サックス記事 元晴 テナーが大活躍した 2年ぶりのアルバムを 唯一無二の個性派サックス奏者が語る
  サックス記事 元晴 テナーが大活躍した 2年ぶりのアルバムを 唯一無二の個性派サックス奏者が語る
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THE SAX vol.49 Cover Story

元晴 テナーが大活躍した 2年ぶりのアルバムを 唯一無二の個性派サックス奏者が語る

ARTIST

ジャズと現代ポップミュージックとの間、豊かな技量や知識とワイルドな実践の間、国内マーケットと海外マーケットの間、送り手と受け手の間……。自由な音楽には踏み込めないタブーはないんだよと言うかのように、様々な狭間や壁に体当たりするような胸のすく活動をミレニアム以降、鋭意続けている6人組がSOIL &“ PIMP” SESSIONSだ。彼らは、オリジナルのスタジオ録音作としては2年ぶりとなる『MAGNETIC SOIL』をリリース。そこで、サックス奏者の元晴はこれまでになくテナーを多用している。そんな彼に、新作のことやテナーサックスとの関わりについて聞いてみた。
TEXT:佐藤英輔 PHOTO:草野 裕 協力:ビュッフェ・クランポン株式会社

原点回帰と今やるべきことの両方を考えたニュー・アルバム

元晴

 

今年のSOIL & “PIMP” SESSIONSは、海外公演も大々的にやらないなどライブの予定があまり立て込んでいないなという感じがしたんですが、それは新作を録っていたからと考えていいんでしょうか。
元晴
そうですね。制作に時間がかかっていましたね。半年ぐらいはかかっています。
そして、完成したこの「MAGNETIC SOIL」は、どんな内容のものにしたかったのでしょう。
元晴
全体が、というよりは、一曲一曲作っていった感じでしょうかね。流れ的には、まず歌を入れた曲を作ろうというのがあった。マイアヒラサワさんをフィーチャーした『MOVIN’ feat. Maia Hirasawa』という曲なんですが、それをシングル曲にして、そこにライブDVDを付けたものを作ろう、と。それを7月にリリースしたんですが、その勢いのまま、皆が持ち寄った曲をブラッシュ・アップして、アルバム1枚以上の曲数を録っていった結果がこの新作です。
曲数を余分に録ってしまうというのは、毎度のことですよね。
元晴
はい。今回は1曲だけ、2年前に録っていたものを入れました。『Above The Crowd』という曲ですね。あとは全部、新録曲です。
アルバムには元晴さんが作った曲も収録されていますね。
元晴
そうですね。今回、僕は1曲しか出していないんですけど。それは1曲目に置かれた『Sexual Hungry』という曲です。この曲は昔皆が知り合ったころ、本当によくライブをやっていたころに(1日に3度もライブをやっていたりもしたんです)演奏していた曲なんです。ドラムの代わりにバケツを並べて、皆で叩いたりして……。ジャズに自分たちのパンクのエッセンスをガンガン入れていきたいね、という時代の曲。今までアルバムに入っていないのが不思議なくらい、当時はよくやっていた曲なんです。初めて(03年)フジ・ロック・フェスティヴァルに出たときも演奏しましたね。
では、今回は原点回帰みたいな感じも、少しあるんでしょうか。
元晴
そうですね。でも、いつでも、原点回帰と今やるべきことという両方を考えてやっていると思います。
それで、その飛翔感あふれる『Sexual Hungry』は元晴さんが作曲者ということで、その曲を録音した際にリーダーシップを取ったのは元晴さんですか?
元晴
冒頭の部分のミックスは社長がいい物を作ってくれそうだったのでお任せしました。みんな、他の人が作った曲でも自分が作った曲のように愛でて、愛を込めてSOIL & “PIMP” SESSIONSの曲にしようとしています。
サックスとトランペットの絡みについては、元晴さんとタブゾンビさんの2人で自在に作っていく感じですか。
元晴
そうですね。今回はそんなに決め込まないで、スタジオに入って、その場でできていったものが多いです。トランペットと絡み合うような部分でも、そんなに打ち合わせはしないで、そのままツルっと録れてしまったという感じです。
それは、SOIL & “PIMP” SESSIONSのライブを見ると、実感できますね。もう、2人が阿吽の呼吸で重なり、どんな所にも自在に行ける感じがあります。
元晴
ええ、(トランペット奏者のタブゾンビは)掛け替えのない相方ですよ。僕が「あ」と言うと、彼は「うん」じゃなくて、また「あ」と言ってくることもあるんですけどね(笑)。逆に、「うん」をあえて言わない、みたいな。そういう、楽しい駆け引きや牽制をしたりもします。そこは長くやってきているだけあって、タブとはほんとそういう打ち合わせはいらないです。たとえ打ち合わせしたとしても、それが演奏に反映されたことはないですね。実際、音を出したほうが早いし、素直に格好いいものができると思います。
SOIL Main
SOIL &“ PIMP” SESSIONS:[左から]元晴(Sax)、丈青(Pf)、社長(アジテーター)、タブゾンビ(Tp)、 みどりん(Ds)、秋田ゴールドマン(Bass)

ブレッカーズの有名曲をアフリカン・ビートにアレンジ!

