サックス記事
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纐纈歩美 初のニューヨーク録音でビバップの真髄に挑んだ美しき実力者

THE SAX vol.61 Cover Story

2012年にリリースした3rd作「レインボー・テイルズ」でノルウェーのオスロに渡り、初の海外レコーディングを敢行したジャズアルト奏者の纐纈歩美。それに続く新作となる「ブルックリン・パープル」では、遂にジャズの聖地ニューヨークでの録音が実現した。もう一度、ビバップを見つめ直して作り上げたというニューアルバムには、美しき実力者のさらに進化した姿が浮き彫りにされている。
( 文:熊谷美広 / 協力:株式会社ポニーキャニオン )


レコーディング・メンバーの人選と曲選び

今回、ニューヨークでレコーディングすることになった経緯は?
纐纈歩美
前回のアルバムはノルウェーで録って、かなり北欧のサウンドだったんですけど、今回は正反対の、王道のジャズがやりたくて、ぜひニューヨークで録りたいなと思ったんです。ビバップをずっとやってきたので、本場のサウンドでぜひ、と。
共演ミュージシャンは、どういう基準で選んだのですか?
纐纈
ピアノのデイビッド・ヘイゼルタインは、一度ライブで観て、その時に『Over The Rainbow』をソロピアノで演奏したんですけど、その世界観が素晴らしくて、すごく美しくて、私の好みでもあったので、ぜひ一緒にやりたいなと思いました。それでプロデューサーの方が、ベースのデイビッド・ウィリアムズをご存じだったので、彼にヘイゼルタインはどうだろうっていう話をしてくださって、今回参加していただけることになりました。ほんとうに嬉しかったですね。ドラムのウィリー・ジョーンズは、デイビッド・ウィリアムズの紹介です。
纐纈さんのオリジナル曲が5曲収録されていますけど、今回のレコーディングを想定して書かれたのですか?
纐纈
これまでに書いた曲の中から、このメンバーだったらサウンドするな、という感じの曲を選んで演奏しました。
そのなかでも、自分としては新しいアプローチができた、というような曲はありますか?
纐纈
1曲目の『Signs of Autumn』は、自分の中でも勝負曲というか、みんなのエネルギーがすごかったし、イメージ以上のものになったと思います。
途中の『Chase』、『How Is The Weather』、『Baily's Beads』というオリジナル3曲の流れが、とても新鮮に感じました。
纐纈
その3曲の流れは、自分でもけっこう考えて、ストーリー性を重視した感じになりました。『Chase』のようなタイプの曲は、自分としても珍しいですね。けっこう変則的な曲なんですけど、でもキャッチーな部分は残しているという。
スタンダード曲は、どういう想いで選ばれたのですか?
纐纈
みんながリラックスしてできるだろうと思う曲を、自分が好きな曲の中から選びました。このメンバーだったら、最高に演奏してくれるだろうと思った曲ですね。
その中でも『Calling You』というのは、ちょっと意外な選曲でした。
纐纈
この曲はいろいろな方がカヴァーしていて、どういうふうにでもアレンジできる曲なんですけど、原曲のイメージを活かしたかったので、あえてピアノとのデュオにして、空間を大事にしました。

