フルート記事
THE FLUTE vol.196 Close Up

今だからこそ意味がある。CDアルバムを34年ぶりにリリース

90年代に一世を風靡したフルーティスト 鳴上亜希子氏が、34年ぶりに再始動し、アルバムをリリースした。70歳を超えた今、読者に伝えたいこととは?
ピアニスト・作曲家の安田芙充央氏との対談でお二人に存分に語っていただいた。

収録の空気感を詰め込んだアルバム

鳴上さんは34年ぶりの再始動ということですね。
鳴上
はい。両親の介護があって、演奏活動からはほとんど離れていました。
安田
鳴上さんは70歳を超えていらっしゃるのですが、この年齢になるといろんなことから解き放たれて思うように活動できると思うんですよ。今回のアルバムのコンセプトは“メロディやフレーズを聴かせる”というものですが、大人だからこそ出せるものがると思い、あえてこのテーマにしました。
クラリネット奏者のヨアヒム・バーデンホルスト氏

 
今回のアルバムにはクラリネット奏者のヨアヒム・バーデンホルストさんも参加されています。この経緯は?
安田
もともと僕の知り合いだったので、来日するときを見計らってそれでなんとか一日空けてもらい録音しました。すべてワンテイクでOKでした。2、3時間で彼の収録はすみました。
それはすごいですね。レコーディングって何テイクか録って、その中で一番いいものを、となると思うのですが。
安田
彼は日本ではあまり認知されていないのですがすばらしい奏者なんです。今回のアルバムはその場の空気感を大切にしたいと思っていたのですが、それが実現できました。
鳴上
その場限りの、そのときしか味わえない時間を過ごすことができました。これはすごいことですよね。収録曲のいくつかは安田さんがかっちりアレンジされているものもありますが、『ふるさとによるポエムⅡ』は、私が自由にメロディを吹き、ヨアヒムが即興しました。これはコードも決めてなかったんですよ。
安田
鳴上さんがメロディを吹いたその音を聴いて共演者はコードも即興で演奏しました。
鳴上
実は音合わせもチューニングもなく、流れで録れました。
それでアルバムが完成するのはすばらしいですね。
安田
ヨアヒムという天才が入ったことでできたことなんですよね。アドリブはここまで、コードはこう、とやると、その枠でしか演奏できないから面白くないでしょう。
鳴上
だからこそフレッシュな気持ちで演奏できましたし、それがみなさんに伝わればいいなと。
安田
この年齢になっても解き放たれれば、こんなにすばらしいことができる……それを記録したアルバムですね。
シンプルにメロディを美しく吹く、というのを体現されたのですね。
安田
我々の年代になると、義務感もないし、楽しいことを優先できる。鳴上さんも収録は楽しかったみたいですね。
鳴上
本当に楽しかった。この世界はまたとないなというのが、パッケージされています。

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Profile
鳴上亜希子
京都出身の名フルーティスト。桐朋学園大学にて林リリ子に師事。 名盤「Sweet Time」から34年のブランクを経て奇跡の復活。オリジナルも含めた新しい世界をフルートで奏でる「ナルカミ・スタイル」肩の力を抜きリラックスした音楽からはそよ風が吹いてきます。自然体の音楽があたらしいフルートの世界をつくります。
 
Profile
安田芙充央(ピアノ・作編曲)
コンポーザー・ピアニストとしてヨーロッパ・日本を拠点に活動。オペラの作編曲・翻案「Der Kastanienball」(ミュンヘン・オペラ・フェスティバル)など新しい試みにも挑戦し続けており、クラシック、ジャズを超越した「現代で最も個性的なピアニスト」(独「Kieler Nachrichten」紙)と評される。作品は2005年スイスで自身のピアノとバーゼル室内管弦楽団に初演された「ピアノ協奏曲」、名手テオドロ・アンゼロッティをソリストに迎えた「アコーディオン協奏曲」など多数。
 
■CD
「NARUKAMI STYLE Flute Collection」

【POUR-1004】プルクワ・レーベル ¥2,750
[演奏]鳴上亜希子(Fl)、安田芙充央(ピアノ・作編曲)、ヨアヒム・バーデンホルスト(Cl)
[収録曲]パリで帽子を買わなきゃ、ふるさとによるポエムⅡ、盗賊の歌、空のさんぽ、グノシェンヌ、朧月夜によるポエム、雲をみていたら、フォスターのメロディによるポエム
 
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