トランペット記事 知られざる開発の裏側、その想い
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シルキーの魅力[後編]社長アンドリュー・ナウマン氏に聞く

知られざる開発の裏側、その想い

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前号では、シルキーのサウンドに惹かれた奏者たち「ザ・シルキー・ファイブ」の面々に、シルキーの魅力を熱く語ってもらった。後編となる今号では、アメリカ・シカゴに本社を構えるシルキー社の社長、アンドリュー・ナウマン氏にメールインタビューを敢行。シルキーのこだわりから、社長としての熱い想い、そして貴重な開発の裏側までを語ってくれた。
協力:Schilke Music Products, INC./株式会社グローバル
※内容はTHE TRUMPET vol.8発刊(2021年4月)当時のものです。予めご了承ください。

社長のアンドリュー・ナウマンさんと、副社長で奥様のジュリー・ナウマンさん
ナウマンさんが、シルキー社の社長になられるまでの経緯を教えてもらえますか?
ナウマン(以下、N)
52歳になった今、自身がトランペット奏者であったことを皆さんの前で語るには、少し時代を遡らなければですね。若い頃の私は、とにかくトランペットに興味があり、トランペットを吹くことを何より楽しんでいました。“トランペット奏者”としての教育も受け、大学で学士号、大学院では修士号をトランペット演奏専攻で修めました。大学はウィスコンシン州立大学スティーブンズポイント校を卒業しており、1992年からノーステキサス州立大学デントン校の修士課程でトランペットを専攻、1994年に修士号を取りました。1994年の秋からは、同大学の博士課程に進学しましたが、在学中にバロックトランペット等の古いトランペットの構造に興味を持ち、「ナウマン・トランペット」の試作に取り掛かるようになりました。その後、自身の会社「ナウマン・トランペット」設立のために1995年の春に大学院を辞めました。それが私のトランペット製作者としてのキャリアの始まりです。
トランペット製作の傍ら、私はフリーランスのトランペット奏者としても活動し、ウィスコンシン州立大学オシュコシュ校では4年間トランペット科の教授もしていました。その後の1999年、私はエドワーズ・ゲッツェン社に加わることになり、2002年に私と妻がシルキー社を購入するという素晴らしい機会に恵まれるまで、エドワーズ・ゲッツェン社でトランペット設計の責任者として在籍していました。
シルキー社の社長となって以降、私と妻は二人三脚で働いています。妻のジュリー(Julie Naumann氏)はウィスコンシン州ミルウォーキーにあるマーケット大学で金融学を修めており、弊社の財政と人事を管理しています。
ナウマンさんが、シルキー社の社長となって大切にしていることとは?
N
シルキーの仕事で私が一番大事にしていることは、創業者レイノルド・オットー・シルキー(Renold O.Schilke氏)のデザイン理念に従って、高品質の製品を作りつづけるということです。レイノルド・シルキーの設計思想から生まれた楽器は歴史上、最高のトランペットの一つであると証明され、また今もそう在りつづけています。その高品質で知られてきたシルキー社の伝統、そしてレイノルド・シルキーのデザインを忠実に踏襲した楽器を作りつづけることが、“私に課せられた責任”であると思っています。
創業者レイノルド・オットー・シルキー
 
ナウマン社長はこれまでに、「HD」、「i32&i33」、「HC」、「ソロイスト」、さらにはピッコロトランペットの「P7-4」や「フリューゲルホルン」など、シルキーにとってもセンセーショナルなモデルを数多く開発されてきましたが、それぞれの開発の経緯を教えていただけますか?
N
私自身によるデザインで2006年より発表したこれらの楽器の設計に関しては、皆さんにとってとても興味深いお話を披露できると思いますよ。挙げていただいたすべての楽器の製作、またそれを市場に出せたことは、私にとってもとても素晴らしい経験でした。それぞれのモデルごとに説明していきましょう。

クラシック音楽家に向けた「HDシリーズ」

N
HDシリーズのトランペットはオーケストラ奏者のためにデザインされたものです。それまでの弊社のトランペットのラインナップに、クラシック音楽家に直接向けた楽器を加えることが必要だと考えたのです。というのも、シルキーはそれまでクラシック音楽の演奏家向けというよりは、どちらかというとジャズやスタジオ系に強いトランペットだと思われていましたから。
HDシリーズはこれらクラシック音楽の奏者へ、新しいアプローチを提案するのに役立ちましたし、幸運なことにシリーズ発表後、瞬く間にオーケストラの演奏家に受け入れられ、とても好評を博しました。最終的にHDシリーズはジョン・ファディス氏の協力を得て、S43HDL-F(ファディスモデル)へ行きつくこととなり、HDシリーズは単なるクラシック音楽家向けを通り越して、ジャズプレイヤーに向けても魅力的なデザインとなり、ジャンルを問わないシリーズとなりました。