ニューヨークで体感したジャズの本場の空気感

それで、実際にニューヨークで、ニューヨークのミュージシャンたちとレコーディングした感想は、いかがでしたか?
纐纈
いやー、ニューヨークは初めてで、何にもわからなかったので、すごく衝撃的でした。でもやっぱりこの空気感、いいなって思いました。ジャズだなぁって(笑)。メンバーの音も、人の感じも、街の感じも、全部はっきりしているなっていう気がして、すごく刺激になりましたね。おもしろい所だなって(笑)。スタジオの近くの駅もボロボロで、地下鉄もなかなか来ないし、一度ライブに行く時、駅を間違えて降りたりもしましたし(笑)。
このメンバーと、実際に共演してみた感想は?
纐纈
デイビッド・ヘイゼルタインは、ライブで聴いたのと、一緒に音を合わせたのでは、全然違うなというのは感じました。はっきり、パキパキ弾く感じがして、でもそれが自分にツボで(笑)、私のオリジナル曲にもバッチリはまった感じがします。デイビッド・ウィリアムズのベースの音も、最初リハーサルで聴いて、びっくりしました。すごく深い音で、安心感があるというか。いちばん歳上ということもあってか、メンバーをしっかりとサポートしてくれる感じがしました。
メンバーのレコーディング中の言葉で、印象的なものなどはありましたか?
纐纈
『Baily's Beads』をやった時に、ウィリーが、本当に素晴らしい曲だって言ってくれました。それまであまり喋らなかったんですけど、最高だよって言ってくれて、メッチャ嬉しかったですね。ヘイゼルタインも、オリジナル曲はすごく好きだって言ってくれて、それもすごく嬉しかったです。
日本の若い女の子がジャズをやるなんて、10年早いよ、というようなことはなかったんですね。
纐纈
そんな感じはなかったです。さすがだなって思いました(笑)。フロントをリラックスさせて、自由にできる環境を作ってくれて、サウンドを作ってくれるのは、さすがだな、と。あと、私の音も、いい音だねと言ってくれました。
レコーディングも、サックスの音色がすごく生っぽいなと感じました。
纐纈
前作は、広い空間を、フワーッと美しく録るという感じだったんですけど、今回は、それとは対照的な感じになりましたね。個人的には、こういう感じも好きです。今回アルトの音色にもすごくこだわっていて、イメージに近い感じで録れたと思います。パンチの効いた、パワーのある音色にしようと思ったらできるんですけど、それをしすぎると、聴き馴染みやすい音というか、温かみのある音というか、自分が大事にしてきたそういう部分からちょっとかけ離れ過ぎちゃうんじゃないかという思いもあって、その中間を、いいバランスで録るというところは、けっこう試行錯誤しましたね。
他に、今回のレコーディングで特に印象的だった曲などはありますか?
纐纈
『As What You Are』は、すごくいい雰囲気が作れたなって思います。メンバー全員良かったですね。特に後半はすごくいい感じでできたなって思います。あと『In A Mellow Tone』のベースとのデュオの部分とか、ベースのソロが、個人的に好きです。ベースが超いいサウンドしてるなって。
全体のアレンジなどは、メンバーとリハーサルをやりながら作り上げていったという感じなのですか?
纐纈
そうですね。その時に決めていくものが多かったです。自分のオリジナル曲以外は、ほとんどそういう感じでした。あまり決めてやるよりも、みんなの感性を自由に入れたいなと思ったので。

彼女からのメッセージと、美しいサックスの音色はコチラの動画で確認できるので要チェック!

 

「ブルックリン・パープル」纐纈歩美

Profile
纐纈 歩美 (こうけつ あゆみ)

1988年10月5日、岐阜県土岐市出身。アマチュア・ビッグバンドでトロンボーンを演奏している父の影響で、3歳からピアノを習い、中学校の吹奏楽でサックスを始める。高校に入ってから本格的にジャズを始め、甲陽音楽院名古屋校在学中に、岐阜や名古屋を中心にライブ活動を始める。2010年7月に「Struttin'」でデビュー。その後2011年7月に「Daybreak」、2012年7月に「Rainbow Tales」をリリースしている。


CD Information

「ブルックリン・パープル」纐纈歩美
 
「ブルックリン・パープル」
【MYCJ-30640】¥3,000
ポニーキャニオン

[演奏]纐纈歩美(As,Ss)、デイビッド・ヘイゼルタウン(Pf)、デイビッド・ウィリアムズ(Bass)、ウィリー・ジョーンズ(Ds)
[収録曲]Signs of Autumn、As What You Are、Freight Trane、It’s Easy To Remember、Chase、How Is There Weather、Baily’s Beads、Calling You、Jitterbug Waltz、In A Mellow Tone


次ページにインタビュー続く
・新たな武器となったソプラノとアルトのマウスピース
・ビバップを完全にマスターした上で自分の音楽を

登場するアーティスト

纐纈歩美
Ayumi Koketsu

1988年10月5日、岐阜県土岐市出身。トロンボーンを演奏していた父の影響で3歳からクラシック・ピアノを習い、中学校の吹奏楽でアルトサックスを始める。高校に入ってから本格的にジャズを始め、甲陽音楽院名古屋校在学中に岐阜や名古屋を中心にライブ活動を開始。2010年7月に「Struttin'」でデビュー。その後も、コンスタントにリーダー作をリリースし、今回の「O Pato」が8作目となる。また自己のグループや、日野皓正、菊池成孔、クオシモードなどを始めとする様々なセッションなど、精力的なライブ活動を展開している。

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