THE SAX vol.75(2016年1月25日発刊)より転載

第25回 | 三つのジャポニスム(真島俊夫作曲)

今回は、コンクールやコンサートでもよく演奏されます、真島俊夫作曲の『三つのジャポニスム』を取り上げます。長らく御愛読いただいてきた本連載ですが、次回で最終回となります。最終回に向けて今回もしっかりと演奏のポイントを確かめていきましょう!
By 田中靖人

─ 今回のPick Up 曲 ─

三つのジャポニスム(真島俊夫作曲)

 どんな曲?
今回取り上げる『三つのジャポニスム』は、2001年に東京佼成ウインドオーケストラに委嘱された作品で、同年の定期演奏会で初演されました。その後、ヨーロッパ各国でも演奏され、日本的な情緒溢れる曲想が高い評価を得ています。
作品の構成は、「鶴が舞う」「雪の川」「祭り」の3曲からなりますが、今回は2曲目の「雪の川」にスポットを当てて解説したいと思います。

サクソフォンの演奏ポイント!
II.雪の川 La Rivière Enneigée
真島さんによるとこの場面は、冬の渓谷を静かに流れる川に、雪が降り続ける墨絵のような光景をイメージしたそうです。クラリネットセクションを中心に、レガートで演奏される6連符が、その光景を表しています。

譜例1 (クリックして拡大)

低音部セクションによって長いフレーズが奏される中で、イングリッシュ・ホルンの哀愁漂うソロが登場します。

譜例2 (クリックして拡大)

そして旋律はソプラノ・サクソフォンのソロ(練習番号17)に受け継がれます。

譜例3 (クリックして拡大)

書かれているソロはきちんとリズムがありますが、奏者のイメージで多少自由に演奏しても良いと思います。例えば18小節目1拍目から2拍目のポルタメントはリズムにとらわれず、アンブシュアを変化させて3拍目に向けてゆっくり音程を下げて上がるように自由な感じで演奏するのも面白いかと思います。また、3拍目、4拍目のリズムもこの通りではなく、19小節目に向かって少し加速する(次第にリズムが細かくなるような)雰囲気のリズムで演奏するのも面白いでしょう。

19小節目3、4拍目の6連符も多少自由に歌う感じで表現しても良いかと思いますが、フラジオのラがあるため、それどころではない部分ですね(笑)。

フラジオのラのフィガリングはいくつかありますので、試してみて選択してくださいね(図①)。

フラジオの運指図
フラジオの運指図
フラジオの運指図
フラジオの運指図
 

 真島俊夫について
真島俊夫さんは、吹奏楽界を代表する作曲家で、全日本吹奏楽コンクール課題曲、吹奏楽ポップスの金字塔となっているシリーズ「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」の編曲など、様々なジャンルの重要なレパートリーを手掛けています。
主な作品に、1988年度全日本吹奏楽コンクール課題曲の『波の見える風景』、同コンクール1991年度課題曲の『コーラル・ブルー~沖縄民謡「谷茶前」の主題による交響的印象~』、同コンクール1997年度課題曲の『五月の風』の他、『三つのジャポニスム』、『鳳凰が舞う』、『地球―美しき惑星―』などがあります。
2006年、リール国際音楽コンクールでグランプリを受賞しました。
真島さんはプロアマの垣根を越えて、作品の提供や共演などの活動を意欲的に行なっていらっしゃいますので、読者の皆さんの中にも真島さんと交友がある方がいらっしゃることと思います。


※この記事はTHE SAX vol.75を再構成したものです

田中靖人さん
田中 靖人 Yasuto Tanaka
和歌山県出身。国立音楽大学在学中に第4回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門で第1位。矢田部賞を受賞し卒業後より、ソリストとして各地でリサイタルなど幅広いコンサート活動を行ない、テレビやラジオにも数多く出演。また、サクソフォン四重奏団《トルヴェール・クヮルテット》のバリトン・サクソフォーン奏者として国内外で活躍し、これまでに10枚を超えるCDをリリース。2001年には文化庁芸術祭レコード部門“大賞”を受賞。ソロ・アルバムに1991年「管打楽器ソロ名曲集・サクソフォーン」95年「ラプソディー」(東芝EMI)97年「サクソフォビア」(東芝EMI)2003年「ガーシュインカクテル」(佼成出版社)12年「モリコーネ・パラダイス」(EMIミュージック)をリリース。03年、和歌山県より「きのくに芸術新人賞」を受賞。サクソフォンを大室勇一氏に師事。現在、昭和音楽大学客員教授および国立音楽大学教授として後進の指導にもあたっている。


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