サックス記事 キング・オブ・インストゥルメンタル・ミュージックが新たなスタンダードを世界に放つ待望の新作が完成!!
THE SAX vol.107 Interview

キング・オブ・インストゥルメンタル・ミュージックが新たなスタンダードを世界に放つ待望の新作が完成!!

前作「ブラジリアン・ナイツ」から6年。ポピュラー音楽史上、インストゥルメンタル・ミュージックで最も大きな成功を手にした王者ケニー・Gから、待望の新作が届けられた。ボーナス・トラック以外の全曲がオリジナルで、未来のスタンダードとなることを標榜して作られたという「ニュー・スタンダーズ」。コロナ禍の大変な状況の中でのレコーディング秘話などをオンライン・インタビューで語ってくれた。
(インタビュー・文:櫻井隆章/取材協力:Concord)

先輩ハービー・ハンコックに許可を得て(!?)名付けられたタイトル

世界的なサックス奏者、ケニー・Gが、何と6年ぶりのニュー・アルバム「ニュー・スタンダーズ」を発表した。これがなかなかの傑作で、実に丁寧に作られたオリジナル曲と、日本盤のボーナス・トラックにはジョン・コルトレーンの名曲『ナイーマ』をケニー・G流にアレンジしたナンバーまで収録されているのだ。彼の前作は2015年の「ブラジリアン・ナイツ」で、こちらはタイトル通りのブラジリアン・フレイヴァーのものだった。今回のアルバムは、ほぼすべてオリジナル楽曲で占められていて、近年の作品とは明確に一線を画すものなのである。 で、ここでカミング・アウトをさせていただく。そのケニー・Gの最新作「ニュー・スタンダーズ」の日本盤ライナーノーツを、僕が書かせてもらっているのだ。従って、楽曲そのものは充分に聴き込んだ。できれば、彼に直接話を聞いてからライナーを書ければ良いのにな、と思ったこともある。が、残念ながらそれは実現しなかった。なので、曲を聴き、アルバムに書かれるクレジットも読み込み、ライナーを書かせていただいた。その後になって、本誌のために彼にインタビューできる機会がやってきた、という次第なのだ。まさに願ってもない、良い機会が訪れたのである。
とは言え、彼に直に対面できたわけではない。この時代、コロナ禍にあって、当然ながらZoomを駆使してのインタビューである。そして、指定された日時がやって来た。今では見慣れてきたリモート会議でのZoomの画面。最初は日本側のレコード会社さんなどとの短い打ち合わせをし、そこにケニー・Gが入って来る。本人の顔が浮かんだ。 もう、満面の笑顔である。さぁ、早速のインタビューだ!

こんにちは! お元気そうですね!
Kenny G
「あぁ、いたって元気だよ! 日本の人と話せて嬉しいよ。僕は国際フォーラムとか、日本武道館とか、渋谷のオーチャードホールなど、日本のコンサート会場(註:英語では「Venue ヴェニュー」)が大好きなんだ。世界中で一番好きな会場が日本での場所なんだよ! だから、一日でも早く日本に戻りたくてさ」

こう、まず最初に一気にまくし立てるのだ。本当に日本のことが好きなのだな、と実感する。では、前作からの6年間、何をしてきたのだろう?

Kenny G
「もう、ひたすら練習していたね。毎日毎日、3~4時間は自宅の地下にあるスタジオに籠って、ずっと練習していたんだ。ちょっと見てくれよ、僕が今いるスタジオは、こんな感じなんだよ」

こう言って、彼はZoomをしているタブレット(恐らく)を回してスタジオの様子を見せてくれた。コンパクトながらも立派なコンソールを備えた、見事なスタジオであった。では、早速アルバムについて訊こう。何故、このアルバム・タイトル? 実は、1995年にハービー・ハンコックが出したアルバムが、「ニュー・スタンダード」というのだ。こちらは単数形なのだが、その際に僕は幸いにしてハンコックに直に話を聞く機会があった。彼に何故にこのタイトル?と訊いたら、彼は「今回のアルバムに収録した、僕が作った曲たちが、将来的に『スタンダード』と呼ばれるようになったら良いな、と思ったんだよ」、というのが答えだった。そのエピソードを彼に伝えながら質問をしたのだが、僕が「ハービー……」という名前を出した途端にケニー・Gの表情が一気に変わったのである。よくぞそこを訊いてくれた、話したくて堪らないという表情になったのだ。彼の答えが、こうだった。