いろんな曲が入っていますが、ザ・ブレッカー・ブラザーズの『Some Skunk Funk』のカバーには驚きました。あの有名曲が“アフロ・ビート”(ナイジェリアの故人フェラ・クティが提唱した、アフリカン・ファンク様式)化していて。
元晴
アフロ・ビートはタブ君の提案です。いいアレンジですよね。僕も(ザ・ブレッカー・ブラザーズのテナーサックス奏者の)マイケル・ブレッカーをすごくリスペクトしてはいます。でも、その気持ちを出すためには、ブレッカーのように吹くよりも、曲の素晴らしさを自分の中で消化して、ジャズをやっている人なら誰でも知っているあの曲を、僕らなりの『Some Skunk Funk』にしたほうがいいと思ったんです。そうすることで、当時彼らが聴き手に与えたような衝撃を感じさせるものになったらいいなと。だから、テナーのソロの部分も、アタマのほうだけちょっとオマージュ的にマイケル・ブレッカーを意識した入り方を取ったんですが、あとはもうアフロ・ビートに心をゆだねて吹きました。
ライブと異なり、アルバムにおいてはソロを取るとしても、かなりコンパクトに纏めることが要求されると思います。ソロでもアンサンブルでもいいんですが、特にこれはうまく吹けたなと思えるものは、他にありますか。
元晴
うーん、『Do-Re-Mi』という曲はトランペットとの奇跡的な絡み合いが収められていると思う。本当に何もないところから、よくこんなものが録れたなと思いますね。後は、『Jazzman In The Rave』とか、『Awesome Knowledge』とかもそう。やはり、いいレコーディングというのは、その場、その時の空気をそのまま切りとって、手を加えていないもの。事実、そういう仕上がりのほうがすごく印象に残るし、繰り返し聴けるものになると思います。

プロフィール
元晴
1973年、北海道名寄市生まれ。サックスを初めて吹いたのは小学校6年生のとき。そして、ジャズと出会ったのは、高校2年生。“バークリー・サマー・セミナー・イン・ジャパン”に行ったのがき っかけで、その後ジャズに大いに惹かれるようになる。そして、洗足学園音楽大学に入学後、米国ボストンにあるバークリー音楽大学に進み、4年間学んだ。帰国後の2001年にSOIL &“PIMP” SESSIONSに加入、同バンドの弾けた路線は大きく像を結ぶようになる。03年にはアルバム未発売ながらフジ・ロック・フェスティヴァルにも出演。04年にデビュー・アルバム『PIMPIN’』をリリース、現在までビクターから数々のアルバムや DVD作品をリリースしている。また、彼らの大ファンである英国の国際的DJ、ジャイルス・ピーターソンの後押しもあり、05年以降は欧州ほか海外に大々的に進出。現在、トップ級に国際競争力を持つバンドとしても知られている。現在、(仮)ALBATRUSのメンバーでもある。


CD Information

MAGNETIC SOIL CD
「MAGNETIC SOIL」
【VICL-63787】初回限定盤
【VICL-63788】通常盤
¥2,800(税込)
発売元:ビクターエンタテインメント
[曲目]Sexual Hungry、Some Skunk Funk、MOVIN' feat. Maia Hirasawa、JUNK、Do-Re-Mi、Deep Inside、Freedom Time、Avove The Crowd、A DECADE、Moon At Noon、ASA、Jazzman In The Rave、Tell Me A Bed Time Story、Awesome Knowledge、Summer Goddess(Son Of Goddess Ver.)

登場するアーティスト
画像

元晴
Motoharu

1973年、北海道名寄市生まれ。サックスを初めて吹いたのは小学校6年生のとき。そして、ジャズと出会ったのは、高校2年生。“バークリー・サマー・セミナー・イン・ジャパン”に行ったのがきっかけで、その後ジャズに大いに惹かれるようになる。そして、洗足学園音楽大学に入学後、米国ボストンにあるバークリー音楽大学に進み、4年間学んだ。帰国後の2001年にSOIL &“PIMP”SESSIONS に加入、同バンドの弾けた路線は大きく像を結ぶようになる。03年にはアルバム未発売ながらフジ・ロック・フェスティヴァルにも出演。04年にデビュー・アルバム『PIMPIN’』をリリース、現在までビクターから数々のアルバムやDVD 作品をリリースしている。また、彼らの大ファンである英国の国際的DJ、ジャイルス・ピーターソンの後押しもあり、05年以降は欧州ほか海外に大々的に進出。現在、トップ級に国際競争力を持つバンドとしても知られている。現在、(仮)ALBATRUS のメンバーでもある。

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