サックス記事

vol.49「“サックス大国日本”をさらに盛り上げるために」

THE SAX vol.71(2015年5月25日発刊)

最近のスガワ

読者の皆さん、こんにちは! 早いもので僕の当コラムも次回で50回の節目を迎え、ここで一旦終了させていただくことになりました。50回の長きにわたっていろいろと書かせていただきましたが、少しでも皆さんの心に残る言葉があったなら嬉しく思います。最終回に向け、今回から「サックス大国日本のこれから」について考えていきたいと思います。日本においてサクソフォンは本当に人気のある楽器で、サックスのための雑誌があるなんてことも幸せなことです。このサックス人気をもっと文化的なものにしていきたいというのは、僕の願いでもあります。

 

 

“サックス大国日本”をさらに盛り上げるために

日本のサックス事情を考えてみると、オリンピックで言えば団体戦金メダル!と言ったところでしょうか。北から南まで全国津々浦々吹奏楽の団体があり、そこにサックスを吹く人がいます。日本における吹奏楽の発展は、サックス大国を作っている要因のひとつだと思います。吹奏楽の雑誌、各楽器の吹き方が書かれた本もたくさん出版されていて、そうしたところから得た情報で自主的に練習して集い合奏になっていること自体すごいことです。もちろん吹奏楽やクラシックだけでなく、ジャズの世界も充実していて人気がある楽器がサックスです。

僕はこれまで20数カ国いろんな国にいって演奏したり教えたりしていますが、日本のサックス人気のすごさというものをよく実感します。楽器を吹くだけではなくて、誰かと合わせる、合奏するということの楽しみを知っている。他の国でそういう例に遭遇したことはありません。サックス大国であることをみんなが自覚し、日本の文化のひとつとして世界に誇れるものとして広げていく、そのためにも僕は少しでも貢献していきたいなと考えていて、最近では自分のコンサートに有志による参加で即席アンサンブルを作り、プレコンサートを行なうなどしながらサックス愛好家の皆さんと触れ合う喜びを感じています。

まず、サクソフォンの良さとして、音を出し、音を並べ、メロディに到達するまでが他の楽器よりも比較的容易であるということが言えると思います。

昨今、インターネットが発達してなんでも簡単に知ることができ、手に入る世の中にありながら、自分で努力することによって作り出すことができる喜びは情操教育という意味においてもとても役立つことだと思いますが、あまり難しすぎたり、楽器が高価でありすぎるとなかなか手に取りにくいですよね。サックスという楽器の値段の幅広さもたくさんの人が手にするチャンスを広げていると思います。最近はよく60歳すぎてからサックスを始めて音楽教室に通っている方々とお会いし、演奏会後のサイン会などでお話することがあります。「少しずつメロディが吹けるようになってきた」と笑顔で語られる姿に、こちらも嬉しくなってしまいます。

吹奏楽によって発展の一端を担っているサックスの世界ですが、逆に吹奏楽の世界といえばパート譜だけを吹くし、それ以外のことにあまり接することなく、合奏の曲だけしか練習していないという人を多く見かけます。サックス愛好家です、と言いながら意外と「ひとりで吹いてみてください」と言うと尻込みしてしまう人が多いんですね。

そこで声を大にして言いたいのが、サクソフォンが世界に誇る日本の文化としてさらに発展していくには、個人で楽器を吹くことの喜びにも目を向けてみるといいのではないか、ということです。僕は講習会などで中学生や高校生にアドバイスすることがありますが、「なにか好きな曲を吹いてみて?」と言うと吹奏楽のパート譜しか吹けない子が、実際にいます。それはとてももったいない! サックスはクラシック、ジャズ、ポップス、演歌といろんなジャンルで大活躍する楽器ですから、個人で楽器を吹く……誰かに聞いてもらうということはまださておいても、自分自身でトライすることがさらに上達に繋がるし、もっともっとサックスが好きになるポイントだと思います。

僕は20数年にわたって東京芸術大学で教えていますが、だいたいそこに入ってくる学生というのは、中学生のときにはサックスで何かを表現する、好きな曲を吹くということにもう目覚めていて、好奇心を持って楽器と接するから結果上手くなっている、という人たちです。何か映画音楽のワンフレーズでもいい、8小節でも16小節でもいいから好きなメロディを自分で表現するということをやってみてください。そうするともっと上手くなると思います。興味を持っていろんな曲にトライして、その曲が上手く吹けないから基礎練習をやろうという発想になる。そうすると練習の目的がハッキリしますからやる気もでてきます。そうしてテクニックを上げてきたら、他の方と合わせて吹いてみたくなると思うんですね。同じ楽器の人とサックスアンサンブルをしてみたり、ピアノの人と合わせてみたり、一人が二人、二人が三人と仲間が増えていき、結局「やっぱり吹奏楽って楽しいね」となってくる発想がすごく大事だと思います。

次回はもっと専門的に「サックス大国日本」の課題を考えてみたいと思います。

 

※このコーナーは、「THE SAX」誌で2007年から2015年にかけて連載していた内容を再編集したものです

次回のテーマは「“サックス大国日本”をさらに盛り上げていきましょう!」。
いよいよ最終回。サックス人気を文化として発展させるために、あらためてサクソフォーンの魅力について考えます。お楽しみに!

 

須川展也 Sugawa Nobuya

須川展也
須川展也
日本が世界に誇るサクソフォン奏者。東京藝術大学卒業。サクソフォンを故・大室勇一氏に師事。第51回日本音楽コンクール管楽器部門、第1回日本管打楽器コンクールのいずれも最高位に輝く。出光音楽賞、村松賞受賞。
デビュー以来、名だたる作曲家への委嘱も積極的に行っており、須川によって委嘱&初演された多くの作品が楽譜としても出版され、20-21世紀のクラシカル・サクソフォンの新たな主要レパートリーとして国際的に広まっている。特に吉松隆の「ファジイバード・ソナタ」は、須川が海外で「ミスター・ファジイバード」と称される程に彼の名を国際的に高め、その演奏スタイルと共に国際的に世界のサクソフォン奏者たちの注目を集めている。
国内外のレーベルから約30枚に及ぶCDをリリース。最新CDは2016年発売の「マスターピーシーズ」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)。また、2014年には著書「サクソフォーンは歌う!」(時事通信社)を刊行。
NHK交響楽団をはじめ日本のほとんどのオーケストラと共演を重ねており、海外ではBBCフィル、フィルハーモニア管、ヴュルテンベルク・フィル、スロヴァキア・フィル、イーストマン・ウインド・アンサンブル、パリギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団など多数の楽団と共演している。
1989-2010年まで東京佼成ウインドオーケストラ・コンサートマスターを22年余り務めた。96年浜松ゆかりの芸術家顕彰を表彰されるほか、09年より「浜松市やらまいか大使」に就任。2016年度静岡県文化奨励賞受賞。
サクソフォン四重奏団トルヴェール・クヮルテットのメンバー。ヤマハ吹奏楽団常任指揮者、イイヅカ☆ブラスフェスティバル・ミュージックディレクター、静岡市清水文化会館マリナート音楽アドバイザー&マリナート・ウインズ音楽監督、東京藝術大学招聘教授、京都市立芸術大学客員教授。
 
【関連アーティスト】

須川展也







メニューリスト