サックス記事

vol.30「良いパートリーダーって??」

THE SAX vol.52(2012年3月25日発刊)

最近のスガワ

読者の皆さん、こんにちは。今年の冬は一段と寒かったですね。大雪の被害を受けられた地域の皆様には心からお見舞い申し上げます。
今号が発売になるころには桜も咲き、すっかり春の装いになっているでしょうか。新生活スタートも間近に控え、いろいろと準備されている方も多いと思いますが、この時期になると、中学校や高校の吹奏楽部でサックスを楽しんでいる読者の方からいろんな質問をいただきます。その中でも今回は、「パートリーダー」についての質問に答えながら、その役割について考えてみましょう。

 

 

良いパートリーダーって??

教えて須川さん
教えて須川さん
 

“今度最上級生になり、パートリーダーに選ばれました。でも私は、パートのみんなに指示を出したり、注意するのがとても苦手なんです。“偉そうに”と思われるかもしれないと……。どうすれば、良いパートリーダーになれるでしょうか。”

 

まず、リーダーという役割を与えられたことは、あなたのこれからの人生に大いに役立つ良い勉強になると思います。何人かの人が集まり、一つのグループとして活動するとき、その人たちをまとめるには、どう指示を出せばみんながその気になり、動いてくれるのか。そのグループを形成する人たちがどんな性格の持ち主なのか、何を目指しているのかによって、指示の出し方は変わりますから、模範的な解答はありません。もちろん、吹奏楽部のパートだけでなく、グループで活動することは社会人になって仕事の上でも外すことはできませんから、人生勉強としていろいろと試してみて、悩んで、考えて、大いに苦しむことで勉強になると思います。それは一つ乗り越えれば次にまた新しい問題が起き、悩み、考え……人生はこうしたことの繰り返し。というとなんだか絶望的のように思えますが、それを乗り越えたとき、うまくいったとき、みんなで立てた目標に到達できたときの喜びは、悩んだ日々を吹き飛ばすくらい素晴らしい経験になるのです。その達成感を得るために、人は悩み、苦しみ、努力するんですね。

そういう意味でも僕は、人一倍努力しなければならない立場のパートリーダーさんを応援していますが、実際どうすればよいのでしょうか? パートリーダーは練習の計画を立て、パートのみんなを招集して実践しますが、音楽的なことにまで指示を出すと、不具合が生じることが多いんです。なぜなら、パート練習は全体合奏のための下練習だから。バンド全体の音楽は、顧問の先生や指揮者の方がまとめて作っていきますよね。ですからパートリーダーは、合奏の時に先生(指揮者)が何を言っていたか、“サックスセクション“に求めたことは何だったか、もっと具体的に「これをやっておきなさい」と指示されたならばその意味をきちんと理解して、パート練習を効果的に進めることが大事なんです。

以前僕はこのコーナーで「パートノートを作るといいよ」と言いました。毎日の練習で何をやったか、何ができるようになったか、起きた問題などを書いていくノートです。そのノートに、先生から言われたことを箇条書きにしておいてパート練習の時に持って行き、「先生はこういうことを要求されたので、今日はこんな練習をしませんか?」というふうに進めていけばよいと思います。合奏とパート練習はリンクしていなければ効果的ではありませんからね。実はこのあたりが、たくさんのパートリーダーが誤解しているところだと感じます。バンドのサックスセクションは、あくまでバンドの中での自分たちの役割を全うするべきですから、パートリーダーの好みで勝手に演奏を変えてしまうわけにはいきません。逆に言えば、音楽的なことまで指導するのがパートリーダーではないのです。

「じゃあ、ただの伝達役じゃないか」と思った方もいるかもしれませんが、そうではありません。
先生の要求に応える演奏ができるような練習の仕方を考え、結果を出さなければいけないのですから、やはりとても重要な役割と言えます。

例えば……「細かい動きをそろえなさい」と言われれば、メトロノームを少しずつあげながら全員で根気よく練習するのがいいのか、その前に個人練習をしておくほうがいいのかを考えます。
「音程を合わせなさい」と言われれば、音程を合わせる方法を知っておかなければ、パートリーダーは務まらないでしょう。

「じゃあ、自分がやりたい音楽はできないの?」そんなことはありません。サックスだけでアンサンブルをする機会があれば、自分のやりたい音楽をアイデアとして出しながらパートだけで音楽を作っていく場面もあるでしょう。これはとても楽しい機会であって、前述した「達成感」を得やすい場面であると言えますね。また、これは中高生にはちょっと難しいと思いますが、指揮者の要求する音楽がどうしても理解できないとサックスセクション全員の意見が一致した時には、代表して指揮者と話し合いをするような場面もあるかと思います。

それから、パート練習は曲だけでなく基礎練習もやりますが、そのメニューを考えるのもパートリーダーの役目ですね。いつもやっていることをただ慣例的にやるのではなく、いまパートにとって必要な練習を考えて取り組んでいくのです。そしてメンバーひとりひとりがどれくらい吹けるのかを把握して、成長のための助言などもしてあげなければなりません。

口で言うのは簡単だけど、実際にやるとなると難しく、とても悩んでしまうと思います。一人で抱え込まずに、先生やほかのパートのリーダーと相談しながら、ポジティブに取り組んでくださいね。立ち止まってしまったときは、「なぜサックスを吹いているのか、初めて音が出たときの感動」を思い出して、好きな音楽のために前を向いて歩きだしてください! そして最後にひとつ、「THE SAX」という雑誌を読んで勉強し、僕のコーナーにこうした質問をされるくらい真剣に考えているということは、あなたはすでにとても良いパートリーダーだと思いますよ!
頑張ってください。応援しています。

 

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

次回のテーマは「いま、音楽家として考えること」。
災害を前にして音楽家ができることは何なのか…。音楽の持つ力と役割について語ります。

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
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