サックス記事 須川展也 デビュー35周年を迎えた日本サックス界のカリスマが 輝かしき過去と未来を語る
THE SAX vol.95

須川展也 デビュー35周年を迎えた日本サックス界のカリスマが 輝かしき過去と未来を語る

クラシックのフィールドからサックスの多面的な魅力を発信し続ける

須川展也

“日本を代表するサックスの名手”とされる名だたるプレイヤーの中でも、須川展也氏はサックスを広く一般に浸透させるために尽力してきた第一人者と言えよう。ソロやカルテットでは親しみあるメロディからクラシカルなオリジナル曲までを織り交ぜたコンサートを展開し、吹奏楽では中高生の憧れとなるようなプレイで魅せる一方、自ら多ジャンルの作曲家に曲を委嘱してサックスのレパートリー拡大にも努めている。今回、演奏活動35周年の節目にこれまでの歩みを振り返るインタビューを行なったが、常に先を見据えて進み続ける須川氏の言葉から、今後の勢力的な活動に期待が高まる内容となった。

(写真:土居政則/取材協力:STUDIO 1619)

須川展也
 

自分のステージは自分で作るという決意を持って

今年、演奏活動35周年を迎えました。デビュー当時、どんな気持ちでプレイヤーとしての道を歩み始めたのでしょうか。
須川展也
1984年3月に東京藝大を卒業して、翌4月に東京文化会館の大ホールで藝大オーケストラとコンチェルトを演奏したのがデビューの日になりますが、その時の気持ちは今でも鮮明に憶えています。大学卒業記念に大きなホールでオーケストラとコンチェルトを共演するというすごい機会をいただいたものの、こんなことは続かないだろうという思いをはっきりと持っていました。今よりもっと「サックスはジャズの楽器でしょ?」と言われていた時代です。サックスにはもっといろんな音がある、幅広い魅力があることをたくさんの人に知ってもらわなければ、こんな素晴らしい機会は二度と訪れないだろうと。僕は藝大でクラシック・サックスを学びましたが、幸いポピュラーな曲を吹くことも大好きだったので、そういうものを取り入れつつ、サックスの音色を広めていきたいというビジョンは、すでにありましたね。
そのころ、クラシック・サックスが活躍する場にはどんなものがありましたか?
須川
まず一つはオーケストラのエキストラですが、サックスが使われている曲はとても少ないので、おのずとチャンスも少なくなります。次に、学校の先生になったり、吹奏楽の指導をすること。それから一番の花形は、プロの吹奏楽団に入ることでしょうか。種類としては今とそんなに変わりませんが、すでに先輩方が大勢がんばっていらっしゃいましたから、自分の場所は自分で切り開くしかありません。じっとしていても演奏する機会はやってきませんから、どんなに小さいコンサートでも積極的にやって広げていくしかないなと思っていました。
まずは演奏の場を作るところから始めたのですね。
須川
音楽関係者に会うたび、「どこにでも楽器を持って出かけます、企画してもらえませんか?」と。そういう地道な営業活動を積み重ねつつ、新しく開設された「日本管打楽器コンクール」では苦労しながらも良い成績を収めることができ、同時期に夢だった東京佼成ウインドオーケストラのオーディションもあって運良く入団できることもできました。東京藝大の先生も務めることになったり、デビューから数年はとにかくいろんなことが重なって、どんどん種をまいているような時期でしたね。
今でこそすごい数になりましたが、当時から作品を委嘱することも始めていました。アカデミックな曲は藝大の先輩である伊藤康英さんに書いていただいていましたが、同時に、ホームコンサートでも気軽に聞いてもらえるような親しみやすい曲も必要だと感じていたんです。ヴァイオリンの小品が入ったCDを買ってきては、サックスでできそうな曲を選んで自分でアレンジして演奏していました。大きなヒントをもらったのは、イツァーク・パールマン(Vn)とアンドレ・プレヴィン(Pf)がスコット・ジョプリンの『ラグタイム・ダンス』を演奏したCDです。世界的にヒットして、これはサックスでもできるんじゃないかと。すぐに楽譜を買ってきて練習し、僕の1枚目のCD「ワンス・アポン・ア・タイム」に収録しました。当時、クラシックの奏者でこういう曲をやる人が少なかったので、「須川と言えばこれ」というような評価をいただけたと思います。
須川展也
須川が最高位受賞を果たした1984年の第1回日本管打楽器コンクール

