サックス記事

第9回 | 演奏会・ソロ演奏編

THE SAX vol.59(2013年5月25日発刊)より転載

さて今回は、演奏会の中でもソロ演奏について!サックスはソロ演奏の多いパートです。緊張しないための心得や、良いソロにするためのコツなどなど、答えてもらいましょう!

 

Q. 演奏会ってとにかく緊張する!
演奏会でソロを吹きます。練習ではできることも、本番では緊張して失敗してしまうことが多いです。緊張しないためにはどうすればいいでしょうか。また、田中さんも本番では緊張しますか? 緊張しないおまじないのようなものがあったら教えてください。

A. 練習があなたを助けてくれます
私も音大受験から音大生の頃はとても緊張することが多かったですねぇ。「どうして緊張するんだろう? 自分の気持ちを自由にコントロールできればいいのに… 」と悩んでいましたが、とにかく緊張していても揺るがないくらい、緻密な練習を重ねて自信をつけよう、と努力した思い出があります。その結果、本番でも普段と同じように演奏できるようになってきて、そうなるともっと頑張ろうという気持ちが強くなってきました。
これは後に、脳科学者の茂木健一郎さんの本を読んで知りましたが、成功することで脳内でドーパミンというものが分泌されて、その喜びを再現したい、実感したいという気持ちが強くなるんだそうです。私はおそらくその繰り返しが上手く結びついて、少しずつ緊張から解放されてきたのだと思います。もちろん、今でも緊張感はありますが、それは音楽に集中するための緊張感です。
緊張を味方につけられるようになるためには、猛練習、猛勉強の日々でしょう。頑張ってください!!

 

Q. ヴィブラートはどこまでかけたらいいの?
ヴィブラートをかけるには、どの程度がちょうどよいのでしょうか。友だちがかけすぎるといやらしい感じがすると言っていたり、コンクールでは減点されるというウワサも聞きましたが……。

A. いろいろな演奏を聴いて、 真似するところから始めては?
ヴィブラートは装飾ではなく、あくまでも音色の変化のための手段ですから、かけることだけにこだわらず、センス良いヴィブラートを心がけてくださいね。
ヴィブラートのかけ方は、音楽のスタイルでも変わるし、共演者によっても変わります。専門的なことをいうと、フレージングを考えて使うこと(和声のことを理解して)も必要なことです。
あまり理屈っぽくては音楽が硬くなってつまらないものになりますから、感覚的な部分を大切に練習してみると良いと思います。そのためには、まず優れた奏者の演奏を真似て演奏してみましょう。真似をするにはよく聴くことが必要ですし、それは共演者に合わせるということにも繋がるので、大切なことですね。
それを録音して聴いてみましょう。自分に何が足りないのか、どこが良くないかなど、きっと鏡で自分を見るように感じられるでしょう。

 

Q. ソロをもっと楽しめたらいいのに……。
上級生になってソロ演奏を任されることが多くなりました。短いソロなので、いつもあっという間に何も考えられず吹き終わってしまいます。短くても楽しみながら演奏できるようになりたいのですが、どうしたら良いでしょうか。

A. メロディが言葉として伝えられるくらい吹きこなしましょう
短いソロとはどのくらいの長さなのでしょうか? 4小節くらいの長さなら何かを伝えられると思いますが、1小節とか1拍や2拍のようなソロだと、聴いている人をその一瞬に引き込むような表情や音色が必要です。
もう少し長いソロならば、何か言葉を話すように、最も強く訴えたい部分はどこか、どんな発音で演奏するか、また語尾をどう終わるかなど、日頃は無意識に言葉で話しているようなことを、演奏の時は一音に対しても意識してみましょう。そういうことを繰り返し練習することで、意識しなくてもだんだんと、楽譜が記号ではなく言葉と同じように感じられるようになるでしょう。
そして、演奏する意識としては「人に聴いていただく」と思うことが、自発的に何かをしようとする気持ちに繋がります。前述のことと合わせて演奏すると、きっと楽しみながら演奏できるようになるでしょう。
頑張ってください!

