いまさら訊けない!?

知っておきたいジャズ用語集

サックスでジャズを演奏したいという愛好家は数多く存在するが、専門的な用語が理解できずに躓いてしまうということも間々あるようだ。そんなジャズにチャレンジする上で敷居を高くしているジャズ用語を分かりやすく解説しようというのが本企画。ジャズ独特の音楽理論に関するものから、ジャズの演奏で必要となってくる奏法に関するものなど多岐にわたるカテゴリーから、ジャズを学ぶ上で必須となる用語をピックアップ! 初級者はもちろん中級者でも「いまさら訊けない」と感じていそうな用語を網羅してお届けする。解説を担当してくれるのは、若手ジャズ奏者のトップランナーとして新時代のJ-ジャズ・シーンを牽引する中山拓海氏。これを読めば、もうジャズの演奏に臆することはない!!
(解説・文:中山拓海)

中山拓海

筆者プロフィール
中山拓海(なかやまたくみ)
1992年静岡県富士市に生まれる。国立音楽大学を首席で卒業。大学時代、早稲田大学ハイソサエティ・オーケストラに在籍しヤマノ・ビッグバンド・ジャズ・コンテスト最優秀賞を2年連続受賞、並びに最優秀ソリスト賞受賞。GUCCIタイムピーシズ&ジュエリー日本音楽基金より初の奨学生として選出され、ロサンゼルスで開催されたグラミーキャンプに同奨学金を受け参加。多国籍ジャズ・オーケストラAsian Youth Jazz Orchestraにてコンサートマスターを務め、アジア六カ国でツアーを行なう。アゼルバイジャン共和国で開催されたバクージャズフェスティバルに自身のバンドで出演するなど国外にも活動の幅を広げる。
2019年4月、渡辺貞夫クインテット2days新宿ピットイン公演に渡辺貞夫氏本人によりゲストとして呼ばれ参加。同年12月CD”たくみの悪巧み”でキングインターナショナルよりメジャーデビュー。ジャズ国内アーティストとしてキングインターナショナルからのリリースは史上初となる。2021年ゲイであることをカミングアウト。2023年、パリのジャズクラブ Baiser Salé、ブリュッセルのMARNI JAZZ FESTIVALへ出演。これまでに山下洋輔、鈴木勲、森山威男、小曽根真、ケイコ・リー、小野リサ、JUJU、King Gnu(各敬称略)らと共演。

 

Part1 理論編

01 アヴェイラブル・ノート・スケール

(直訳で理解できる通り)利用可能な音によるスケールのこと。本解説のトーナリティ(調性)(→No.21)のある音楽においてダイアトニックコード(→No.16)を基本とした、コードトーン(→No.11)とそれぞれに付随するテンションにより成り立つ各スケールが該当する。スケールとはコードトーンとテンションを組み合わせ、コードのルート(根音)からオクターブ以内に順に並べたものを表す。

02 アヴォイド・ノート

あるコードのアヴェイラブル・ノート・スケールにおいてそのコードの響きを阻害し得る音のこと。コードに対してハーモニックリズムを感じられるアプローチであれば使用することも可能である。

Cダイアトニックコードにおけるアヴォイド・ノート

03 アッパーストラクチャー(アッパーストラクチャー・トライアド)

コードトーンの上に存在する別の3和音を表す。主にテンションにより成り立つ。コードプログレッション(コード進行)においてアッパーストラクチャーが各コードの緊張感と解決感を演出し、さらに前後のコードの繋がりをもたらすことが多々ある。

04 アプローチノート

コードトーンなどの一つのターゲットノートに対し、近接した音を利用してアプローチする際の音のこと。下からの音の場合、半音下ないしはスケールの2度下の音から、上からのアプローチはスケールの2度上の音からのアプローチとなることが多い。

05 ヴォイシング

ハーモニーの積み方。オクターブ以内にヴォイシングされたハーモニーをクローズドヴォイシング、オクターブ以上にヴォイシングされたハーモニーをオープンヴォイシングという。4度ずつ積まれたハーモニーは4thヴォイシングと呼ばれ、モードジャズで多用される。

06 裏コード

ドミナント7thにおいての裏コードは増4度(減5度)のドミナント7thである。この2つのコードはサークルオブ4th(4度圏)において真裏にあることから裏コードと呼ばれる。

 

07 オルタード・スケール

ドミナント7thにおいてRootの半音上のメロディックマイナースケールのこと。

08 オルタードテンション

ドミナント7thにおいて、それぞれのテンションが♭、♯した状態。9thは♭または♯、11thは♯、13thは♭する。
譜例のG7のコードでは、A♭、A♯、C♯、E♭が、該当する。

 

09 ガイド・トーン(トライ・トーン)

コードの3度と7度のことを示す。ジャズは4度ずつコードが進行することが多いため、コードの3度と7度が次のコードの7度と3度へ繋がる(譜例を参照)。またドミナント7thのガイド・トーンは増4度(減5度)の音程の関係にあり、これをトライ・トーンと呼ぶ。増4度の不安定な音程であるトライ・トーンがドミナントの肝となっており、裏コードはこのトライ・トーンが共通するため代替することが可能である。

10 クリシェ(ラインクリシェ)

一つのコードが継続する際など、コードの内声部を半音ずつ動かすことによりサウンドに変化を与えること。ツーファイブの際などでも、ソロのラインとしてクリシェラインを利用することも多々ある。

I’ll Remember April 5小節目~
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