THE SAX 95~96号 会員限定特典

楽譜『Endless Love』for A.Sax+S.Sax+Pf

須川展也氏が作編曲家の長生淳氏に新たにアレンジを委嘱した『Endless Love』のアルトサックス+ピアノ版の楽譜を新規入会も含めてザ・サックスクラブ会員にもれなくプレゼントを実施!(※発送は7月の下旬を予定しています)


Concert Information

SOLD OUT:Debut 35th anniversary 須川展也 サクソフォン・クロニクル 
[日程]6月8日(土)13:30開場/14:00開演
[会場]ヤマハホール(東京・銀座) [共演]小柳美奈子(Pf)

DAC WORLD 管楽器 FAIR 2019 特別企画 須川展也 with サックス・バンド
[日程]6月18日(火)18:30開場/19:00開演
[会場]スペースDo(東京)

●渡辺香津美&須川展也 プレミアム・ジャズライブ
[日程]7月24日(水)18:00開場/18:30開演
[会場]大仙市中仙市民会館「ドンパル」(秋田)
[出演]渡辺香津美(Guit)、須川展也(Sax)、井上陽介(Bass)

●須川展也35周年記念サクソフォンコンサート
[日程]7月27日(土)18:00開演(予定)
[会場]かじまちヤマハホール(静岡・浜松) [共演]宮本いずみ(Pf)

●山形交響楽団 第279回 定期演奏会
[日程]8月31日(土)18:15開場/19:00開演 9月1日(日)14:15開場/15:00開演
[会場]山形テルサホール(山形)
[出演]トルヴェール・クヮルテット(Sax)、ヌーノ・コエーリョ(Cond)

●須川展也 SAXフェスティバル
[日程]9月16日(月)14:30開場/15:00開演
[会場]大和高田さざんかホール(奈良)
[出演]トルヴェール・クヮルテット(Sax)、小柳美奈子(Pf)

●須川展也 サクソフォンリサイタル
[日程]9月28日(土)17:30開場/18:00開演
[会場]宗次ホール(愛知)
[出演]須川展也(Sax)、小柳美奈子(Pf)、山口多嘉子(Perc)

●BUNKYO SIENA POPS 2019 わが青春のポピュラーミュージック!
[日程]11月23日(土・祝)14:20開場/15:00開演
[会場]文京シビックホール(東京)
[出演]須川展也(Sax,Cond)、渡辺香津美(Guit)、シエナ・ウインド・オーケストラ


次ページにインタビュー続く
・こだわりを持って続ければ、スタイルになる
・演奏、作品委嘱、指導、すべて活動の柱に
・以前サックスが好きだった人が帰ってくる場所を作る
・SUGAWA’S Masterpiece Album Select 15(Text by Akira Nakano)

95号ではさらに「須川展也がロマンティックに奏でたポップス名曲にLet’s Try!!」にて、Alfie&Endless Love楽曲解説も掲載しています!合わせてお楽しみください。

登場するアーティスト
画像

須川展也
Nobuya Sugawa

日本が世界に誇るサクソフォン奏者。そのハイレベルな演奏と、自身が開拓してきた唯一無二のレパートリーが国際的に熱狂的な支持を集めている。デビュー以来、長年にわたり同時代の名だたる作曲家への作品委嘱を続けており、その多くが国際的に広まっている。近年では坂本龍一『Fantasia』、チック・コリア『Florida to Tokyo』、ファジル・サイ『組曲』『サクソフォン協奏曲』等。東京藝術大学卒業。第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクール最高位受賞。出光音楽賞、村松賞を受賞。98年JTのTVCM、02年NHK連続テレビ小説「さくら」のテーマ演奏をはじめ、TV、ラジオへの出演も多い。89年から2010年まで東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスターを務めた。最新CDは16年発売の「マスターピーシーズ」(チック・コリア/ファジル・サイ/吉松隆)。トルヴェール・クヮルテットのメンバー、ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督。東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。

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