 

Q. ソロのマイクの位置をビシっと決めたい!
サックスがソロを取る曲でのマイクの位置は、先輩によって、ベルの上のほうだったり下のほうだったりといろいろです。本当はどこが一番正しい位置なのでしょうか? 他の楽器もソロを取る曲では、吹く前に自分でマイクの位置を変えなくてはいけないので、迷わずにココ! と合わせられる場所が知りたいです。

A. リハーサルでベストな位置をチェックしておきましょう
普段、基本的に生音で演奏することが圧倒的に多いので、マイクを通しての音に関して専門的なことはよく分かりませんが、ダイレクトに音の芯を聴かせたいならマイクに近くて、ベルの中心に合わせるのが良いと思います。ちなみに私の場合は、音量のレベルを小さくして30~40センチくらいベルから離して演奏します。
また、使うマイクによってさまざまな特性があります。指向性が強いものは音色がキツくなるので、リハーサルでサウンドチェックしてベストのポジションを決めておきましょう。

 

Q. 演奏会前日の体調管理は?
田中先生が、演奏会に万全の体調でのぞむために注意していることはありますか? また演奏前に飲んだり食べたりしないほうがいいものはありますか?

A. アルコールと激辛料理は要注意です(笑)
演奏家に限らず、食事と睡眠は大切ですね。スケジュールの関係で睡眠が少なくなることもありますが、そんな時は移動の電車、飛行機などで眠るようにしています。
また、私はお酒が好きなので飲みすぎに注意していますが、楽しい席だとついつい遅くまで……ということがよくあります(汗)。
演奏前に飲んだり食べたりしないようにしているものは刺激物です。極端に辛いものや熱いもの、お酒(あたりまえですが……)などは控えています。20年ほど前ですが本番直前に20倍の辛さのカレーを食べて、胃の中が燃えるような暑さで汗が止まらず、ステージに出た時から汗だくだったことがありました(笑)。

 

Q. 友だちがソロ恐怖症に!どうしたらいい?
友だちが初ソロの演奏を前にして、プレッシャーのあまりパニックになってしまい、急に「私には吹けない……」と言い出しました。指揮の先生が話をしてその日はなんとか演奏しましたが、あまりうまくいかず、自信を失ってしまったようです。それに、また本番の前にパニックになるのではと心配です。彼女のソロ恐怖症を治してあげたいのですが、こんな時、田中先生ならどんな言葉をかけますか?

A. 言葉よりも周りの人が音楽でのサポートを
これは精神的なことなので、大変デリケートな問題ですね。やればできるのに気持ちの問題でなかなか前へ進めないのだと思いますから、仲間や先生のサポートが大切です。
いろいろな方法があると思いますが、まずは普段の練習で一緒に吹いてあげるようにしてはどうでしょうか? メインはソロを演奏するあなたの友だちなので、音量はやや小さめに、あくまでもサポート役として演奏します。 あとは、合奏の中でもなるべくソロの場面を多くリハーサルしてもらって、慣れること。次第にサポート役の人はフェイドアウトするようにしていくという方法で試してみてはどうでしょうか? どうしても難しい場合は、本番も一緒に演奏すれば良いと思います。
言葉をかけてあげることも大切ですが、仲間である皆さんが音楽という言葉で支えてあげることで良い方向へ向かうことを祈っています。

 

演奏会は成長の場!最高の演奏のために日頃からしっかり練習するべし!
田中靖人

※この記事はTHE SAX vol.59 を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中、第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位を獲得。1991年には「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」でCDデビュー。1995年「ラプソディー」、1997年「サクソフォビア」を、03年「ガーシュインカクテル」を、2012年「モリコーネ・パラダイス」をリリース。一方、室内楽のジャンルではサクソフォン四重奏団[トルヴェール・クヮルテット]で活躍。2001年には文化庁芸術祭レコード部門大賞受賞。現在、愛知県立芸術大学、昭和音楽大学講師、礼幌大谷大学客員教授として後進の指導にもあたっている。東京佼成ウインドオーケストラ コンサートマスター。


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