知られざるロータリートランペットの世界

クラシックのオーケストラでは
よく見かけるけれど
ビッグバンドやジャズコンボの
フィールドではほとんどみかけない
横に構えるちょっと変わったトランペット
それが「ロータリートランペット」だ
トランペットが好きならば
その独特な風貌に見とれてしまうはず
近代的なトランペットにおける「駆動部分」「エンジン」といってもいいのがヴァルヴセクション。自然倍音しか出せなかった昔のトランペットは、活躍の場も限られていた。
現在のように、ジャンルを問わず縦横無尽に活躍できるようになったのは、金属加工が容易になった産業革命前後に生まれた数々のヴァルヴの発明。ヴァルヴによって長さの違う管を切り替えることで、他の楽器のようにさまざまな音階を自由に奏でることが可能になった。ヴァルヴは、トランペットを自由に羽ばたかせるエンジンなのだ。現在ほとんどの国で主流になっているのが、上下に動くピストンを使う方式。それに対して、横方向に回転するロータリーヴァルヴを使う方式は数こそ少ないけれど、ヨーロッパの一部の国で熱烈に愛好されている。
……というわけで、ロータリー式トランペットの魅力を徹底解剖!
文:榎本孝一郎
取材協力:ジャパンロータリートランペットセンター・築地徹
(2017年10月発売時点)

築地 徹
今回取材でお世話になった「ジャパンロータリートランペットセンター」店長の築地徹氏。東京藝術大学からウィーンに学び、ドイツ・オーストリアの金管の魅力にほれ込んだ彼は演奏家として活躍するかたわら、その愛するロータリーの魅力を伝えるべく同センターを創始。彼同様、ドイツ・オーストリアの音楽にぞっこんな愛好家は着々と増加しつつあり、浜松からはじまったウィーン式吹奏楽研究の試みは、いまや全国規模で広まりつつある。
これだけは押さえておきたいロータリー豆知識
いろんな場所で活躍するロータリー
クラシックの本場ドイツで愛されるロータリートランペットは、必然的にクラシック専用の楽器……みたいなイメージで語られることが多い。ところが、視野をぐっとひろげてみるとクラシック以外の場面で愛用されているシーンも意外に多いのだ。ジャズの世界でロータリーを愛用していることで有名なのがブラジル出身のトランペット奏者、クラウディオ・ロディッティ(現地発音では「ホーヂチ」に近くなる)。現在はアメリカを拠点に活躍する彼の音楽世界は、まさしくロータリーならではの音色でなければ描けない独自の魅力を持っている。「Free Wheelin’」はロータリーでリー・モーガンの作品を演奏している。また、セルビア地方で独特な構成をもつロータリー式の高音金管が愛好されていることもマニアの間では有名。セルビアではトランペットシャンクをもつロータリーフリューゲルをごく普通に「トランペット(トゥルーバ)」と呼ぶ(写真参照)。それはいわゆる金管楽器の呼称にもなっていて、いわゆるユーフォニアムを「テナートランペット」、チューバを「バストランペット」みたいな感じで呼ぶ風習がユニークだ。セルビア・グーチャで毎年開催されるトランペットフェスティバルにほれ込んだ吉開裕子さんの著書「トランペットを吹き鳴らせ!セルビア&マケドニア ジプシー音楽修行記」(共栄書房)はこの世界を活写した名著。最 後に、ロータリーヴァルヴを搭載したユニークなアイーダトランペット「AOILIA AIDA」(ベストブラス)をご紹介。これは、巨匠カラヤン直々のご指名で歌劇「アイーダ」に使用するトランペットを手作りした経験をもつ「ベストブラス」の名匠濱永晋二氏の労作。同社オリジナルの構想に基づく最新のロータリーヴァルヴが搭載されている。
「マルカート」ブランドで有名な下倉楽器では、セルビアで愛好されるタイプの楽器も大好評販売中。軽くてよく鳴ることで、隠れた人気商品となっている。店頭で試奏可。
「Free Wheelin’」
クラウディオ・ロディッテイ

