サックス記事 NYジャズ界の新星 アレックス・テリエ 初来日インタビュー
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THE SAX vol.87

NYジャズ界の新星 アレックス・テリエ 初来日インタビュー

ARTIST

ミンガス・ビッグバンドのサックス奏者として2017年11月に初来日したアレックス・テリエ氏にTHE SAXがインタビューを敢行!

ミンガス・ビッグバンドのサックス奏者として、なんと今回が初来日となったアレックス・テリエ。1980年にフランスで生まれ、初めて手にした楽器はピアノ。後にアルトサックスを始め、2004年にアメリカ・ボストンのバークリー音楽大学に入学……と、実にストレートで王道を行くようなキャリアの持ち主である。
「そうなんだ。フランスではすでにプロとして仕事も始めていたんだけどね。フランスにも良い音楽大学はいくつもあるけど、友だちがもう何人もバークリーに行っていたし、奨学金ももらえることになって行こうと決めたんだよ。良い先生が数多くいたし、行けてとてもハッピーだったね。卒業してからはニューヨークに出て、そして現在に至るっていうわけさ」
三日間にわたる公演二日目の本番前楽屋にて、彼のインタビューは始まった。
(文:櫻井隆章、写真:土居政則)


日本のジャズファンは、アメリカでも有名

 

――
あなたはミンガス・ビッグバンドの歴史上、初めてのフランス人と聞いています。このバンドに入った経緯は?
Alex
そう、僕が初めてのフレンチだね(笑)。まず最初に、僕は彼らのことが大好きで、ほぼ毎週月曜日に、ニューヨークのジャズ・クラブに聴きに行っていた。そうしたらメンバーたちも僕の顔を覚えてくれるようになって、さらに僕がアルトを吹いていることも知ってくれた。そうしたら、『ちょっと吹いてみるかい?』となって、実際に吹ける機会が持てた。そうしたら今度は、「ちょっと欠員が出るから、替りに来て吹いてみないか?」と言われてね。そんなことが増えて来て、そして今があるんだ(笑)。
――
メンバーになって何年?
Alex
うーん、もう2年か3年経つかな? 今回が初めての日本での公演という訳さ(笑)。
――
ミンガス・ビッグバンド以外にも、いくつかのグループで演奏されてますね?
Alex
そうだね。僕はいくつかのバンドで自分の曲を演奏したりしている。僕の最近のアルバムでは、ピアニストのケニー・バロンとプレイしているよ。そもそも、僕は演奏旅行が多い。独りで出かけて行って、現地のミュージシャンと一緒にプレイすることが多いよ。それがとても楽しくってね。チャリティ・コンサートにも多く出演するな。僕が独りで行けば、僕の旅費とホテル代だけで済むだろ? それだと安く上がるしさ(笑)。今回の、ミンガス・ビッグバンドのように15人ものメンバーがいたら、飛行機代もホテル代も15人分かかるわけだから、そりゃ入場料も高くなるよね。チャリティだとギャラも安いけど、今回は……(笑)。それと、僕はヨーロッパや、フランス国内にも自分のバンドを持っているんだよ。だから、結構大西洋を渡っての演奏旅行も多いんだ。
――
昨晩があなたの日本での初めての演奏となったわけですが、初めての日本でのライヴの感想は?
Alex
本当に素晴らしかったよ! 実はアメリカのジャズアーティストの間でも、日本のジャズファンはとても有名なんだ。「非常に勉強熱心で、知識も深く、かつアーティストへの敬意の表し方が素晴らしい!」という評判なんだよ。これは、決してお世辞やジョークじゃなくて、本当にそう言われているんだ。だから昨日の夜は、それを確かめながら演奏していたんだけど、まさにその通りだったね。ジャズに対する熱心さが伝わって来るような、そんな観客の姿勢がステージにいてわかるんだ。例えばメンバーの誰かのソロが素晴らしいと、実に熱心な拍手が来る。正直、そこまでじゃないなというソロだと、何となく、『一応……』という程度の拍手で終るとかね(笑)。本当に見事なジャズファンたちだと痛感したね。そんな日本のジャズファンに向けて、今度は自分のバンドを引き連れて演奏したいと思うよ!

非常に気さくで、素直で率直、そしてアグレッシヴ。若さに溢れ、何の壁にもぶつからないまま来た勢いを持ったタイプのアーティスト。それがアレックス・テリエだ。果して、彼がこれからどんな作品を創ってくれるのか。そして、この日本で、どんなプレイを見せてくれるのか。さらには、アーティストとしてどんな成長を我々に見せてくれるのか。そんなことが気になる好男子なのであった。

 


Live Report
ミンガス・ビッグバンド@ブルーノート東京
2017年11月12日(日)

アレックス・テリエ
Photo by Yuka Yamaji

今や伝説となっている名ベーシスト、故チャールズ・ミンガスの遺志を継ぐビッグバンドである彼ら。アグレッシヴで挑戦的でもあった彼の音楽性とスピリットを受け継ぎ、現代に響かせる。その結成は、79年の彼の死後に未亡人の発案で始まっているので、正統性も確かだ。そしてそのもとに集結しているメンバーも国際色豊か。肝心のベーシストに座に就くボリス・コズロフはロシア、リード・アルトのアレックス・テリエはフランス、ピアノのヘレン・サンは中国系アメリカ人女性、などなど。その音楽性も、充分にジャズ上級者向けの、濃いものだった。超満員のお客さんを唸らせたソロの数々と、不協和音も連発なら、曲調が目まぐるしく変って行く曲など、様々な形でジャズを展開していくのである。バリトンサックスを操る女性、ローレン・セヴィアンや、アルトサックスのアレックス・テリエのソロなどはお客さんに盛大な拍手を受けていた。こうした、現在のニューヨーク派の精鋭たちが心底エッジの効いたパフォーマンスを展開する様を直に観られる環境に、心から嬉しく思うと同時に、彼らを呼んでくれたブルーノート東京にも感謝したい。終演後のお客さんたち、誰もが深い満足感を表情に湛えていたのだ。(櫻井隆章)

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