THE SAX 76号 連載<第5回>

Dr.Sawamuraの「ゼロから始めるアドリブ入門!」Lesson5

Sonic Solfa Music Method TM.(渋谷アクタスSelmer Japan 後援)
難しい音楽用語を一切使わずに自由にアドリブが出来る様に工夫 された、効率の高い新しい学習システム、Sonic Solfa Music Method TM.を確立した沢村満氏が、アドリブができずに悩んでいる読者に向けて送るアドリブ入門クリニックが、THE SAX71号よりスタート! 音楽のスタイルではなく、根本的に自分のアイデアで自由にアドリブができるように、この連載を通して沢村満氏がナビゲート! 本誌には演奏例も記載しているが、手順を覚えたら、見ないでやってみることが効果的だ。ここではモニター受講生の動画を中心に紹介しよう。

 

LESSON 5  曲のストーリー性を正確に把握する 
モニター受講生と一緒にやってみよう!
3人のモニター受講生に、連載に沿って実際に体験してもらいました。このプログラムは「自由にアドリブできるための手順」を体感することが目的です。受講生は、それぞれの症状に応じながら処方を受け、手順を体感します。みなさんも自分の状況に照らし合わせて、動画を参考に手順を追ってみてください。手順を覚えたら、誌面の譜例や動画の音をなぞるのではなく、何も見ずに自力でやってみましょう。Lesson5では、sonic歴6年の下總さんの模範演奏動画を、Lesson6では受講生の最終仕上げをアップします。受講生の成果をご覧ください。
アドリブ入門モニター受講生
下總友貫
処方箋8
変化音「Me」
自分の心を変える音という意味で、Lesson3より「変化音」が登場しました。引き続き、ドレミ読みを卒業して英語圏の音楽教育と同じ階名読み、DRMを使って体感していきしょう。

※ 変化音とは……自分の心を変化させる音という意味で、DRMFSLTD(ドレミファソラシド)から外れた音を、変化音といいます。自分の心は何を感じているのか? 誠実に自分の心に問う姿勢が大切になります。プレイヤーを目指すクリエイターにとって、人生経験の中でどの音が共鳴するか、その音でしか出せない自分の気持ちは? を感じることが大切なことになってきます。

前号(75号)に引き続き、新しい変化音を追加します。では実際に変化音を体感していきましょう。 下記のように4つの箱(4小節)を使い、ミの音を変化させた変化音「ミb」=「Me」を加えて吹いてみましょう。
■まずはこちら→|S F M R D〜|S F M R D〜|S F M R D〜|S F M R D〜|
■次にこちら→|S F Me R D〜|S F Me R D〜|S F Me R D〜|S F Me R D〜|
※「ミ」=「M」と「ミ♭」=「Me」のニュアンスの違いを感じ取りながら
カラオケ音源6inC
カラオケ音源6inB♭
カラオケ音源6inE♭
→ Mの音が半音下がるとどう感じますか?
考え込まないで、直感でどう感じたか紙にメモしましょう! 直感こそが自分の真実です。

下總さん(演奏歴17年)の実演



処方箋9
変化音「Le」「Te」
前号(75号)で処方した「Le」と「Te」を、今度はひとつの小節の中に加えて吹いてみましょう。
■まずはこちら→|S L T L S〜|S L T L S〜|S L T L S〜|S L T L S〜|
■次にこちら→|S L Te Le S〜|S L Te Le S〜|S L Te Le S〜|S L Te Le S〜|
※「ラ」「シ」=「L」「T」と、「ラ♭」「シ♭」=「Le」「Te」のニュアンスの違いを感じ取りながら
カラオケ音源6inC
カラオケ音源6inB♭
カラオケ音源6inE♭
→ L・Tの音が半音下がってLe・Teとなるとどう感じますか?

