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ランクアップ講座 -パーカッション-

Navigator: 秋田 孝訓

Navigator:秋田 孝訓 T a k a n o r i A k i t a

秋田孝訓

横浜生まれ。2009年東京芸術大学卒業。東京佼成ウインドオーケストラ打楽器奏者。クラシックパーカッションをはじめ、ドラムス、ラテンパーカッション奏者としてオーケストラ、室内楽、舞台音楽などに数多く出演。ミュージカルでは劇団四季や蜷川幸雄氏演出作品、宝塚歌劇などに演奏参加。これまでに打楽器を松倉利之、杉山智恵子、藤本隆文、百瀬和紀の各氏に師事。寺田由美パーカッションアンサンブル『ドライヴ』、『くぼった打楽器四重奏団』メンバー。また、JAZZやポップスも精力的に活動中。侍ビッグバンド主宰、ピアニスト野口 茜率いるラテンビッグバンド『Monaural Banquet Orchestra』、芸大同期生によるJAZZ、FUSIONバンド『Blossom』、『東京R合奏団』各メンバー。

皆さん、こんにちは。
新入生の皆さんは入学して新生活が始まり、上級生の皆さんは後輩さんができて、それぞれが何かに戸惑いながらも何か新しい感覚を覚える季節ですね。そんな皆さんに今回は3つのテーマに沿いながら、少しでも練習の役に立つことを願いながら私なりのアドバイスをしていきたいと思います。

 

初めて楽器に触れる人に覚えてほしいこと3つ

①まず一つ目、当然ですが楽器を大切にしましょう!

打楽器は演奏するときに叩いたり、振ったり、合わせシンバルのように楽器同士を当てて演奏するものなど管楽器と比べると丈夫に思われがちですが、とてもとても繊細な楽器です! 落としたり、ぶつけたり、投げたり、殴るように叩きつけたり、蹴ったりしてはいけません(笑)。また、乱暴に叩いたりするとその後のその楽器の音が実際に悪くなります! 楽器には奏者の癖がつくと言われています。常日頃から良い音で響いてくれるように丁寧に扱いましょう。楽器を大切に綺麗にしている人は上達します。そして楽器運びのときなどは特に注意が必要です。キャスターが付いていても床の段差等には細心の注意を払いましょう。ティンパニのペダルは中音くらいから高音にしておくと良いでしょう(衝撃で皮の中心がずれてしまうことを避けるため)。それから練習や本番が終わったら楽器を丁寧に拭いてあげましょう。手汗などが付着したままでは楽器に良くありませんし、音にも影響が出ます。特にグロッケン、チャイム、シンバル、トライアングルなど、本体そのものを震わせて響かせる楽器は丁寧に! 楽器が汚れると音も暗くなり、響きが減ってきてしまいます。忘れられがちなのがティンパニのヘッドです。手汗、汚れをしっかりクロスで拭いてあげてください!

②二つ目です、楽器の体調管理をしっかりしてあげましょう!

体調?と思われた方が多いかもしれませんが……楽器も人間と同じで暑すぎたり寒すぎたり湿度が多かったりするところが苦手です。直射日光を避けて、また雨に濡らしたりしないように気をつけてください。ほこりも大敵です、掃除もしてあげましょう。時間のあるときにはネジが緩んでいないか、足りない部品はないか等のチェックもしてあげてください。キャスター部分などからノイズがあるときは油を注して調整しましょう。

③三つ目ですが、積極的に楽器に触れて練習しましょう!

きっと基礎練習では練習台を使うだけ、という方がほとんどかもしれません。曲の譜面をもらってからその楽器を練習するのでは、間に合いません。打楽器にはとてもたくさんの種類があります。打楽器奏者はそれぞれを使いこなす権利、使いこなす義務があります……(笑)。それぞれがどんな音を出せるのか、どんな方法で演奏するのか、勉強しなくては使いこなせないものばかりです。ぜひ普段から興味を持って積極的に楽器たちに触れてください!

 

音を出してみよう!

