デファイエの「次の次」への世代交代が進んでいますが、モレティさんはそれをどうご覧になっていますか? デファイエの教えは現代でも有効でしょうか?
モレティ
私の考えでは「クラシックの」サックスの世界で最高の存在はデファイエ先生で、今なお彼のレベルに達した人はいないと思います。その理由は彼自身が優れたヴァイオリニストでもあり、音楽文化の本質を高い次元で熟知されていたからです。長いことフランスは世界のサクソフォン文化のトップでしたが、近年は他の国々が台頭して残念ながらそうでもなくなってしまいました。またこの20~30年はコンテンポラリー(現代音楽)が広まって、それはそれで良いのですが、私やデファイエ先生が大事にしたかった「ネオ・クラシック」が少々顧みられていない状況だと思います。なんとかしなければ、と頑張っているのですが。

次ページにインタビュー続く
・音色の純粋さと製品としてのクオリティの高さから手作り的な職人の魂を感じた
・5年ぶりの出会いと新しい楽器との出会いの意味を掛けたコンサートテーマ

●PROFILE
ファブリス・モレティ
フランスを代表するサクソフォン奏者の一人。ナンシー音楽院でジャン・ルデューに学んだのち、16歳でパリ国立高等音楽院に入学し、ダニエル・デファイエ氏に師事。サクソフォンの分野において審査員満場一致の一等賞と審査員特別賞を得て卒業。また、同音楽院で室内楽をクリスチャン・ラルデ氏に学び、一等賞を獲得。エクス=レ=バン・サクソフォーン・コンクール(フランス)にて第1 位、フェアファックス国際サクソフォーン・コンクール(アメリカ)にて第2位、パリ国際室内楽コンクール(フランス)にて第3位、ギャップ・ヨーロピアン・サクソフォーン・コンクール(フランス)にて第1位、アドルフ・サックス国際コンクール(ベルギー)にて第3位など、数多くのコンクールで受賞・入賞を果たす。
これまでに、ソリストとして、またオーケストラ奏者として、リッカルド・シャイー、シャルル・デュトワ、マレク・ヤノフスキ、ロリン・マゼール、クルト・マズア、小澤征爾、佐渡裕ら一流指揮者のもと、フランス国立管弦楽団、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、パリ・オペラ座管弦楽団、モントリオール交響楽団、スロヴァキア・フィルハーモニー管弦楽団など名だたるオーケストラと共演。さらに、ピアニストの服部真理子氏との共演にも定評があり、30年以上にわたってフランス、日本でデュオ・リサイタルを重ねているほか、各国からも定期的に招かれコンサートやマスタークラスを行なうなど、室内楽、教育の分野においても国際的な活躍を続けている。現在、パリ市立ベルリオーズ音楽院教授。ヤナギサワサクソフォーン アルトA-WO37、ソプラノS-WO37を愛用。

 
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