下總さん(演奏歴17年)の実演


処方箋10
変化音「Me」「Le」「Te」
すでに処方してきた3つの変化音を、今度はひとつのスケールの中で吹いてみましょう。
Me Le Teを含むスケール

処方箋11
早めに予期するためのナビゲーション

ここまでやってきて実感するのが、「思っているより変化音がすぐに来る!」ということ。指が付いていかないもどかしさを感じているに違いありません。自分の頭を意識的にナビゲートして、変化音を早めに感じ取る! ことが必要になってきます。

小学校の遠足の前の日や、好きな人がもうすぐ来ると思ったとき、それだけでワクワクしますよね。あのワクワク感を思い出しましょう。つまり、「実際に来るタイミングよりも早く感じてしまうワクワク感」を意識的にトレーニングします。それぞれの変化音がこよなく愛おしく感じられて、その音しか出せない自分の心が分かり始めると、自然にそのワクワク感を早めに感じることができるようになります。本連載のクライマックスに向けて、さらに変化音と自分の心に深く関わり合うことが求められます。

下記の図(4つの箱)は、変化音「Me」「Le」「Te」を含む8小節の心のストーリーです。(「Di」「Te」は前号(75号)でやりましたので、思い出してくださいね。) 吹く小節の一拍前に、変化音を声に出して言ってみましょう。WEB練習用カラオケ音源⑫には、ナビの声も収録されています。一緒にやってみましょう。

それでは、上記のナビを備えて、これまでの手順を踏んでいきましょう。 どの音からでもスケール>ストップタイム>枠はずし>メロディ創作ができるように。下記の一例やWEB動画を参考に、チャレンジしてみてください。手順がわかったら、何も見ないで、すべての音からスタートして吹けるようにしましょう! これができて初めて、自由に発想したままの形で、後に出てくるコードや譜面に対して正しい解釈で自由に吹けるようになってきます。

下總さん(演奏歴17年)の実演


■手順A:スケール
オクターブ内の均等なスケール

■手順B:ストップタイム
自分の気持ちの通りに、「遅く吹きたい時」、「速く吹きたい時」、「吹きたくない時」等をはっきりと意志表示する

■手順C:枠はずし
ストップタイムではあるけれども、オクターブの枠をはずして、今度はスケールで癖になったD(ド)で折り返さないように。自分の手にかかるとスケールもこんなにメロディアスになるぞ! とスケールだけで自分を最大にアピールする

■手順D:メロディ創作
上記スケール練習の範囲ではできなかった、音を飛ばすという意志表示を大切にしたメロディ創作。ヴォーカルのためのメロディを創作するつもりで、できるだけ変化音を使って、幾つものフレーズを工夫しながら創作演奏しましょう!。

次回までのホームワーク
変化音「Me」「Le」 「Te」を新たに加えた32小節のストーリーです。
■前回(THE SAX 75号)までで処方した変化音、「Di」「Te」 「Fi」に「Me」「Le」「Te」を新たに加えた32小節のストーリーです。 
WEB練習用カラオケ音源⑬を使って、スケール>ストップタイム>枠はずし>メロディ創作
の手順で練習しましょう。下總さんのお手本動画も参考にしてください。

*カラオケはリピートしています
カラオケ音源6inC
カラオケ音源6inB♭
カラオケ音源6inE♭

変化音含む32小節

ホームワーク:下總さん(演奏歴17年)参考動画



講師紹介  沢村満 

Profile 沢村満…………1975年タンパ・フロリダ州立Chamberlain高校卒業。1981年ボストン・バークリー音楽大学卒業。フィル・ウッズ、ジョー・アラード教授に師事。在学中に2年間理論補講クラスの講師を務める。在学中に結成したグループがランディ・ブレッカーに認められ、来日の際にランディ・ブレッカーの「Jazz Life」誌インタビューで紹介されたことをきっかけに、日本の音楽業界で活動を始める。その後、YMOリーダーの細野晴臣のために作成したデモテープが採用され本格的にレコーディング契約を結ぶ。また、坂本龍一や渡辺香津美などのツアーメンバーとしてサックスとキーボードを担当。さらにキリンビール、キャノン、日産自動車などのCM音楽を手がける。その後、パリコレクションの音楽担当などを経て、細野晴臣主宰の代々木アニメーション音楽学校の理論主任を務めるなかでSONIC SOLFA MUSIC METHOD TM. 登録商標を獲得。以降、メソッドはスキルや知識情報伝達に関しての合理的なシステム開発へと進む。現在、自己のソロアルバム「Mitsuru World」を6月に発売予定。

 

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