サックス記事

vol.50「“サックス大国日本”をさらに盛り上げていきましょう!」

THE SAX vol.72(2015年7月25日発刊)

最近のスガワ

読者の皆さん、こんにちは! 早いものでこのコラムは50回の節目を迎え、一旦終了させていただくことになりました。読者のみなさんはもちろんのこと、僕にこうした機会を与えてくださった編集部の皆さん、本当に長い間お付き合いいただきありがとうございました! これまで練習方法や演奏の心構えなど、サクソフォーンに関するあらゆることについて僕なりの考えを書かせていただきましたが、最終回に相応しい(?)話題として、僕の願いでもある“日本におけるサックス人気をもっと文化的なものにしていく”ために、いま一度、サクソフォーンが持つ性質や魅力について考えてみたいと思います。

 

 

最終回“サックス大国日本”をさらに盛り上げていきましょう!

現在の日本のクラシックサックス界は、とても高いポテンシャルを持っていると言えます。

もちろんジャズの世界も、戦後急速に発展し、今やすばらしいプレイヤーが続々と世間をにぎわせています。僕もザ・サックスを読みながら興味を抱き、そうした方々と接点を持って共演できるようになれないかとアイデアを練ってみたり、ジャズのまねごとをしてみたり……。

一方、日本のクラシックサックス界を見てみると、クラシックサックスのコンサートが世界一多い国と言えるでしょう。アマチュア、プロ問わず、自分たちでコンサートを作ることが多いにしろ、積極的にサックス界を盛り上げていこうとする姿勢は頼もしいものです。僕の生徒たちもいろんなところで活躍してくれています。こうした現状の中でサクソフォーン奏者としてやっていくのは本当に厳しいことだと思いますが、怖じ気づかず、果敢にトライしている姿を見るにつけ、勇気づけられ、また、自分もうかうかしていられない!と気合いを入れ直す気持ちで見ています。

このような今日を作った要因は何だと思いますか? 僕は、日本人の文化が発展してきた経緯と、サックスという楽器が持っている性質が似ていることにあるんじゃないかと思うんです。日本の文化は、もちろん古来からの伝統的なもの、自然崇拝的なものなどいろいろありますが、海外(中国大陸や朝鮮半島など)から伝わってきたものを自分たちに合うテイストに少しずつ変化させて、日本の文化としてきたものもあります。明治時代からは西洋の文化も入ってきましたが、あっという間に日本にとけ込み、自分たちに合うように変化させ、日本発の技術として(工業製品なども含めて)海外に発信しているものも多いです。外から入ってきた文化を自分たちのスタイルと融合させ、楽しかったり便利だったり美しいものに作り替えて世に広めていくという性質が、クラシックサクソフォーンにもあると感じるのです。

サクソフォーンは、クラシックの大家であるバッハやベートーヴェンの時代にはない楽器で、オリジナル曲と言えば1930年代以降にしか現れません。クラシックの中で市民権を得たなんていうことはごく最近のことですが、クラシックの伝統的な曲をアレンジして演奏したり、現代の音楽と混ぜ合わせてみたり、古くから伝わる民謡、ジャズ、ロックなどのテイストもどんどんオリジナル曲の中に取り入れて、それを「サクソフォーンの音楽」として紹介している、と思うんですね。サクソフォーンは19世紀に発明されてアメリカに渡ってジャズと共に発展したので、ジャズのイメージが強いのですが、どのジャンルにも行きやすい、ボーダーレスであるという特徴をもっており、それが故に、これまでは昔からのクラシックファンの方には受け入れられにくかったのかもしれないし、逆に、サックスをはじめいろんな音楽を聴く人たちをクラシックの世界に連れてくることもできると言えるのではないでしょうか。

日本は年々サックスのコンサートも増え、聴いてくれるお客さんもだんだん増えています。それは、その文化が「ジャパンナイズ」されることを日本の人たちが「良し」とする、認めてくれるところから来ていると思います。この「受け入れられる」という現象は、日本の文化が成長していく姿そのもので、僕はもっともっと日本でサクソフォーンが愛されていく「受け皿」があると信じています。

コンサートに足を運んでくれたお客さんから「こんな曲が聴きたい」というニーズが増えればアレンジ・オリジナル問わずレパートリー曲も増えていきます。もちろん僕も、この先ずっといろんな作品のアレンジ・オリジナル曲を委嘱したりしながらもっとサクソフォーンの可能性を広げ、魅力を発掘、紹介していきたいし、前回も書きましたが、全国各地で楽しんでいらっしゃるたくさんのサックス愛好家と触れ合う場も増やしたいと思っています。

最近は若い奏者がどんどん国際コンクールで良い成績を残し、どこかの国のスタイルを真似ているわけではなく、日本のクラシックサックスのスタイルとして堂々と世界にアピールしてくれています。僕が日本人作曲家に委嘱したオリジナル作品をたくさんの外国人プレイヤーが興味を持って演奏してくれているということも、日本のサックス界が世界をリードしているということの証明になれているかな?と思います。

若い世代にはどんどん積極的に日本のクラシックサックスのスタイルを世界に紹介していってほしいです。もちろん、僕もまだまだ現役バリバリで頑張っていくつもりですので、これからもザ・サックスには何かの形で参加させていただき、皆さんにも「サックスを愛する気持ち」を共有させていただけたら嬉しく思います。このサックス大国日本を、ザ・サックスの読者の皆さんすべてでさらに盛り上げていきましょう!

 

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

全50回にお届けしてきた「須川展也のShall We SAX!」、今回で最終回となります。
楽しんでいただけたでしょうか?バックナンバーは「THE SAX ONLINE」でいつでも読むことができます。

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。