吹奏楽wind-iオンライン記事:なぜ「第九」が年末に演奏されるのか?
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なぜ「第九」が年末に演奏されるのか?

人気のベートーヴェンの作品を知る!

ベートーヴェン

この記事では吹奏楽から少し離れた記事をご紹介します。
毎年12月中旬から、これでもか、これでもか!というほど、日本のオーケストラではベートーヴェンの『第九』を演奏します。全国で数えてみると、毎年150公演以上で『第九』がこの時期に演奏されているのです。
しかも演奏会だけでなくて、デパートや商店のBGMでも『第九』を耳にします。でもこの現象、実は日本だけのものなのです(今のところは……)。
そもそもこの曲の正式名称は『交響曲第9番 ニ短調 Op.125』。かのベートーヴェンの最後の交響曲です。この中でよく知られている4楽章のメロディは『歓喜の歌』『喜歓びの歌』などと副題が付けられ(ベートーヴェンがつけたものではありません)、日本で特に有名なクラシック音楽と言っても過言ではありません。またヨーロッパでも欧州評議会(1949年に設立されたヨーロッパの統合に取り組む国際機関)では「欧州の歌」としてヨーロッパ全体を称える歌として採択されています。ほかにも欧州連合、コソボ共和国の暫定国家、ローデシアの国家としても制定されており、世界中で最も有名なクラシック音楽と言えるでしょう。この4楽章には、独唱および合唱を伴っているので、編成的にも通常のオーケストラ作品と比べても相当大掛かりであることは間違いありません。しかも全曲を通すと70分もかかるシンフォニーなのに、独唱と合唱が使われるのは4楽章のみ(ちなみにピッコロ、コントラファゴット、トライアングル、グロッケンなども同じ)。そのため、ホールコンサートでは、合唱は冒頭から待機しているときもありますが、独唱者は楽章間に入場することもあります。

この曲は1792年に発想を得て、作曲開始は1815年。1824年(ベートーヴェン54歳)に初稿が完成し、同年5月7日に初演されました。この曲は本来はロシア皇帝アレクサンドル1世に献呈されるはずでしたが、崩御したためフリードリヒ・ヴィルヘルム3世に贈られました。日本初演は1918年(対象7年)6月1日に、なんと捕虜収容所でドイツ人捕虜によって演奏されました(2006年公開の日本映画「バルトの楽園」に描かれています)。捕虜収容所の所長 松江豊寿氏は、捕虜に対しても人道的な処遇を行ない、地元住民との交流も行なっていました。人間愛や世界平和を歌ったこの曲は、捕虜収容所で演奏されるにピッタリの曲だったのです。

さて、「日本で第九が年末に演奏されるのか」……という疑問を紐解いていきましょう。諸説ありますが、有名なのは2つ。
日本で複数回、この曲を初めて年末に演奏したのは新交響楽団。今のNHK交響楽団の前身です。終戦まで数多くこの作品を取り上げてきましたが、その中で演奏されたのが12月が多かったのです。
新交響楽団から名前を変え日本交響楽団になると、1947年(昭和22年)に、年末に3回の第九演奏を行ないました。下世話な話ですが、当時から人気の高かったこの曲を演奏することで、年末のボーナス支給のために収入(チケット代金)増加を見越して……演奏されるようになったからではないかと思われます。
もう一つの説は、1943年12月に上野奏楽堂で行われた学徒壮行音楽会でこの曲が演奏され、戦後生還した学生たちが再び演奏し、戦没者を追悼したというもの。

いずれの説が正しいということはないでしょうが、上記の理由から徐々に第九を年末に演奏する風潮が生まれてきたのではないか、というのが定説になりつつあります。

楽曲や作曲家の歴史を知り、その上で演奏を聴くともっと親しみが湧いてきませんか?

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編集部おすすめのCD&DVD

カラヤン指揮ベルリン・フィル(1968年収録DVD)「ベートーヴェン:交響曲第7番、第8番、第9番《合唱》」

【UCBG-9218】DG Deutsche Grammophon
[指揮]ヘルベルト・フォン・カラヤン
[演奏]ベルリン・フィルハーモニー、ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団、 グンドゥラ・ヤノヴィッツ 、 クリスタ・ルートヴィヒ 、 ジェス・トーマス 、 ワルター・ベリー
[収録曲]交響曲 第7番 イ長調 作品92/交響曲 第8番 ヘ長調 作品93/交響曲 第9番 ニ短調 作品125≪合唱≫


ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 、 バイロイト祝祭管弦楽団(1951年収録CD)「ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」 足音、喝采入り」

【WPCS-12895】Warner Classics
[指揮]ヴィルヘルム・フルトヴェングラー
[演奏]バイロイト祝祭管弦楽団、バイロイト祝祭合唱団、ソプラノ : エリーザベト・シュヴァルツコップ、メゾソプラノ : エリザベート・ヘンゲン、テノール : ハンス・ホップ、バス : オットー・エーデルマン
           [収録曲]交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

ベーム指揮ウィーン・フィル(1980年録音CD)「ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》<タワーレコード限定>」

【PROC-1992】TOWER RECORDS UNIVERSAL VINTAGE COLLECTION +plus
[指揮]カール・ベーム
[演奏]ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン国立歌劇場合唱団、ソプラノ :ジェシー・ノーマン、メゾ・ソプラノ : ブリギッテ・ファスベンダー、テノール : プラシド・ドミンゴ、バリトン : ワルター・ベリー
           [収録曲]交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

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