サックス記事 ロンドンの最先端ジャズ・シーンを牽引する若きトップ・ランナー
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THE SAX vol.119 Interview

ロンドンの最先端ジャズ・シーンを牽引する若きトップ・ランナー

ARTIST

2020年にリリースしたアルバム「Source」がイギリス最高峰の音楽賞と言われるマーキュリー・プライズにノミネートを果たすなど受賞歴も次々と重ね、瞬く間にロンドンを代表するサックス奏者/コンポーザーとなったヌバイア・ガルシア。
そんな高評価を受けた前作に続くアルバム「Odyssey」を早くも発表した。この話題の才女を、昨年の初来日公演に続く2度目のブルーノート東京での公演のタイミングでキャッチし、本誌では3度目となるインタビューを敢行した。

(インタビュー・文:早田和音/通訳:染谷和美/取材協力:ブルーノート東京、Concord Jazz)

音楽が導いてくれるのに任せて曲を積み重ねながら進めた

あなたの最新アルバム「オデッセイ」は、ストリング・オーケストラを加えるほか、エスペランサ、リッチー・セイヴライト、ジョージア・アン・マルドロウらのゲスト・ヴォーカリストを迎えたスケールの大きな作品となっています。どのようにしてプロジェクトがスタートしたのですか?
ガルシア
“アルバムを作るぞ!”って決めて作ったというよりも、作曲活動の一環としてアルバムができあがったというところです。私は長年にわたって、ツアーや演奏活動に多くの時間を費やしてきていますが、それと同じくらい作曲活動に時間とエネルギーを傾けています。そこが今回のアルバムのスタート。プランを練っていくというよりも、音楽が導いてくれるのに任せて曲を積み重ねながら進めていきました。そうしていくうちに作曲の意欲が広がり、ストリング・オーケストラの作曲をしてみたくなったというのが大まかな流れです。最初にストリングスを書きあげたのは『オデッセイ』という曲。当初は、私のソロ・パートでメロディのバックにストリングスの響きが流れていたらきっと美しくなるだろうという気持ちで始めたんです。ところがいざ始めてみたら、アウトロにも入れてみたらエキサイティングになるだろうと思え、どんどん発展してしまって(笑)。あのようなストリングスをメインとした後半部へと繋がっていきました。
『オデッセイ』の他にも、『ウォーターズ・パス』はストリングスをフィーチャーしたトラックとなっていますね。
ガルシア
『ウォーター~』は自分でもとても気に入っています。この曲は、いわゆる“降りてきた曲”。知らず知らずのうちにフロー状態になっていたのでしょうね。ピアノを弾いているうちに自然に自分の中から湧きあがってきて、気がついたら完成していました。たぶん、今まで私が書いた曲の中で、書き始めてから書き終えるまで、なんの加筆・修正もせずに完成した唯一の曲だと思います。
それら2曲とは対照的に、『トライアンファンス』は、とてもエキサイティングな演奏になっています。
ガルシア
この曲はもともと、数年前から演奏していたライブ用の曲。フィナーレで自由に演奏できるよう、定まった形を持たせずに作った曲なので、当初はこのアルバムのコンセプトに合わないのではないかと思っていたんです。ですが、試しにスタジオで演奏してみたら、1stテイクで完璧な演奏が録れて。この曲が持っているダブ・ミュージックのエネルギーが、このアルバムをドラマティックに展開させてくれるのではないかと思って収録を決めました。

次ページにインタビュー続く
・このアルバムを映画のように感じてもらいたいという願いがある
・Lineageはメンテナンスがしやすく、環境の変化にも強いので助かる

CD information
 
「Odyssey」
ヌバイア・ガルシア

【UCCO-1244】¥3,080(税込) Concord Jazz
[演奏]ヌバイア・ガルシア(Ts)、エスペランサ/リッチー・セイヴライト/ジョージア・アン・マルドロウ(Vo)他
[収録曲]Dawn feat. esperanza spalding/Odyssey/Solstice/Set It Free feat. Richie/The Seer/Odyssey(Outerlude)/We Walk In Gold feat. Georgia Anne Muldrow/Water’s Path/Clarity/In Other Words, Living/Clarity(Outerlude)/Triumphance/Clarity(Alternative Version)※日本盤ボーナストラック
 
 

●PROFILE
NUBYA GARCIA(ヌバイア・ガルシア)
ロンドン北部で生まれ育ったヌバイア・ガルシアは、10代後半にトゥモローズ・ウォリアーズに参加する前にカムデン・ミュージックで音楽教育を受け、トリニティ・ラバン・コンセルヴァトワール・オブ・ミュージックでトレーニングを修了。2017年のデビューアルバム「NUBYA'S 5IVE」は、The Vinyl Factoryから称賛され、EP『WHEN WE ARE』(2018年)では、タイトル曲がNPRの2018年ベスト・ソングの1曲に選ばれるなど高評価を得た。また同年、Jazz FM 「Breakthrough Act」賞とSky Arts Award 「Breakthrough Act」賞を、2019年にはJazz FM 「UK Jazz Act of the Year」を受賞。2020年にアルバム「Source」をリリースするとUKアルバム・チャートのトップ30に入り、USウェブ・メディア、ピッチフォークにて「Best New Music」を獲得。さらにRolling Stone誌で「Album of the Month」を獲得するなど音楽媒体から絶賛を受ける。2021年にはDownbeat「Rising Star Award, Tenor Saxophone」を受賞、更にParliamentary Jazz Award「Jazz Instrumentalist of the Year」を受賞、Jazz Journalist Award「Up&Coming Musician of the Year」にもノミネート。また、アルバム「Source」はイギリス最高峰の音楽賞と言われるマーキュリー・プライズにノミネートを果たす。2023年3月には、ガルシアをはじめとするロンドンのジャズ・シーンをリードするグループ、ロンドン・ブリューのメンバーとしてアルバムをリリースし、世界的な賞賛を浴びた。2023年10月に初来日公演。2024年9月にニューアルバム「Odyssey」をリリースした。

 

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