サックス記事

大山日出男 ×「ジャズボイスの研究」

THE SAX 64号 Talk Jam-3

音楽に対して前向きであるかどうか

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シラブルやアップビート、ダウンビートについて考え、演奏に取り入れることは、本来、最も重要なことと思います。これらのことを初心者、中級者に早い段階で意識してもらうことはとても有意義だと感じます。
大山
中にはこの本に書いてあることに理解を示さないプロ奏者もいるかもしれません。そのことに関して論議することは、僕としてはやぶさかではありませんし、ジャズに対する考え方が深まれば非常にいいことだと思います。僕はこの本を持論で書いています。若いころから考えてきて到達した結論がこの本の内容ということになります。この本がはたして有意義かどうかは初級、中級を問わず読者のみなさんが判断することです。そのことよりも音楽に対して前向きであるかどうかで決まることだと思います。
この本には3連音符の3つ目と、4連音符の4つ目は同じタイミングにあると書いていますが、これは数学的に考えると、おかしい話です。僕の感覚ではそうなるわけで、また優れたミュージシャンはそのタイミングで演奏しているように聞こえます。これは相対性理論の話に少し似ています。200年前のニュートン力学で考えればその音符の位置は違いますが、相対的な理論なんですね。アインシュタインの相対性理論がなければ、現在でも補正をせずに1日放置するとGPS は12kmずれます。それは人工衛星内では地球の重力場の影響が小さいことから、一般相対論によって地上よりも時間の進み方が速くなるからです。

 

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最後にこの「ジャズボイスの研究」は、どんな人に読んでもらいたいですか?
大山
音楽に対して真摯で豊かな情熱をもっている方に読んでいただきたいと思います。一読してすぐに理解できるというような本ではないと思います。僕は演奏のほかにレッスンもやっていますが、言葉はしゃべった瞬間に消えていってしまいます。しかし本はその文章が残ります。もし理解できなければ何度でも読むことができるわけです。音楽を伝える上で書物というのは不利な気もしていたのですが、ある意味言葉よりも優れたところはあるかもしれません。それが再読できるということで、またこの本はそういう努力を要求しています。
個人的な話ですが、最近リサ・ランドール博士が書いた「宇宙の扉をノックする」という量子力学の本を読んでいます。そのことについて僕はまったく不案内なのですが、普段から不案内な本を読むことで不案内であろう読者に対して物を書く資格がないような気がしています。今読んでいる本は僕にとっては非常に難しいのですが、丹念に読めば、先ほどの相対性理論の話も少しずつ理解することが可能です。そのようなことを知的好奇心と言いますが、ジャズミュージシャンあるいはジャズファンにはこういう人たちが実は多いですし、支えてきたんだと思っています。このような本を読み解く能力が、特に日本人は高いと信じていますし、多くの人に読んでいただきたい。またそれに対してより上の次元まで進んでいってほしいと思います。
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ありがとうございました。
ジャズの音色を習得するための教則本 『ジャズボイスの研究~Study in Blue』
すべてのサックス奏者、ジャズプレイヤーのために
ジャズを表現する上でアドリブ、ソロ演奏をできるようにコード理論やスケールを取り組みますが、それと合わせて何より大切なことがジャズのサウンドを出すこと。ジャズをプレイする上で、誰もが自分の目指す音を出せるようになりたいとまず思うことでしょう。そんなジャズのサウンドについて意識して取り組むことによって、表現する観点でジャズボイスを自分のものにしていくためにアプローチした教本です。
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