アンサンブルやオケでも使いやすいピッコロを

N
P7-4は、実はもともと私自身のために開発したものだったのです! トランペット奏者としての私の強みはピッコロトランペットだと思っていたので、ピッコロトランペットに対してはとりわけ関心がありました。P5-4がすでに業界内でのスタンダードとしての位置を確立していましたが、もう少しオープンな吹奏感を持った、特にアンサンブルでの使用やオーケストラ奏者にとっても扱いやすい、そういうものが出来るのでは?と考えた結果生まれたのがP7-4です。新たに素晴らしい楽器をピッコロのラインナップに追加できましたし、本当に吹いていて楽しい楽器ですね。
 

スモーキーなサウンドとシルキーのイントネーションを融合したフリューゲル

N
フリューゲルホルンは、弊社の従来のラインナップをより拡充するために作りました。以前からジャズやスタジオ系に造詣の深いメーカーとして知られているシルキーにおいて、フリューゲルホルンのラインナップを作ることは至極当然のことのように思われました。私にとってはフリューゲルホルンの設計、そして製作はとっても刺激的な挑戦でした。フリューゲルホルンの製作に必要な工具(治具)はトランペットのそれとはまったく違うため、まずは製作に必要な工具を製作するところから始まりました。工場に詰めての工具の製作はとても大変でしたが実りのあるものでした。この作業は本当に楽しかったですね。そして工具の製作がひと段落すると、次はまったく一から新しいバルブセクション、管の取り回し、そしてベルの設計が必要でした。設計の元となったのは1900年初頭から中期のスモールボアを基調とした古いフリューゲルホルンで、スムースで”スモーキー”なサウンドとシルキーの真骨頂であるイントネーションの融合を目標としました。そして幾多の実験・試作を経て、ついに1040-FL、そして1041-FLCの完成へと漕ぎ着きました。いずれのフリューゲルも大変な成功を収めました。

意識の高い学生に向けた、これまでにない首尾一貫の中級モデル

N
i32とi33トランペットは、特に若い学生さんを念頭に開発しました。それまで、シルキーの楽器は基本的にプロの演奏家を対象に、小規模での生産を念頭に置いた楽器でしたが、取引先のディーラーや楽器店から、トランペットを真剣に学んでいる若い学生を対象としたB♭管トランペットを作ってくれないかというリクエストを常に受けていました。私自身は最初から、ただの”学生向け”の楽器を製作するつもりはまったくありませんでした。というのもすでに多くのメーカーから自身のメーカーの周知、拡販のためにこういった”学生向け”の楽器は市場に溢れていたからです。私の感覚では、もし仮にシルキーがそういった”中級者”を対象とした楽器市場に入っていくならば、ここシカゴのシルキー工場内でデザインから製造まですべてを行った楽器を作るべきであると思っていました。この考えの下、i32とi33は生まれました。
このクラスの楽器としては最高の品質を保ちつつ、価格は十分お求めやすく抑えています。もちろん決して安い価格ではありませんが、その分品質も高く、真剣に勉強していらっしゃる学生さん、特に”良い楽器”が自分の技術や勉強の効率を上げることに繋がると意識している方々に向けた楽器だと言えると思います。i32とi33は弊社のB♭管ラインナップをさらに充実させるものとなりましたし、若いプレイヤーの方々にとってシルキーに触れる素晴らしいきっかけとなっていると思います。
 

クリス・ボッティ、ウォレス・ルーニーらとともに作り上げたマーチン・コミッティの復刻モデル「HC」

N
HC(ハンドクラフト)と、ソロイストシリーズですが、これらはプロ奏者とのコラボレーションから設計されています。折につけ、私たちは業界内でも特に素晴らしいプレイヤーの方々と一緒に仕事をする機会に恵まれてきました。
HCは、古き良き伝統に則った手作りのマーチントランペットを復刻するという考えに基づいています。マーチン・コミッティトランペットとレイノルド・シルキーとの明白な繋がりは、シルキーにおける手作り(ハンドクラフト)のトランペットを製作するというアイディアをより興味深く、面白いものにしてくれました。このモデルも、前述のフリューゲルホルンと同じように必要な工具の製作から始めています。というのもこのトランペットは通常のB♭管トランペットと比べて非常に変わっているからです。ラージボアの本体とともに、ベル自身も新しくデザインを起こすことが必要でした。デザインをさらに洗練させるために数人のプレイヤーと一緒に作業をしました。中でもクリス・ボッティ、そしてウォレス・ルーニーのふたりからのアドバイスはこの楽器にはなくてはならないものでしたし、本当に彼らは一緒に仕事をしていて気持ち良く、楽しい人たちでした。HCはシルキーにとって、とてもユニークなものとなりましたし、レイノルド・シルキーのオリジナルの設計理念に一番近いものとなりました。レイノルド自身もきっと、彼のB、そしてXシリーズに非常に似たコンセプトを持ったこの新しい仲間も誇りを持って迎えてくれるのでは? と思っています。

 


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