サックス記事 イングランドの血が聴こえる 〜 弱冠20歳クラシック・サックスの新星が登場! ジェス・ギラム
THE SAX vol.98 Interview

イングランドの血が聴こえる 〜 弱冠20歳クラシック・サックスの新星が登場! ジェス・ギラム

JESS GILLAM ジェス・ギラム

弱冠20歳にしてすでに英国を代表する夏の風物詩『BBC Proms』に4回出演、このたびの日本での初公演でも、堂々と「ラストナイト」の幕開けで見事な演奏を披露した才媛ジェス・ギラム。サックスの文化圏としてはドーバー海峡の向こうのフランスのほうが格段に古い歴史と伝統を誇っている。英国といえばビートルズ、そして吹奏楽に詳しい人なら金管バンドが音楽の分野では有名だが、サックスの世界にも「英国流」が着実に根付きつつあるようだ。現代イギリスを代表するサックス奏者、ジョン・ハールの薫陶を受けた彼女に、英国流サックス流儀を訊いてみた。
(インタビュー・文:埜田久三朗 / 協力:ユニバーサル クラシックス&ジャズ)

JESS GILLAM ジェス・ギラム
 

硬質で明るい響き。それが英国流サックスの魅力

「ブリグジッド」問題で世界の注目を浴び、さらに今回の「ラグビーワールドカップ2019」でも各チームが苦杯を喫したイギリス。なにかとつらい話が多いかの国にあって、唯一といっていいくらい最近心温まる話題となったのが、日本での『BBCプロムス』の公演だ。百年を超える歴史的な音楽祭の記念すべき日本初公演。「ラストナイト 」として知られる最終日は、最後に『威風堂々』『蛍の光』を観客一同で熱唱する習慣でも有名だ。日本で初の「ラストナイト」では、配布された英国国旗を模したスポンサーの手ぬぐいを思い思いに振りながら、日本流の『プロムス』を満喫した音楽ファンも多かったことだろう。その夜の冒頭、鮮やかなまでに日本デビューを飾ったのが今回ご紹介するジェス・ギラム。7歳の頃からサックスに親しみ、現在も王立ノーザン音楽大学に通う学生ながら、プロフェッショナルとしてすでに大活躍。『プロムス』にも4回出演している。
ジェス・ギラム
(以下 ジェス)
今回の日本公演で5回目になります。初めての日本、初めての『プロムス・イン・ジャパン』で演奏できて光栄です!
明るい笑顔で語る彼女の音は、やはり明るく、それでいて輪郭のはっきりした輝かしい響き。サックスの「本家」ともいえるフランスとは明らかに異なった特徴を持っている。師匠は、現代音楽の分野で大きな功績を残した巨匠、ジョン・ハール。
ジェス
そうですね、確かにフランスにはサックスの素晴らしい伝統があります。日本にも、それとは違った独特のサックスの流儀が育っていることも知っています。英国のスタイル(British School)は、私の先生であるジョン・ハールが始めた......といっても過言ではありません。そうですね、おっしゃるように、ハードエッジなサウンド......硬質で輝かしい響きが特徴だと思います。現代音楽の分野で注目を浴びていると思います。

 

プロフィール
 JESS GILLAM(ジェス・ギラム)

2016年「BBCヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー」のファイナリストとなって以来、イギリスで最も注目される若手演奏家の一人。2018年には「BBC Proms」の華々しい最終夜「ラストナイト・オブ・ザ・プロムス」にて出演。サー・アンドリュー・デイヴィス率いるBBC交響楽団と共にミヨーの『スカラムーシュ』をソリストとして演奏した。2018年5月にデッカクラシックと録音の契約を交わし、英国レコード産業協会主催のクラシック・ブリット・アワード2018において受賞。現在は、ABRSMの奨学生として王立ノーザン音楽大学にてジョン・ハールに師事。

11月4日(月祝)渋谷オーチャードホールで開催された『BBC Proms Japan 2019』でのジェスのステージ

Information
「大和証券グループpresents BBC Proms JAPAN 2019 / Prom6 Last Night of the Proms」は、BS朝日で 2019年12月29日(日) 11 : 00 ~ 11 : 55 に放送予定

(放送時間などは変更の可能性があるので予めご了承ください)

CD Information

RISE~ジェス・ギラム・デビュー!


RISE ~ ジェス・ギラム・デビュー!
ユニバーサルミュージック【UCCD-1476】 ¥2,800(税別)

[収録曲]
01. ペトロ・イトゥラルデ:小さなチャルダッシュ
02. ケイト・ブッシュ:ディス・ウーマンズ・ワーク
03. マルチェロ:アダージョ(オーボエ協奏曲ニ短調から)
04. ミヨー:ブラジレイラ(組曲《スカラムーシュ》から)
05. ジョン・ウィリアムズ:クロージング・イン(《エスカペイド》から)
(映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』から)
06. マイケル・ナイマン:イフ(映画『アンネの日記』から)
07. ジョン・ハール:ラント!
08. デヴィッド・ボウイ:ホエア・アー・ウィー・ナウ?
09. クルト・ワイル:あんたなんか愛してないわ
10. ダウランド:流れよ、わが
11. ルディ・ヴィードフ:はかないワルツ
12. ショスタコーヴィチ:ワルツ第2番(《ジャズ組曲》より)
13. 伝承曲:黒い瞳
14. フランシス・レイ:映画『ある愛の詩』のテーマ

[演奏] ジェス・ギラム(Sax)、ミロシュ(Guit)、ゼイネプ・オズカ / ベン・ドーソン(Pf)、リチャード・バルコム / ジェシカ・コティス(Cond)、BBCコンサート・オーケストラ

 


次ページにインタビュー続く
・11歳からクラシック・サックスの道へ
・クラシック音楽が忘れた原初的なパワーを感じるデビュー作

登場するアーティスト
画像

ジェス・ギラム
Jess Gillam

2016年「BBCヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤー」のファイナリストとなって以来、イギリスで最も注目される若手演奏家の一人。2018年には「BBC Proms」の華々しい最終夜「ラストナイト・オブ・ザ・プロムス」にて出演。サー・アンドリュー・デイヴィス率いるBBC交響楽団と共にミヨーの『スカラムーシュ』をソリストとして演奏した。2018年5月にデッカクラシックと録音の契約を交わし、英国レコード産業協会主催のクラシック・ブリット・アワード2018において受賞。現在は、ABRSMの奨学生として王立ノーザン音楽大学にてジョン・ハールに師事。

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