トランペットを吹き鳴らせ!
ベストブラス「AOILIA AIDA」ロータリーの音を満喫できる名曲名盤
1:BRILLIANT BRASS
古典から現代までをドイツ独特の世界観で
ベルリンフィル首席のタルケヴィ、古楽器の世界でも活躍するギヨーム・ヨール他、ウィーンとベルリンの精鋭が結成した金管五重奏団、白熱の名演。「ムノツィルブラス」の鬼才、トーマス・ガンシュのオリジナル「Flotter 5er」から、この分野の基本アイテムのひとつであるエヴァルドやアーノルドまで、幅広い作品世界をロータリー特有の骨太の世界観で描ききる痛快盤。
収録楽曲:Flotter 5er(トーマス・ガンシュ)、金管五重奏曲(ヴィクター・エヴァルド)、金管五重奏曲(マルコム・アーノルド)他

2:on the road
ベルリンフィル首席の「二人旅」
ドイツ独特の音色感にこだわるオーケストラの首席二人による本作では、さまざまなジャンルの音楽をロータリー特有の深い表現力で堪能させてくれる。普段まじめな人がちょっとおどけたことを言うと「イタイ」感じがするものですが、本作はそういう心配はご無用。ロータリーのたのしい世界を思う存分お楽しみください。
収録楽曲:2本のトランペットと室内管弦楽団のための協奏曲(プログ)トリビュート・トゥ・ガーシュイン(バロー編)風船ラグ(バロー)チャルダーシュ(モンティ)他

3:Phil Blech Wien
ウィーン金管軍団の「本音」をご堪能あれ
バンド名を意訳すると「ウィーンの金管大好き人間たち」。有名オケで活躍する猛者たちが、普段の憂さ(意外にオケの金管奏者は、思いっきり吹くと怒られたりしてストレスたまっちゃうもんなんですW)を晴らすかのように痛快無比に鳴らしまくる。「深くあたたかく、たくましい」ロータリーの、そのたくましさにほれ込む一枚。
収録楽曲:モーツァルト:「魔笛」序曲、ロドリーゴ:「ある貴紳のための幻想曲」より第四楽章、マーラー:交響曲第2番より第四楽章、ブルックナー:交響曲第7番より第二楽章、マスカーニ:「カヴァレリア・ルスティカーナ」よりPreludio e Siciliana 他

4:Gansch meets Höfs
現代きっての名手の共演
ドイツ金管の名手たちをあつめた「ジャーマンブラス」での大活躍で一躍世界にその名をとどろかせたマティアス・ヘフスと、名門ウィーンフィルの首席として長年活躍してきたハンス・ガンシュという、当代随一のロータリーの名手ふたりの魅力がぎっしりつまった名盤。ドイツとウィーン、ふたつの音楽大国を代表するソリストの違いを満喫したい。
収録楽曲:ヴィヴァルディ、ネルーダ、ジョリヴェ、ミュールバッヒャー他

5:Solo De Concour
ロータリーによるコンテストピースの模範演奏
バイエルン放送交響楽団首席で、ミュンヘン音楽大学の教授としても活躍するハネス(ハンネス)ロイビンの独奏アルバム。ロイビン家は金管楽器の才能に恵まれていたようで、ヴォルフガングとベルンハルト、そして彼の3兄弟はドイツ金管楽器の精髄をいまに伝える名手としていずれも名高い。ロータリーの音色を存分に楽しめる一枚だ。
収録楽曲:T.シャルリエ:ソロ・ド・コンクール、J.ルエフ:モビール、P.ゴーベール:カンタービレとスケルツォ、F.シュミット:組曲 他

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・一目瞭然!ロータリー式の物理的個性
・こんなにあるぞ! ロータリー(1)
・こんなにあるぞ! ロータリー(2)
・こんなにあるぞ! ロータリー(3)
















