サックス記事 変われなくてずっとここまで来たけど、それが必要だったんだと思う。
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THE SAX vol.122 Interview┃藤枝伸介

変われなくてずっとここまで来たけど、それが必要だったんだと思う。

ARTIST

今年の4月にフランスのレーベル「Superfly Records」からLP盤『福島』をリリースしたSINSUKE FUJIEDA GROUPのリーダー、藤枝伸介。レコードファンやコアリスナーを中心に火が付き、事前予約の段階で完売。フジロックの出演から、アシッド・ジャズの伝説的DJ、ジャイルス・ピーターソンに選ばれる一枚にまで至った。急速な勢いで世界に浸透するその背景について、藤枝本人に話を聞いた。

13年の時を経て、世界と繋がった点と点

LP盤『福島』が大きな反響を呼び、すでに再プレスも決まったそうですね。フランスのレーベル「Superfly Records」からリリースした経緯を教えてください。
藤枝
Superfly Recordsはパリにある有名なレコード店で、過去の名盤を発掘して紹介していて、世界中のレコードファンからカリスマ的な支持を集めているお店です。彼らはレーベルもしていて、リイシュー盤(過去のレコードの再発・復刻)を作っていたんですが、新譜も出したいと考えていたそうです。そのオーナーのパウロ(Paulo Goncalves)が、レコードの買い付けも兼ねて日本に来ていたときに、関係者の紹介から僕らのライブを聴きに来てくださって。そこから、彼らにとっても新譜第一弾の重量盤LPとして、レコーディングを行なってリリースしたというのが経緯です。
レコードファンの方は、情報収集力が高くて、横の繋がりも広いですよね。
藤枝
そうなんですよ。横の繋がりも広いし、凄く熱量がある。レコードって換えが効かないじゃないですか。レコードそのものが鳴っているアナログなところに価値がある。針を落として聴いて、盤を裏返してまた聴くっていう体験は、YouTubeで聴く音楽とはまったく別物というか、“モノ”としての価値が高いですよね。
大きな反響を生んだ要因はどこにあったと捉えていますか?
藤枝
内容が受け入れられたのだと思うんですが、『福島』や『Nobody Knows』といった過去に作った楽曲を改めて収録したアルバムでもあるので、作品の見せ方でもこんなに変わるんだなと感じました。レコードという、モノとしての完成度が高かったことが、レコードファンにもストレートに届いた理由なのかなと思います。
 パウロによると、ヨーロッパのレコード市場では、70年代頃の日本のフリージャズのレコードの価値が高まっており、ヨーロッパのレコード会社が原盤権を持つ日本のレーベルとライセンス契約を結び、リイシュー盤を次々とリリースしているそうです(『福島』も原盤権はSoFa Recordsにあり、Superfly Recordsとのライセンス契約による数量限定版LP)。でも当時のジャズの質感 を 持った新譜はなかったと。それだけ今の日本のジャズシーンは、コンテンポラリーやミクスチャーがほとんどで、実は僕のような音楽はジャズが避けてきた道なのかもしれない。そうした需要と合致したのも要因かもしれません。
タイトル曲の『福島』は東日本大震災から生まれた13年前の曲で、当時お話も聞きましたが、それがこうして改めて世界に再認識されて、広がっているというのは感慨深いですね。
藤枝
そうそう、まさか『福島』を改めて出すことになるとは全然思ってなかった。自分自身はまったく変わっていないけど、いろんな人に聞いてもらえる状況になってみて「変わらなくて良かったな」 と思います 。むしろ変われなくてずっとここまで来たけど、それが必要だったんだなって。ずっとやりつづけてたから『福島』が評価される今に届いた。13年前に自分のレーベルを始めたこととか、点と点が線になって、コツコツと積み重ねてきた17作品が今フィードバックされているのだと思います。
SINSUKE FUJIEDA GROUPはどれもオリジナル曲ですが、ジャズのフォーマットと同じように演奏してるのですか?
藤枝
基本的に同じです。メロディとコード進行があって、テーマ→ソロ→テーマといった構成があって。そこに、ここはこうして欲しいとか、こういう風景イメージがあるとか、ドラムはこう、 ヴァ イ オリン はこうあって欲しいというのが全部ある。全部あった上で、1回自由にやってみるその場の“即興性”を大事にしています。
ヴァイオリンとパーカッションというユニークな編成もSINSUKE FUJIEDA GROUPの魅力ですね。
藤枝
ヴァイオリンは僕にとって、すごくドラマチックな色を音楽につけてくれる。SINSUKE FUJIEDA GROUPの活動を再開したのも、 ヴァイオリン の存在が大きかったと思います。パーカッションは音楽に対して奥行きとか深さという立体感が出せる。それが入ることで、想像力 の 膨らみ方も全然変わってきますよね。
 

次ページにインタビュー続く
・自分の感動がちゃんと音に乗っかっているかどうか
・自分がやりたいと感じるものを一番大切にしてきた

information
 
SINSUKE FUJIEDA GROUP
LP「福島」
(Superfly Records)
 
登場するアーティスト
画像

藤枝伸介
Shinsuke Fujieda

音楽プロデューサー、作曲家、サックス・フルート奏者。2012年より音楽レーベルSoFa Records(ソファーレコーズ)を運営。2003年頃よりクラブジャズバンド i-dep(アイデップ)のサックス、フルートとして活動、Summer SonicFestivalやSXSW等国内外大型フェスへ出演。谷中敦( 東京スカパラダイスオーケストラ)とのサックスデュオ 2 of a kind 、DJ井上薫とのユニットFusik、DACHAMBOのシンセストCD HATAとの PolarChalors 、またソロとしてSINSUKEFUJIEDAGROUPやピアニスト富樫春生とのデュオなどでライブ、リリースを重ねる。これまでに参加するグループ、またはソロでアルバム30作品をリリース。CM、レコーディング参加作品多数。2010年せたがや文化財団/世田谷区主催 世田谷芸術アワード「飛翔」音楽部門をSoundFurniture(サウンドファニチャー)名義で受賞。
2019年再始動したi-depでカナダ・ケベック州で開催された北米最大級の音楽フェスティバルFEQ(フェスティバル・デテ・ドゥ・ケベック)に出演し優秀賞を獲得。

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