ウィンドコントローラー NuRAD(ニューラッド)誕生
マイケル・ブレッカーによる流麗かつメカニカルな演奏や、複雑な重音を繰り出すコードやローテート演奏など、異次元とも思える音楽表現を知らしめた伝説のウィンドシンセ「スタイナーフォン」。
その血統を受け継ぎアドヴァンスさせて新たに “NuRAD”が誕生した。
ハードウェアもソフトウェアも、すべてのサウンドモジュールを制御する機能が実装され、ローテートモードをはじめとする比類なき表現力を備えたこのウィンドコントローラーについて、EWI開発にも携わったサックス、ウィンドシンセサイザー奏者にしてコンポーザーの住友紀人氏と、ウィンドシンセサイザーの伝道師よしめめ氏にNuRADの機能や操作などを紐解き検証!!
写真:住友紀人 氏
マイケル・ブレッカーによる流麗かつメカニカルな演奏や、複雑な重音を繰り出すコードやローテート演奏など、異次元とも思える音楽表現を知らしめた伝説のウィンドシンセ「スタイナーフォン」。
その血統を受け継ぎアドヴァンスさせて新たに “NuRAD”が誕生した。
ハードウェアもソフトウェアも、すべてのサウンドモジュールを制御する機能が実装され、ローテートモードをはじめとする比類なき表現力を備えたこのウィンドコントローラーについて、EWI開発にも携わったサックス、ウィンドシンセサイザー奏者にしてコンポーザーの住友紀人氏と、ウィンドシンセサイザーの伝道師よしめめ氏にNuRADの機能や操作などを紐解き検証してもらった。その様子を今回と次号103号の2回に渡ってお届けしよう。
Steinerphone〜そしてNuRADへ
まずは NuRADを語る前にその開発者ナイル・スタイナーについて説明しよう。
電子工学に精通したトランペットプレイヤーであるスタイナーは1970年代にトランペット型のウィンドシンセEVI(Electric Valve Instrument、イーヴイ)を開発する。 これは従来の管楽器とシンセサイザーを融合したヒューマンフィール溢れる楽器であり、シンセサイザーというある種「ソリッドな音」を人間臭く表情豊かに演奏する事を可能とした全く新しい楽器、 “ウィンドシンセ”が生まれた瞬間だった。 独創的かつコントーローラビリティのある設計がフュージョン系のプレイヤーに支持される事となる。
そして、そこに目をつけたのがご存知マイケル・ブレッカー(写真1)だった。スタイナーに対し木管型コントローラの開発を要請し、誕生したのがSteinerphone(スタイナーフォン※注1)である。鬼神ブレッカーのアイディアにより様々な奏法、機材セッティングが考案され、圧巻とも言える演奏によりSteinerphoneの可能性を世に知らしめた。 そんなSteinerphoneの噂を聞きつけたプレイヤー達が殺到する事となり、ハンドメイドでは対応しきれずAKAI professionalに相談。以降EWIシリーズとして歴史を紡いでいく事となる。
その後EWIは独自の進化を遂げていく事となりSteinerphoneは収束に向かうかと思われていたが……。 2004年8月29日、突如として復活の狼煙を上げる。Mt.Fuji Jazz Festivalに立ったブレッカーが手に持つそれは紛れもなくスタイナーの匂いのするウィンドシンセ“ RAD EWI” (写真1)であった。
写真1: 2004年8月のMt.Fuji Jazz Festivalステージでのマイケル・ブレッカー。ナイル・スタイナー製作の両手並列タイプ “RAD EWI”を演奏。まさに今回紹介のNuRADの先祖のようだ。
ライブは伝説のLive in Tokyo 1986を再現するかのような複雑なギミック、多様な音源モジュールなどを必要とする構成だったが、そこに要塞と化した機材群は無く、脇にあるMacbook1台で全てが完結されていた。
そして2020年、スタイナーと甥のマークが開発設計し、スウェーデンのヨハン・ベルグランドが製造するSteinerphone直系の系譜となるNuRADが公開される。 今回そんなNuRADをEWIの産みの親とも言える元AKAI professional社長鈴木コウ氏のコウスキミュージックが代理店となって日本に上陸するという情報が入った。そこで同じくEWIのもう一人の産みの親でもある住友紀人氏と一緒にNuRADを徹底解剖してみたい。
※注1: 良く誤用されるが“SteinerHorn”(スタイナーホーン)では無いので注意が必要
幅広いダイナミクス
写真2: 柔らかいマウスピース部分。本体側の金属部分はスイッチになっており、好きなMIDI信号をアサインできる。
※注3: 音量だけでなく音色などの要素も息で動く事からこう呼称される
写真3: 下の写真のように複雑なカーブも含めて13種類のカーブを設定可能。
各種センサーの設定と有機ELディスプレイ
写真4: NuRAD表面。金属製の長いネック部分とむき出しの配線。左右並列のタッチセンサーなど、インパクトのある未来的なルックス。周りに配置されているのはストラップがなくても楽器を支えられるアームレスト(取り外し可)。
写真5: :NuRAD裏面。ベンドプレートの形状はEWIと似ている。感度は過敏すぎず遅すぎず良好。オクターブ・ローラーも大きすぎず操作性を重視した程良いサイズ。
─NuRAD─ デモ演奏:住友紀人
なんでも来いのOUTPUT
ところでマウスピース先端に何か金属の部品(写真2)がありますが、なんでしょうか?
ここにも好きなMIDI信号をアサインできるので、音色をチェンジさせたり、シンセのギミックを使ったりできます。今は“CC#1”になっているので、シンセのホイールが動くようになっています。試してみます?
NuRADに関する詳しい情報は
コウスキミュージックアンドサウンド 株式会社
https://kohske.com/
TEL:048-494-1017
E-mail:info@kohske.com までお問い合せください。