日本の西洋楽器~管楽器 ~トランペット教則本の歴史
我々がトランペットの技術を習得するにあたって欠かせないものの一つに「教則本」がある。現在では選ぶのに迷うほど多くの種類が楽器店などに並ぶが、海を越えて江戸の幕末に西洋の楽器が日本に渡来した時代には、演奏するための手がかりは何もなかったはず。今回は、そんな時代から日本で教則本が確立する昭和初期までの歴史を辿っていこう。ガイドしてくれるのはトランペット奏者であるとともにトランペット研究家としても活躍する小崎敬正氏だ! (文:小崎敬正)

[筆者プロフィール] 小崎敬正(こざき ゆきなお)
徳島県出身。阿波高等学校を経てくらしき作陽大学音楽学部音楽学科へ入学。2010年、くらしき作陽大学管弦楽団とプラハ交響楽団との合同演奏会にオーケストラメンバーとして出演。在学中より古典派~ロマン派のトランペット・コルネット作品に関して楽譜や資料の収集研究に取り組み、ナチュラルトランペットや長管トランペット等の時代楽器の演奏にも挑戦している。近年では日本のトランペットの歴史について楽器やマウスピース、教則本、関連資料などの収集研究にも力を入れており、専門誌に特集記事が掲載されるなど、トランペット研究家としての活動にも力を入れている。トランペットを、神代修、奥山泰三、杉木峯夫、谷津謙一、上田じん、C.シュリューター、G.タルケヴィの各氏に師事。室内楽・ブリティッシュバンドを白俊宏氏に師事。
日本トランペット界黎明期の教則本、
そして黎明期を築いた中村鑛次郎とは
幕末、日本へ初めて西洋楽器が入ってきたのが約150年前のことですが、そこから日本各地に広まっていき多くの日本人が楽器の演奏技術習得に励み、その時の先人たちが私たちの師匠の師匠から師匠、そして私たちへと技術を継承し今の日本の西洋音楽界へ発展を遂げてきました。そんな日本における西洋楽器の黎明期において日本国内でどのような教則本が存在し、どんな奏法・練習法が提唱されていたのかということに興味をもった私は、明治~大正~昭和初期と日本国内で出版されていた西洋楽器(特にトランペット)に関する専門書・教則本の収集を始め、どれも文化財級のとても貴重な物がたくさん集まりました。そこで今回は一冊ずつ、当時の奏法や楽器の扱い方の考え方がどのようなものだったのかといったことを少しずつ紐解きながらご紹介します。
日本において最古の管楽器専門書にあたる物は966年(平安時代中期)に編纂された「新撰楽譜」とされていますが、当時トランペットなどの西洋楽器が存在していたはずもなく雅楽で使用される横笛や龍笛などの管楽器に関する物でした。
いま現在、実にたくさんの数の教則本が国内で出版されていますが、1957年に中山冨士雄氏が出版した物までの中で私が調査して把握している日本国内で出版された西洋管楽器のための専門書・教則本を時系列で並べてみます。※は未所有
●新組織簡易吹奏楽 管属楽器独習之友 第1集/
著者:四竈訥治
共益商社書店(1895年/明治28年)
●楽隊用吹奏楽器教本/著者:小畠賢八郎
京都十字屋楽器店(1914年/大正3年)
●管絃楽器論/著者:フランツ・マイエルホッフ 翻訳:信時潔、片山頴太郎
高井楽器店(1925年/大正14年)
●トランペット コルネット教則本/
著者:廣岡九一
共益商社書店(1934年/昭和9年)
●コルネット,トランペット教則本/著者:廣岡九一 音楽之友社(1938年/昭和13年)
●初等吹奏楽独習叢書 コルネット,トラムペット教本/著者:三戸知章、校閲:瀬戸口藤吉
●白眉出版社(1938年/昭和13年)
●トランペット コルネット教則本/
著者:深海善次※ 楽苑社(1944年/昭和19年)
●コルネット,トランペット教則本/
著者:広岡淑生
音楽之友社(1948年/昭和23年)
●トランペット,コルネット教則本/
編著:全音楽譜出版社※
全音楽譜出版社(1948年/昭和23年)
●トランペット教本/著者:深海善次
音楽之友社(1954年/昭和29年)
●トランペット教則本/著者:中山冨士雄
全音楽譜出版社(1957年/昭和32年)

では、次からはここに挙げた書籍を1冊ずつ紹介します。
(次ページへ続く)


