バチの持ち方や、それぞれの楽器の構え方の注意点を挙げてみます。 まずは小太鼓のスティックの持ち方です(写真①、写真②)。スティックの3分の1くらいのところを人差し指と親指でつまむように持ちます。

【写真①】


【写真②】


 

次に構え方です。野球選手などをイメージすると分かりやすいと思いますが、フォームは人によって違ってきます。人はみな体つき、骨格が違いますので無理に揃えようとしなくても良いでしょう。ですが、やはり理にかなった構え方というのがあります。悪い例を見てみましょう(写真③〜⑤)。どれも動かしづらそうですよね。

【写真③】


【写真④】


【写真⑤】


 

次にマレットの持ち方です。あくまでもここに書くのは一例です。他の持ち方もありますが、こちらのグリップを習得してみてください!(写真⑥、⑦)

【写真⑥】


【写真⑦】


 

中指、薬指、小指で持ち、人差し指と親指で軽く支えてあげます。スティックと逆ですね。もちろんスティックのように持つこともありますが、いろいろな持ち方ができたほうが良いのでこちらを紹介します。ティンパニマレットは、まずはスティックのように持ちましょう。頭が小さいマレット(グロッケンやシロフォン用のバチ)は、バチの重さをあまりかけなくて良いので、このような持ち方をお勧めします(写真⑧)。

【写真⑧】


 

◆大太鼓◆

バチの柄が太いので、手全体でしっかり握りましょう。左手で適宜ミュート(ヘッドを押さえて音質を調整)をします。押さえる位置、強さの加減でいろいろな音色の変化を作ることができます。マーチを想定して、メトロノームありとなし、テンポ120で1分間、4分音符を安定して叩けるように練習しましょう。

◆合わせシンバル◆

マーチなどの刻みのときには楽器を縦ぎみにして構えると良いでしょう。大きな音のときは拍手のように両手共に動かすことがポイントです。スピードや力ずくで当てにいくのでは痛い音になりがちです。腕と楽器の重さを利用しましょう。体力と腕の力が必要です。こちらもマーチを意識して大太鼓と同じ練習をしましょう。ここぞ! という一発も練習しておきたいですね。拍手や一本締め(ヨォーオッ拍手……です)でいい音を鳴らせるようになるのがコツの一つです。

◆トライアングル◆

いろいろな音色が出せる楽器です。先輩にこう言われたから必ずこの音! ではなくその音楽に合った音で演奏したいものです。ビーター(金属の棒バチ)を当てる角度や位置で倍音の多い音、透き通るようなスッキリした音など、たくさんの音色が出ると思うので、探してみましょう。楽器を持つ手もポイントです。力を抜いて楽器がより震えるように意識を持ちましょう。トライアングルを吊るす紐も単なる紐ではなく(スズランテープやリボンといったものをたまに見かけますが……響きが止まります)、トライアングル用の物をそろえてください。またpやtrの際に、細すぎるビーターを使うのではなく、ある程度の太さと重さのあるもので小さく叩けるようにしましょう。

◆サスペンデッドシンバル◆

シンバルを乗せているスタンドのパーツはそろっていますか? スポンジがなかったり、支柱のところにチューブがなくてノイズが発生していたりしませんか? 柔らかいバチや硬めのバチを使ったり、内側を叩いてみたり縁を叩いてみたり、などなど色々な音を楽しみながら、音色の引き出しを増やしましょう。擬音語やイメージが大切です、シャーン、ゴーン、クォアーン、ジャーetc…… また、速く叩くだけが“ロール”ではありませんし、遅く叩くだけが“ロール”でもありません(笑)。雰囲気を感じて効果的に演奏できるといいですね。力を抜いて、バチを少し細かく動かし、16拍かけてクレッシェンド、デクレッシェンドを繰り返す練習をしてみましょう! 写真⑥、写真⑦の持ち方でバチの頭の重さと『しなり』を利用して振りましょう。 

◆練習◆

今回は全部の楽器は取り上げられないので持ち方などはこの辺までにして、打楽器の中で一番の基本的動作が多い小太鼓で実際に音を出してみましょう。
まずバチをボールだと思って楽器の上を弾ませるつもりで叩いてみましょう(小太鼓であれば小さくて軽いボール、大太鼓であれば大きくて少し重いボールのイメージです。※楽器のサイズに合わせてバチのサイズや重さも変わってきます)。その弾みを連続させて音符にしていきます。最初は遅いテンポで腕全体を大きく動かして、4分音符や2分音符の練習から入ることが多いですが、手首、肘、肩の動きを混ぜ合わせたものになるので、実は難しいことなのです。ですから、まずは手首の動きに焦点を当てた練習から入ることをお勧めします。バスケットボールのドリブルのように右手で連続して跳ねさせる練習。次に左手で。それから右手と左手のコンビネーションの練習をするとスティックが早く手に馴染むでしょう(譜例①)。その動きに慣れたら、後に紹介するパターンを練習してみてください。

【譜例①】


 

※こちらの記事は、Wind-i vol.7を一部抜粋し掲載しています。

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