秋元万由子&西村優リサイタル 3/26、3/28、3/31

新進気鋭のフルーティスト秋元万由子 まもなくリサイタル開催!

秋元万由子

photo:Maki Amemori

現在スイス、ルツェルン音楽大学で研鑽を積んでいる秋元万由子さん。物腰が柔らく、とても気さくな女性だ。2015年末に秋元さんが帰国した際のインタビューをお届けしよう。

 

“笛”が好きになって

3歳の頃からマリンバとヴァイオリンを習っていたという秋元さん。マリンバというのは、音楽の習い事のなかでもかなりコアな楽器である。
「マリンバが最初に習った楽器だと思います。知り合いの家でマリンバ教室が始まり、私を連れて行ってみるととても楽しそうにしていたので、そのまま習うようになったそうです(笑)。フルートは10歳から始めました。小学校2年生のときにリコーダー奏者の金子健治さんが学校にいらして、いろいろな大きさのリコーダーでデモンストレーションしてくれる機会があり、それが“笛”を好きになったきっかけです。その後 ”横になった小さい笛が吹きたいの” と母に言ったのは小学校3年生のときでした」
両親と楽器店に行って「この楽器がいい!」と一目惚れしたのは、なんとピッコロ。でもピッコロを吹くためにはフルートを先に習ったほうがいいという店員さんの勧めもあって、小学校5年生からフルートを始めます。小学校の吹奏楽部に入部すると同時に個人レッスンを受けることになりました。
最初のレッスンは、北村薫先生だったそうです。
「北村先生は残念ながら昨年亡くなられましたが、フルートの基礎を丁寧に教えていただきました。その後中学2年からは酒井秀明先生のご自宅にレッスンに通いました。酒井先生のレッスンは厳しかったので毎回ドキドキしていましたが、今でも先生から教わったことは私のベースになっていると思います。ただ私は高校1年生の時にアメリカに留学したので、留学後は年2、3回帰国したときに見ていただくという形になりました」

アメリカ、そしてドイツへ

秋元さんが通っていた成蹊学園高等学校には、アメリカのセントポールズ スクールとの交換留学制度があり、合格すれば1年間授業料が免除される上、奨学金も受けられるという。
「応募したら運良く合格して、アメリカに行きました。1年後帰国せずにその学校に残ることもできるので、このプログラムで留学した人のほとんどはセントポールズ スクールを卒業しますね。私もそのまま残りました。留学当初は学校で習っていた英語のレベルでいきなりアメリカの高校に入ったので大変でしたね。半年ぐらい経ったころにようやく英語での生活に慣れて、楽しく過ごしました」
はじめは翌日の予定を学校で言われてもほとんどわからないレベルだったという。しかし全寮制の学校だったので、ルームメイトに寮でゆっくり説明してもらい、徐々に英語のレベルは上がっていった。
「この学校にはいろんな国から生徒が集まっていましたので、普通の日本の高校に行っていたら体験できなかった、知り得なかったこともたくさんあったと思いますね。特に各国の文化の違いについて理解できたことは貴重な体験でした」
アメリカでのフルートのレッスンは、芸術課目で音楽を選択していたため個人レッスンを週1回受けられたという。3年生に上ったときには、毎週日曜日に高速バスで1時間半ほどのところにある「ボストンフルートアカデミー」でレッスンを受けた。
そして高校卒業後はドイツの音楽大学の入学を第一志望に。
「酒井先生の影響が大きかったのだと思います。先生はドイツへ留学し、その後指導もされていたので、私もドイツで学んでみたかったのです。フライブルク音楽大学に合格してドイツに渡ったのですが、苦労したのはやはり言葉でしたね。アメリカの授業でドイツ語は習っていたのですが、いざドイツに行ってみると喋っていることが通じませんでした。国が変わって一からやり直しだと、落ち込んだ時期もあります。
ドイツではフェリックス・レングリ先生に習いましたが、ものすごく緻密なレッスンでした。言葉の問題もあったと思いますが、1時間のレッスンで頭がパンクするぐらいの情報量を与えてくれるのです。レッスン中にすべてを理解することは難しかったので、必ず録音をして後で聞き直して理解するようにしていました」

秋元万由子
秋元万由子

ドイツ音楽を理解する上で大切なこと

現在はスイスのルツェルン音楽大学で学んでいる秋元さん。ルツェルンはドイツ語圏なので、今度こそ言葉に問題はないかとおもいきや……、
「これがまた大変でした。スイスのドイツ語は、ドイツのドイツ語とは違う言語か!と思うぐらいまったく違います。初めてルツェルンで話している言葉を聞いたとき“みんな何語でしゃべっているのだろう?”と思ったぐらいですから(笑)。でも言葉は苦労しても、ドイツ音楽を理解する上ではとても役に立っていると思います。今はフランス語にも興味があって、勉強を始めているところです」
長く海外で研鑽を積んでいる秋元さんだが、もともとはとてもシャイな性格で、なかなか最初から自分の意見をいうことができなかったという。
「日本でレッスンを受けるときは、先生のアドバイスを吸収するスタンスが多いと思うんです。でも欧米では“君はどう思うの?”と必ず訊かれます。最初はなかなか意見を言うことができなかったのですが、だんだんと言えるようになってきましたね」

お客様と音楽を共有できるコンサートに

秋元さんは3月26日に山口県宇部市で、3月28日に名古屋で、そして3月31日に東京でリサイタルを行なう。「第64回ミュンヘン国際音楽コンクール フルート部門 特別賞受賞記念」と銘打ったコンサートは、大曲ぞろいのプログラムが、秋元さんの音楽が存分に楽しめるプログラムと言っていいだろう。シューベルトが自身の『美しき水車小屋の娘』の一曲をフルートのためにアレンジした作品で、どれだけ歌心を伝えることができるのかが楽しみだという。
「お客様と純粋に音楽を共有できたらいいなと思っています。コンクールではどうしても審査を意識してしまいますから。今回皆様の前で演奏できることを心から楽しみにしております」

秋元万由子
秋元万由子&西村優リサイタル
第64回ミュンヘン国際音楽コンクール フルート部門 特別賞受賞記念
[曲目]シューベルト:「しぼめる花」の主題による序奏と変奏曲 Op.160(D802)、ジョリヴェ:リノスの歌、
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378 
[出演]秋元万由子(Fl)、西村優(Pf)
[問合せ]ムジカキアラ 03-6431-8186
【宇部公演】
[日時]3/26(土)14:00
[会場]ヒストリア宇部 イベントホール
[料金]¥2,500 高校生以下¥1,500
【名古屋公演】
[日時]3/28(月)19:00
[会場]ドルチェ・アートホールNagoya
[料金]¥3,000
【東京公演】
[日時]3/31(木)19:00
[会場]MUSICAZSA(ムジカーザ)
[料金]¥4,000

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