次ページに続く
・スタン・ゲッツの音をサンプリングしてオマージュを捧げたナンバー
・ロンドンのストリングス・セクションはオンライン経由での録音に
・コロナ禍により曲作りやレコーディング作業にじっくり取り組む時間が

●CD Information
 
「ニュー・スタンダーズ」ケニー・G
【UCCO-1233】¥2,860(税込)ユニバーサル ミュージック
2021年12月3日発売

[収録曲]Emeline、Only You、Paris By Night、Rendevous、Legacy featuring the Sound of Stan Getz、Anthem、Blue Skies、Milestones、Two Of A Kind、Moonlight、Waltz In Blue、Naima(日本盤ボーナストラック)
[演奏]ケニー・G(Ss,As,Ts)、他
 
 

PROFILE
Kenny G(ケニー・G)

本名ケネス・ゴアリック。1956年6月5日生まれ。サックス奏者。ワシントン州シアトル出身。10歳からサックスを始め、グローヴァ―・ワシントンJr.などのプレイをコピーする。学生バンドを経験し、1973年、17歳の時にバリー・ホワイトのバンドに抜擢されてプロ活動を開始。1982年にソロ・デビュー。以降、多数のアルバムを発表。1987年発表のシングル『ソング・バード』が全米4位の大ヒットとなり、92年発表のアルバム「ブレスレス」は全米2位となった。またホイットニー・ヒューストン、ナタリー・コール、マイケル・ボルトン、アレサ・フランクリンなどとのコラボレーションも行なってきた。最新作は2021年の「ニュー・スタンダーズ」となっている。

登場するアーティスト
画像

ケニー・G
Kenny G

1956年6月5日、ワシントン州シアトル生まれ。大学卒業後、22歳で ジェフ・ローバー・フュージョンの全米ツアーに参加、 各地を回るうちに当時アリスタ・レコードの社長クライヴ・デイヴィスに見出されソロプレイヤーとして契約。デビューアルバム「シティ・ライツ」(1982年)でソロとしてのキャリアをスタート。転機となったのが、86年発表の4作目のアルバム「デュオトーンズ」からのシングル『ソングバード』の大ヒット(全米4位)。当時インスト・アルバムとしては異例の全米600万枚のセールスを記録、続いて88年の「シルエット」も大ヒット。92年グラミー賞に輝いたアルバム「ブレスレス」は、2年間で全米1,500万枚のセールスを突破、4年間もチャート・インして、インスト史上初の快挙となり、ギネスにも登録された。続いて、ベイビーフェイス、トニ・ブラクストンらの参加が話題となった96年の「ザ・モーメント」を経て、97年に「グレイテスト・ヒッツ」を発表。99年には初のスタンダード・カヴァーアルバム「クラシックス〜キー・オブ・ケニー・G」を発表。2005年には、名曲の数々を豪華ゲストとともに共演したアルバム「デュエット」が大ヒット。2006年にはポップ・カヴァーアルバム「ムード・フォー・ラヴ」などアリスタで全18枚のアルバムをリリース。2008年には、長年所属していたアリスタ・レコードを離れ、コンコード・レコードに移籍、第1弾「ロマンスの足音」、第2弾「ハート・アンド・ソウル」をリリース。現在もコンテンポラリー・ジャズ~スムース・ジャズのアイコンとして世界中で絶大な人気を誇っている。全世界で7,500万枚以上のアルバム、シングル、ビデオを売り上げ、グラミー賞、アメリカン・ミュージック・アワード、ソウル・トレイン・アワード、ワールド・ミュージック・アワード、NAACPイメージ・アワードを受賞。ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイム入りなども果たしている。

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